璦憑姫と渦蛇辜 5章「いさら」①

璦憑姫と渦蛇辜 5章「いさら」①

 深く潜ると落ち着くのだ。  海にはタマヨリが育った島のようなサンゴ礁も色鮮やかな魚もないが、碧の深みは光を吸って底知れぬ昏い淵が誘ってくる。凪ぐ日も猛る日もある海の、青いばかりが海でないこと、与えるのも奪うのも海の所業に違いないこと。この灰紺の海の温度と共に覚えたことは、月日とともにタマヨリの肌に馴染んだ。それでも疼くような望郷は潮でしかしずまらなかった。  船底の影の位置を確かめるとタマヨリは浮上した。  「遅い!」  と水面に顔を出すなり阿呼に叱られた。  「ずっと戻っ

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🏴‍☠️苗字を付け、海賊口調で話す日!?

🏴‍☠️苗字を付け、海賊口調で話す日!?

「紫風RADIO」第4回配信しました! 今日9月19日は「苗字の日」「世界海賊口調日」だそうです?! 詳しくはこちらから⬇️ 明日も良い風、吹くといいな…。 🌙月影紫風でした。​

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田州再始動【瓦氏夫人第50回】
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田州再始動【瓦氏夫人第50回】

『倭寇の海英傑列伝 瓦氏夫人』は、16世紀の広西壮族の女性で、一軍を率いて倭寇に勝利したスーパーヒロイン、瓦氏夫人をモデルとして描く大河小説です。6月にその上巻である『花蘇芳の山の巻』を、秋頃に下巻『仏桑花の海の巻』を刊行予定ですが、それに先行して、ここで全編を連載しています。(『花蘇芳の山の巻』は6月3日に刊行しました。アマゾンの購入ページはこちらです) 後継争い 田州再始動 岑猛の十七歳の四男、邦相を中心とする田州が再始動した。  朝廷が邦相に授けた官職は吏目。州政府に

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巨星が堕ちた【瓦氏夫人第49回】
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巨星が堕ちた【瓦氏夫人第49回】

巨星が堕ちた  陽明は、休む間もなく断藤峡および八寨の賊徒討伐に着手した。  断藤峡は梧州と南寧のちょうど中間あたりで、黔江が刻んだ深い渓谷であり、八寨は南寧の北東の山岳地帯に築かれた八つの砦で、いずれも賊徒が急峻な地形を利用して蟠踞しており、しばしば山を下りては村々を襲い、人を殺し、もしくはさらい、財物を掠奪した。  陽明は盧蘇・王受の乱に対したときと同様に、まず各方面から十分に情報を集め、その結果くだした判断は盧蘇・王受の乱の場合とは真逆だった。  武力討伐である。

FGO水着イベント2021感想(※ネタバレあり)

FGO水着イベント2021感想(※ネタバレあり)

はじめに 今年もやってきました水着イベント。去年のホラーテイストから一転してアドベンチャーテイストでした。ホラーは苦手なのでちょっと安心しましたがまさかあんなことになるなんて・・・。 ※今回はネタバレありです。未クリアの方はご注意ください。 感想(ストーリー) 全体的に面白かったです。テンポもよく、程よく謎解き要素があったので楽しみながら進めていました。 メインストーリーではクリプターのサーヴァントとして敵対していたカイニスとアナスタシアが冒険を楽しんでいる姿がとてもよ

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璦憑姫と渦蛇辜 4章航路②

璦憑姫と渦蛇辜 4章航路②

 海賊達の狂騒から離れワダツミは、暗い海の果てにのたうつ龍のような稲妻を見ていた。  「ワダツミ、こんなところにおったのか!ほら、見て見て!」  足場の悪い岩の上でタマヨリは真新しい着物の裾をひるがえしまわってみせた。  「紅い着物じゃぞ。見ろ、つやつやの生地!こんなきれいなものがあるんじゃなぁ」  と長すぎる袖を目の前でひらひらさせた。  「あっちに食い物もあるぞ、来いよ」  「俺は手を貸すとは云ったが海賊になどなった覚えはない」  依然そっぽ向いたままだ。  「はずかしが

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奴隷貿易は欧州承認の黒人奴隷貿易の専売特許じゃないんだ。イスラム商人のやった白人奴隷貿易だって相当なものだよ。
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奴隷貿易は欧州承認の黒人奴隷貿易の専売特許じゃないんだ。イスラム商人のやった白人奴隷貿易だって相当なものだよ。

白人奴隷貿易は、英語だと「Barbary pirates trading Caucasian slave」とでもいうんだろうか? 白人を奴隷として取り引きしたイスラム奴隷貿易僕らの知らない物語より Barbary Slave Trade Millions of Europeans enslaved in North Africa 海賊の歴史 ー バルバリア海賊バルバリア海賊とは16世紀、地中海で組織的に活動したイスラム系海賊の総称です。 バルバリアとは北アフリカの呼称で

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軍門に下る【瓦氏夫人第48回】

軍門に下る【瓦氏夫人第48回】

軍門に下る 王陽明は十二月一日付で疏を上げている。 〈至十一月二十日始抵梧州思恩田州之事尚未会同各官査審区処然臣沿途渉歴訪諸士夫之論詢諸行旅之口頗有所聞〉 (十一月二十日に梧州に到着しました。思恩・田州の事案について、まだ各官を集めて処置を審査するには至っていませんが、道中あちらこちらとめぐり歩き、各方面の人々に意見を求めその言に耳を傾け、非常に多くの情報を得ました)  とした上で、その時点での考えを長文で述べている。それによれば陽明は広西に着いて間もないこのときに既に、

プロフェッショナル仕事の流儀

プロフェッショナル仕事の流儀

令和3年9月14日に放送されたプロフェッショナル仕事の流儀(NHK総合)に、知り合いのマグロ生産者にスポットがあてられた。 宇和島は、魚類養殖の盛んな地域で、鯛の生産は日本一を、そしてブリ(ハマチ)も日本有数の生産量を誇るが、マグロも養殖している。 番組で登場した福島さんは、日振島という宇和島の沖合の離島でマグロを養殖している。タイトルの朝日の写真は、ちょうど福島さんの生産現場近くの日振島の海だ。 ちなみにこの日振島、宇和島から高速船で40分かかり、往復で4000円を超

王陽明との交渉【瓦氏夫人第47回】

王陽明との交渉【瓦氏夫人第47回】

王陽明との交渉  陽明は笑みを浮かべて花蓮を迎えた。  花蓮も笑みを返したが、心のなかには驚きがあった。八年ぶりにみる陽明はひどく痩せていた。ときおり苦しそうに咳をする。明日をも知れない体のように思われた。 「お体は、あまりよろしくないのでしょうか」  と、控えめに訊いた。 「ご覧のとおりだよ。実をいえばこうして背筋を伸ばして座っているだけでも体にこたえる。とはいえ、臥せているわけにもいかない」 「そのようなお体なのに、このように過酷な任を負わねばならないのでしょうか」 「