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SF、読書のよろこびマガジン

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大人になってからSFの楽しみを知った人の記録。本が好き、ゲーム興味ないかたはここで。
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#読書記録

「バッタを倒すぜアフリカで」買って風呂だ

「バッタを倒すぜアフリカで」買って風呂だ

深夜のおやつに罪悪感を感じたことはないけど、無駄な休日の使い方に罪悪感がある。

こどもの頃の休みの日は、全部おいしいごちそうのようなもので、起きた瞬間から楽しさしかなかった。

大人になってから、休みの日の無駄使いに罪悪感をおぼえるようになった。

平日と違う場所に行く。初めての映画や料理などを知る。友人などと触れ合うなど、有意義っぽいことをしないと、夜に憂鬱になる。

仕事の日に体が疲れて、休

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【読書】タイトルの由来が驚きの「郵便配達は二度ベルを鳴らす」

【読書】タイトルの由来が驚きの「郵便配達は二度ベルを鳴らす」

聞いたことはあるけど内容は知らない話を読むシリーズ。(以前には蠅の王やフランケンシュタインなど読みました)

なんとなく、「郵便配達員が旦那のいない時間に来て奥さんと不倫する話」かと思っていた。
なぜ不倫に関する話なのかは知っていたのか謎でそれは当たってたんだけど、郵便配達員ではなかった。

ストーリー序盤の男女がくっつくまでが、島耕作ぐらいのテンポ感ですすむ。
犯罪歴があってろくでなしの男と、な

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西村亨「自分以外全員他人」で人生からドロップアウトしたくなった思春期に戻る

西村亨「自分以外全員他人」で人生からドロップアウトしたくなった思春期に戻る

たぶんですけど、みんな意味もなく人生からドロップアウトしたいと思った日々があったはず。あっても口にしないだけ。何度も人生が無意味だと思った日があるはず。
年齢を重ねて「しんどいこともあるけど、見たいところも好きな人もいるしボチボチ生きていこう」とか思いながら生きているうちに、若いころの憂鬱なんてなくなって長生きを望むようになるもんだと思う。

「自分以外全員他人」は、若いころからうっすら死にたい気

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文學界と「女は電子工作できない」の話

文學界と「女は電子工作できない」の話

文學会11月号。
かつて吉本で芸人をやっていた藤原麻里菜さんのエッセイがおもしろかった。
途中で芸人を辞めて「無駄づくり」の話になって、「あの方だ!」と読んでいる途中で気づいた。どこかのバズ動画で目にしたけど、名前で認識していないから。
「初対面の人と思って話していたら、すでに名刺交換した後だった」
みたいな。

R-1グランプリの予選1回戦を突破した話(それでもかなり少数の選ばれし芸人だった)、

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【読書記録】小説すばる2024/2 イノシシとクマの芸風。好きな読みきり「優しくない友達」

【読書記録】小説すばる2024/2 イノシシとクマの芸風。好きな読みきり「優しくない友達」

「小説すばる」に「猪之噛」って巨大イノシシを狩る小説が連載されている。最初は純粋におもしろくて読んでいたけど、
だんだん
「クマとどう差別化していくんだろう」
と考えながら読んでいる自分に気づいた。
別にイノシシも
「あっ!俺、最近ブレイク中のクマと芸風かぶってる!」とか意識しないだろうけど。

直木賞の「ともぐい」だったり「流れ星銀」の最終章が始まったり、時代は クマなのかもしれない。あとリラッ

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「タイタンの妖女」感想と太田光の解説とファミコンMOTHERと

「タイタンの妖女」感想と太田光の解説とファミコンMOTHERと

爆笑問題の太田光が愛し、奥さんが社長をしている社名の由来になったSF小説を読みました。

太田光は不思議な人だ、ファンでもあの人のすべては受け入れられない。
しょうもないギャグもセクハラも問題発言も、台本通りじゃなくて人間として考えていたことが間欠泉みたいに制御できず口から出てしまう感じだ。で、「ちゃんと」問題発言をする。毎回たたかれて、しっかりダメージ受けてるようなのに、また人を怒らせる。

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山下紘加「煩悩」は女の緻密な距離感小説!

山下紘加「煩悩」は女の緻密な距離感小説!

「煩悩」は、自立した主人公と、長い付き合いの「杏奈」
女性ふたりと周囲の人間関係の話だ。

杏奈!
とにかく杏奈という人がどうなってしまうのかを見てみたい、
たぶん男から見ると、ドジでおっとりして「清楚」とか呼ばれてそうな同級生。
だけど長く付き合っている「私」から見ると、
杏奈の話はあちこち飛んで要領を得ない。
同じミスを何度も繰り返す。あやしい人にも疑うことを知らなかったり、あぶなっかしいとい

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【ノンフィクション】特攻服少女と1825日

【ノンフィクション】特攻服少女と1825日

「コギャル」「ヤンキー」は何となく想像できるけど、女の不良「スケバン」女だけの暴走族「レディース」がいて、彼女らの専門誌が何万部と売れ、本物のヤンキーたちが修学旅行でディズニーランドに行った帰りに編集部に来て、紙面で総長が「半端にやるぐらいなら学校行きな」と不良をさとす。

こんな時代があったのか!の連続。

少年院から出所してすぐにかつての仲間からリンチにあった、ある少女の事件をきっかけに、レデ

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大田ステファニー歓人の「みどりいせき」が痛快だった

大田ステファニー歓人の「みどりいせき」が痛快だった

完成度が高い優等生候補作がそろう中で、いちばん読みづらいし、おそらく作者も文学の講義をずっと受けてきたような経歴じゃない。
これが新しい文学の1ページになるのか、ならんのか。

読んだ人同士で
「俺は良かった!いや俺無理!読めん!いや私はわかる!」とか語るのも含めておもしろそう。すばる文学賞受賞作の「みどりいせき」。
単行本になったらどうなるのかなあ。選考員が口をそろえて「序盤は読みづらかったが…

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8月20日 Audible覇権の予感。今日買ってきた本は「キリング・ヒル」

8月20日 Audible覇権の予感。今日買ってきた本は「キリング・ヒル」

エックスあるいはツイッターやってること自体が恥ずかしくなってきた。
誰かが言ってたけど、だらだら続けてるSNSをバッサリ切ると、ダメな彼氏を振った時ぐらいスッキリするらしいよ。潮時だー。

海外ミステリーの大作、グレートサークルを買おうと思ったら田舎では書店に並ぶのが2日遅れらしくて、たまたま 表紙がいい感じだったキリングヒルというのを買ってきた。

本を読み上げる Audible が調子いいと聞

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SF小説の未来予知が間違っているとkawaii【読書記録】

SF小説の未来予知が間違っているとkawaii【読書記録】

アーサー.C.クラーク「火星の砂」を読みました。

1950年ごろ書かれたもので、SF大家の長編2作目になります。開拓中の火星を訪れた作家の物語。

初めての宇宙旅行で離陸に緊張する主人公、「水鉄砲式」で水分を補給していたが重力が戻ってくると嬉しくなってコーヒーを器に入れて飲みたくなる船員。つい持っていたものを落としてしまい、いけねえ重力あるんだった重力重力、ってなる感じ。
火星探索の前に「無重力

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なんでこんなに皆面白い小説書けるんだ!「ネイティブ・サン」と「我が友、スミス」

なんでこんなに皆面白い小説書けるんだ!「ネイティブ・サン」と「我が友、スミス」

重すぎる表紙とか「黒人作家の存在を知らしめた問題作!BLMの原点!!」とか、そういうの関係なく読んでくれ。ぼくは文庫はカバーとって裸で持ち歩いている。サスペンスとして目が離せない面白さと、作者の全人生を刻み込んだようなメッセージに圧倒された。

主人公は二十歳の黒人男性で、白人家庭に使用人として働けることになる。
そこがめっちゃいい家庭で、お嬢さんなんて
「私は肌の色に関係なく接するし、あなたたち

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【読書】火垂るの墓は急にガンダムにならない。「宇宙の戦士」

【読書】火垂るの墓は急にガンダムにならない。「宇宙の戦士」

ロバート・A・ハインライン「宇宙の戦士」新訳版を読みました。

「パワードスーツ」を着て戦うSF小節で、数多くの漫画、アニメに影響を与えた作品です。最初にハヤカワSFで翻訳、刊行されたのは1967年とある。
カバー絵のいかにも「ちょっと前のロボットアニメ」っぽいイメージで読んだ。原題がSTARSHIP TROOPERS。
そのイメージからするとすごいギャップがあった。

「機動歩兵」部隊の主人公が

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【読書】すっぽん鍋に語彙を失い、追撃の焼きすっぽんで頭のネジが飛ぶ。獣系ワイルド飯テロ【肉とすっぽん】

【読書】すっぽん鍋に語彙を失い、追撃の焼きすっぽんで頭のネジが飛ぶ。獣系ワイルド飯テロ【肉とすっぽん】

平松洋子「肉とすっぽん」を読みました。
牛、鴨、鹿、羊、鳩、くじら。動物たちを解体して料理している人たちに取材したルポ。
こういう内容って、どうしても「生き物を殺して食っていいのか」要素が多くなるけど、それがそんなにない。動物たちはみんな与えられた生を全力で動き回り、人間たちは人生をかけて磨いた技術で、臭みをのこさず最高の肉にするため真剣に挑み、それを取材する平松洋子の言葉の選び方は肉の旨さと食肉

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