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#01 消費社会の子どもたち、その生命の欲動 (茂木秀之)
消費社会は評判が悪い。
もともと批判のために作られた概念という面もあると思うが、いよいよ近代の次を構想しないとにっちもさっちもいかなくなってきた感のある昨今においてはますます、消費社会を肯定するような知的な言辞はまず聞くことがないと言っていい思う。そして、批判の多くに私は共感する。だけど、その消費社会のまっただ中を生きてきて、それほど悪いことばかりだったとも思わない。特に子どもだった頃を振り返ると
#08 自分の声で、現実の話をしよう(茂木秀之)
僕が生まれ育った熊谷市は、15万ほどの人口を抱える、埼玉県北部の中核都市である。夏の祇園祭と花火大会が周辺地域では有名だ。花火大会は実に40万人を動員する。
高校三年のとき、一年間だけ塾に通った。お隣の群馬県で、難関大合格者が多いと言われる桐生市で成功して、この年に熊谷に進出してきた塾だ。しかし広報に失敗したらしく、僕が通った英語のクラスは生徒が三人しかいなかった。講師は一人だけで、
#05 1990年 前夜 (小山潤)
小山潤
1983年生まれ、埼玉県深谷市出身。主婦。大学院進学を期に関西へ。在学中、身体障害者の主催する劇団の裏方に携わる。介護職、非常勤講師などの職を経て、結婚・出産を機に退職。今は奈良の山の中で育児と介護中。ほぼ週末note更新。
https://note.com/kiwiiiii
我が家は、ちょっとした山の中にあって、子どもの足で通える範囲に学校というものがない。なので、この春上の子
#03 土着する―資本主義との距離感を掴む(青木真兵)
青木真兵
1983年生まれ、埼玉県浦和市に育つ。「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」キュレーター。古代地中海史(フェニキア・カルタゴ)研究者。博士(文学)。社会福祉士。2014年より実験的ネットラジオ「オムライスラヂオ」の配信をライフワークにしている。2016年より奈良県東吉野村在住。現在は障害者の就労支援を行いながら、大学等で講師を務めている。著書に『手づくりのアジール』(晶文社)、妻・青木海青子
#04 われら骨盤ニュータイプ (茂木秀之)
身体はなくなったのか
「身体の時代であります。」
野口整体の継承者である片山洋次郎は、『整体から見る気と身体』文庫版をこの一文で始めている。
養老孟司は、現代人は身体がなく、脳だけになっているという趣旨のことを繰り返し語っている。これはよく知られており、身体がないとか身体感覚がないという言説はよく見られるようになった。しかし片山が見ている身体は少し様子が違うようである。『整体から見る気と身体』
丁寧に言葉を積み重ねる、その手付きが現実を変える ー 『資本主義から脱却せよ 貨幣を人びとの手に取り戻す』光文社新書
冷静で丁寧な議論を重ねていった結果、胸が熱くなるような詩的な情動がもたらされてしまうのが良い人文書だと思う。予想に反して(失礼)友人の高橋真矢が書いた『資本主義から脱却せよ 貨幣を人びとの手に取り戻す』もそんな本だった。
一般向けの本も多く出している著名な経済学者の松尾匡さん、井上智洋さんと高橋との共著なのだが、それぞれの議論を包括する視座を提供しているのは高橋だと思う。
3人に共通する主張は
#02【後編】総中流に花束を - 青木真兵×茂木秀之 90年代B面史
自宅で人文系私設図書館ルチャ・リブロを運営し『彼岸の図書館』などの著作のある青木真兵君。彼と茂木は共に1983年生まれで埼玉県出身、なおかつ現在は奈良県に住んでいます。さらに人文書にまつわる活動をしているわりに最も愛読してきたのは『ファミ通』であったり、伊集院光氏のラジオを偏愛していたりと共通点が多数。よく似ているように見える二人が個人史を語り合うことで、むしろ同じ時代状況に対するスタンスの違いが
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