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介助/赤ちゃん/神と死者

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自主制作本『介助/赤ちゃん/神と死者』の全文を掲載します。 本のサイトはこちら。 https://mogikenomise.base.shop/items/8802176 《…
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記事一覧

4.応答② 椎名保友 — 障害福祉の突端から見る社会

4.応答② 椎名保友 — 障害福祉の突端から見る社会

本書制作時の私の職場であるパーティパーティ(NPO法人日常生活支援ネットワーク)の椎名保友さんに、プレゼンを聞いていただいてからお話を伺いました。椎名さんは、大阪の障害福祉の中枢を成す団体のひとつであるパーティパーティで長年活躍しながら、各地の行政や市民団体から依頼を受けて、福祉を中心に防災やまちづくりやアートなど様々な話題で講演をされています。僕にとっては職場の大先輩であり、演劇の経験が活動のベ

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3-2.汐月陽子メールインタビュー

3-2.汐月陽子メールインタビュー

1.「現代魔女」を名乗る理由を教えてください。

 いろんな語り方ができると思っているのですが。発端は八年前にあって、その頃には「現代呪術家」と名乗っていました(笑)。今で言う、「地域アートプロジェクト」のディレクター見習いみたいなことをやっていまして。わたしはもともと美術系の出身ではなかったので、すごく不思議がられたと言うか、地域にも「アート」にもそんなに関心があった訳じゃなくて、それまでどちら

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3-1.応答①汐月陽子 - 権力と物語、そこから逸脱する現実の身体

3-1.応答①汐月陽子 - 権力と物語、そこから逸脱する現実の身体

「現代魔女」を名乗る汐月陽子さん。その活動についてはとても簡潔に説明できないので、後半のインタビューでご本人からお話しいただいています。汐月さんとは、アートNPO「ココルーム」(※)で出会いました。私がスタッフ、汐月さんが助成金を出す企業の担当者という関係でしたが、それから公とも私ともつかない交流が続いています。私と関心が重なる部分も多くありながら、来歴や現在の活動のしかたはかなり異なる汐月さんを

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2.プレゼンテーション「物語/マイノリティ/神と死者」

2.プレゼンテーション「物語/マイノリティ/神と死者」

人文と生活おしゃべり会での、茂木のプレゼンの内容をまとめました。いろいろなおしゃべりのきっかけになるように、あえて散漫な内容にしています。

 去年子どもが生まれて、障害者支援の仕事も変わらずしながら目がまわるような毎日なのですが、長い通勤時間のおかげで良質な本をたくさん読むことができています。その中のいくつかを紹介しながら、僕の最近の関心ごとについ話していこうと思います。あまりまとまった内容では

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1.肛門の感触、あなたを信じてる

1.肛門の感触、あなたを信じてる

摘便という言葉を知ったのは、重度の脳性麻痺であるAさんの介助に入るようになってからだ。

摘便とは、自力での排泄が困難な人へ行う介助であり、介助者が肛門に直接手を入れて便を掻き出す行為を指す。要するにうんこをほじくり出すのだ。

初めて介助に入った日にこれを行うと聞いたときは心の底から「ホンマかいな」と思ったが、先輩が行う摘便の手際のよさと、この行為からみなぎる迫力に、なにか感心してしまい、それほ

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0.はじめに

0.はじめに

物語のない時代です。フィクションも思想もあまり機能していないように思います。一方で、粗悪な物語が人を動かしてしまう事態も多く見られます。

私は奈良に住む一児の父で、大阪で障害者支援の仕事をしています。子育ても、社会的マイノリティの支援も、さまざまな言葉で語られていますが、その多くが現代のことしか見ていないと感じます。歴史を欠いた物語に普遍性があるとは思えません。

このような問題意識を背景に、私

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