尾登雄平(世界史ブロガー・ライター)

世界史ブロガー・ライター。古代から現代まで世界史全般について書いたり話したりしてます。…

尾登雄平(世界史ブロガー・ライター)

世界史ブロガー・ライター。古代から現代まで世界史全般について書いたり話したりしてます。 著作 『驚きの世界史』(KADOKAWA) 『「働き方改革」の人類史』(イースト・プレス) YouTubeチャンネル http://youtube.com/@rekilog

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    あなたの教養レベルを劇的に上げる 驚きの世界史

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    激動のビジネストレンドを俯瞰する 「働き方改革」の人類史

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寡兵が大軍を打ち破った「超大逆転勝利」

日本史の「超大逆転勝利」と言えば、桶狭間の戦いでしょう。兵の質も量も指揮官の能力も圧倒的に今川勢有利だったのに、それを若き織田信長が完全にひっくり返してしまう。日本の戦国の戦いの中で最もドラマチックな戦いと言えます。 それに勝るとも劣らない「超大逆転勝利」は世界史にもたくさんあります。その中でもとびきりの逆転劇をピックアップしてみました。 1.  ロンゲワラの戦い1971年、東パキスタン(バングラディシュ)の独立を巡ってインドとパキスタンが争った第三次印パ戦争。メインの戦

    • イブン=ハルドゥーン『歴史序説』イスラム思想から見る国家発展論

      イスラムの思想と言えば、やれジハードだ、やれ拉致って殺すだ、過激なものをイメージする人も多い気がします。 コーランやイスラム教の成り立ち自体に暴力的な要素が含まれていることは事実なんですが、大多数のイスラム教徒は僕たちと変わらない、メシ食って働いて買い物してみたいな生活を望む、普通の平和的な人たちです。 イスラム国みたいな連中をしてイスラム教徒だと外国人に思われるのは、ネトウヨとか在特会みたいな連中をして日本人はみんな排他的な連中だ、と誤解されるようなもんです。相当嫌でし

      • 汚職・不正操作・スキャンダルのアメリカ大統領選挙史

        アメリカ大統領選挙と言えば、アメリカだけでなく世界中の国々にとっても一大イベントです。衰えたとはいえ、アメリカはまだまだ世界一の大国。 そのトップとなる者は、ある意味その時代を象徴している人物でもあります。現実的な話をすれば、向こう4年間のおおよそのアメリカの政策を推量できるし、それによる外交・経済・軍事・法制度、ありとあらゆる事柄に関わってきます。強大な権力を握るために、動員される人員もコストも他とはケタが違います。 過去の歴代の大統領選挙を見ても、汚職・不正操作・スキ

        • どのようにして「インドネシア国家」は成立したのか

          21世紀の大国として注目されるインドネシア。 そこに住む人は「インドネシア人」ですが、厳密に言うとインドネシア人という民族は存在しません。 インドネシアは、ジャワ人やスマトラ人、バリ人、アンボン人など、約300の民族から成る多民族国家です。 私は2013年にバリ島からジャワ島まで長距離バスを使った横断旅行をしたことがあるのですが、バリ島からジャワ島に渡った後、まるで外国のように町や人の雰囲気が違うことに驚いたものです。 国としてのインドネシアが出来たのは最近のことで、かつ

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        記事

          マケドニア人という民族は存在するのか?

          北マケドニア共和国はバルカン半島の南にある、旧ユーゴスラビア構成国です。 様々な民族や宗教が入り乱れたバルカン半島において、マケドニアは大国に翻弄されたまことに複雑怪奇な歩みをしており、それがゆえ未だに周辺国との摩擦が絶えません。 それが「そもそもマケドニア人は存在するのか」「マケドニアという名称は誰のものか」といった「そもそも論」。 それゆえ、なかなか第三者が深く立ち入ることができない問題でもあります。 論争その1. マケドニア人という民族は存在するのかマケドニア「うん

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          イエス・キリストの顔は西洋絵画でどう変化したか

          我々が想像するキリストの顔と言えば、  肩まで垂れた長髪 面長な輪郭 二重でぱっちりした目 こけた頬 口元とあごに生えたヒゲ のような感じです。 絵が下手な人に「キリスト描いてみて」って無茶ぶりしても、だいたいこのイメージに従って書いているような気がします。それにしてもいつの時代からこのイメージが出来上がっているのでしょうか?  初期キリスト教時代のイエス像キリストがゴルコダの丘で十字架に磔にされて死亡してから、イエスの弟子たちはローマ帝国各地にイエスの教えを伝

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          公式に「存在しなかった」ことにされた人たち

          歴史は「正史」 を元に作られます。 正史は時の権力者が自分たちを正当化するために書くので、いろいろ事実をねじ曲げて書いたり、曲解したり、都合の悪いことは削除したりしているものです。 その中で、正史からは名前が消されてしまった人たちも多くいたはずですが、「歴史から名前を消されたことでかえって有名になった人」もいたりします。  1. ニコライ・エジョフ (1895 - 1940)1937年に当中央委員会政治局員となったエジェフは、スターリンに対する絶対的な忠誠を示すべく、少

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          イギリス貴族が紳士であるべき理由

          ジョジョに限らず、一般的にイギリス貴族というものは、「紳士」であるべきというのが社会通念とされ、またそうでないと社会的に認められなく、「紳士であることがイギリス上流階級に属する絶対条件」とすら認識されました。 他の国・地域では貴族は、「陰湿でこまけぇことにウダウダ言ってきやがって、金にやかましく冷酷な連中」という認識も多いはずです。 なぜイギリスではそのように、貴族が「紳士」であることが求められるようになったのでしょうか。 1. イギリス貴族の地方支配の実体産業革命が起

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          失敗に終わったアメリカからの独立運動

          アメリカの歴史は、連邦派(共和党)と反連邦派(民主党)の戦いの歴史であり、中央集権的な文脈を嫌がる集団や人が理想郷を求めて分離独立を求める動きが数多くありました。代表的なものが南北戦争です。 合衆国は多大な犠牲を払い、よろめきつつも1つの連邦国家として統一を維持し、50もの州を統合して大国にまで成長し現在に至ります。 今回はそのような、合衆国から分離しようとして失敗した「幻の独立国・独立州」をご紹介します。  1. フランクリン国(ノースカロライナから独立)アメリカ独立

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          日本人が知っておくべき日本・フィリピン関係史

          我々が学ぶ世界史や日本近代史では、ヨーロッパ、アメリカ、中国はよく登場しますが、東南アジアはあまりよく学ばないし、馴染みがありません。 ところが東南アジア各国の歴史教科書では日本に関する記述はとても多く、特に近代の植民地化と独立闘争の中で日本が果たした役割は、良くも悪くも大きなものがあります。 実際、明治以降の日本と日本人は積極的に東南アジアに経済的、政治的側面から深く関与しています。 今回は近代以降の日本とフィリピンの関係史を見ていきます。 1. 日本の思惑とフィリピン

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          1936年アメリカの反戦運動「『未来の戦争』の退役軍人

          「未来の戦争の退役軍人(Veterans of Future Wars)」は1936年にアメリカで起こった学生運動・反戦運動です。 不況の中で第一次世界大戦の退役軍人が「特権的な扱いを受けている」ことに不満を持った学生たちが、「未来の軍人である俺たちも優遇される権利がある」と皮肉った主張を言ったことが始まりです。 そしてこの運動は予想外の盛り上がりを見せることになります。 1. 「未来戦友会」の設立1929年に起こった世界恐慌はアメリカでも庶民の暮らしを直撃したのですが

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          処女航海で沈んでしまった船・軍艦

          処女航海で沈んだ船といえばタイタニック号が有名です。 超豪華で当時の最新の造船技術を取り入れたタイタニック号は、流氷に衝突して船底から浸水し、海水の流入に耐えきれず2時間40分後に沈没します。 事故が起きた理由はいくつかありますが、その一つが氷河の情報を事前に得ていたにも関わらず、時間を優先し危険な航路を進んだことにあります。どんなに最新技術を注ぎ込んでも、運用する側に問題があるとどうしようもないという事例です。 この記事に登場する「処女航海で沈んだ船」たちもおおむね似た

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          韓国・朝鮮の売国奴・李完用はなぜ親日派になったのか

          韓国・北朝鮮で最悪の売国奴と呼ばれる人物といえば李完用(イ・ワニョン)です。 李完用は朝鮮王朝末期と大韓帝国の時代の政治家で、韓国・北朝鮮では日帝に国を差し出した張本人として大変に忌み嫌われています。 韓国では、李完用が地位と財産を得るために国王と国を売り飛ばしたという評価が一般的です。しかし実は、一応彼なりに列強から国を守ろうとさまざまな試みを行なっています。ただしタイミングや方法がまずいところがあって、結果的に亡国の引導を渡してしまいました。李完用はなぜ売国奴になってしま

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          トルコの「売国奴」ダマド・フェリト・パシャ

          ダマド・フェリト・パシャはオスマン帝国末期の政治家で、第一次世界大戦後に大宰相を務めました。 彼がなぜ売国奴と呼ばれているかというと、大戦に敗北したオスマン帝国の存続のために、イギリスをはじめとした連合国に迎合し、セーブル条約という極めて不利な条約にサインをしたこと。そしてアンカラに共和国政府を建てたムスタファ・ケマル・パシャとトルコ民族解放闘争に反対したたことがあります。 現在のトルコ共和国は、アンカラ政府を基に続いている政体で、ムスタファ・ケマル・パシャは独立の英雄とさ

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          日本人の知らない「タイvsカンボジア」抗争の世界

          あまり日本人には知られていませんが、タイ人とクメール人(カンボジア人)の間には複雑で絡み合った愛憎感情があります。 今回はなぜタイとカンボジアは争うのか、何を争っているのか、SNSの投稿を中心にしたナラティブから分析していきたいと思います。

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          オマーン帝国の歴史

          帝国といえば、英仏独といったヨーロッパの国や、オスマン帝国、清帝国、ムガル帝国、ロシア帝国といった近代ユーラシアの大国、あるいはもっと時間がくだって、アッシリア帝国とかローマ帝国、ペルシア帝国を想像する方も多いかもしれません。 今日のテーマはオマーン帝国です。 オマーンはアラビア半島の東南部にある国で、首都はマスカット。あまり国際的な知名度が高い国ではありませんが、かつては東アフリカに領土を持ち、インド洋交易を支配する海上帝国、海軍大国でした。 オマーンがどうやって大国