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歴ログ-世界史専門ブログnote版-

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はてなブログ「歴ログ-世界史専門ブログ-」のnote版です。 https://reki.hatenablog.com/ はてなブログに掲載していた記事の転載・再編集版を公開して…
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記事一覧

【論争】渤海国は中国・朝鮮どちらに帰属するか

【論争】渤海国は中国・朝鮮どちらに帰属するか

7〜10世紀、現在のロシア極東・中国東北部・北朝鮮には渤海国が大いに栄えていました。
渤海国はその歴史的位置づけを巡って議論があります。中国では「中国の地方史」という位置づけで語られますが、韓国では「朝鮮の王朝」と位置づけて語れています。
中国は渤海が中国史の一部でないと、東北部の分離を招きかねず譲れない。一方で韓国では渤海が中国史ということになると北朝鮮が中国の領土であることを認めることになり絶

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なぜアンコール・ワットは密林に埋もれたのか

なぜアンコール・ワットは密林に埋もれたのか

アンコールワットの遺跡群は我々を魅了してやみません。
ご覧になっている方の中にも観光で訪れた人もいるでしょうし、いつかは行ってみたいとお思いの方もきっと多いでしょう。
19世紀にアンコールワットを西洋に紹介したフランス人も興奮気味にこう語っています。

ではなぜこのような寺院・都城は作られ、そして密林の中に埋もれて忘れ去られてしまったのでしょうか。

1. アンコールの地理と経済カンボジアは未だに

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結成理由がメチャクチャな十字軍遠征

結成理由がメチャクチャな十字軍遠征

十字軍と言えば、1096年の第1回から1272年の第9回まで、アナトリア半島からエジプトの中東地域に十字軍国家支援のためにキリスト教徒軍が展開した一連の戦いが有名です。
ですが、一般的に十字軍とは「教皇が異教徒や異端の排除を呼びかけて結成される軍勢」であるため、中東地域以外に派遣された十字軍も数多くありました。
プロイセンと中心としたバルト地域に派遣された「北方十字軍」や、南フランスの異端アルビジ

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有名なWW1のエースパイロット10名

有名なWW1のエースパイロット10名

エースドライバーやエースパイロットはいつの時代でもモテるものですが、
航空機が発明され始めて大規模に戦争に投入された第一次世界大戦でもそれは同じでした。戦線で活躍したパイロットたちはマスコミに取り上げられて祖国でスターになり、帰国後はセレブリティの仲間入りができました。
欧州戦線で活躍し母国のスターになった、エースパイロットを紹介します。

1.マンフレート・フォン・リヒトホーフェンレッド・バロン

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ロシア革命中の暴動・反乱・反革命事件

ロシア革命中の暴動・反乱・反革命事件

社会統制のタガが外れると中央の政治抗争だけでなく、国内のあちこちで不満分子による反乱や少数民族などの分離運動が起こり、そこに外国勢力が入ってきてだんだん対立構造がねじれて複雑化していくものです。
1917年に起きたロシア革命がもたらした混乱も凄まじいものがあり、ロシア帝国の擁護者による反乱や、周縁部の少数民族による反乱や独立運動、諸外国の介入をもたらしました。
ソ連はあちこちで起こったそれらの混乱

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ノストラダム以外にもたくさんあった「世界の終わりの予言」

ノストラダム以外にもたくさんあった「世界の終わりの予言」

ぼくは子どもの頃、本気で1999年に世界が終わって自分も死ぬと思っていました。当時よくテレビでノストラダムスの特集をやってたからかもしれませんが、漠然とした恐怖感があったのを覚えています。

このような「◯◯年地球滅亡説」は実は太古の昔からあり、史上多くの子どもや大人をビビらせてきたのでした。
ということで、今回はこれまで唱えられてきた「世界の終わりの予言」をピックアップします。

1. 紀元前6

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ちゃんと読むとスゴイ聖書の逸話

ちゃんと読むとスゴイ聖書の逸話

聖書はそれ自体が聖典なので、疑問を挟む余地がない存在です。
5つのパンと2匹の魚で5000人を腹一杯にさせたとか、腐りかけた死体を復活させたとか、自身も死んで3日後に生き返ったとか、色々ミラクルはありますが、これはまあ、イエスの手柄だからいいんです。
ただ思わず読み飛ばしそうになるものの、よく読むと衝撃的なことが平気で書かれていたりします。

1. 神、人間とレスリングしてタップアウト負けする ヤ

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ベトナムの英雄たちの救国の歴史

ベトナムの英雄たちの救国の歴史

ベトナムは勤勉で高い教育水準の国民が約1億人おり、中間層が著しく台頭しています。
ベトナム共産党一党独裁の社会主義国ではありますが、硬直したイデオロギー主義は採らずに市場主義を容認し製造業・サービス業・クリエイティブ業も発展を続けています。
現在は平和で安定的な国ですが、歴史上ベトナムは様々な外敵と戦い続けた血なまぐさい歴史を持ちます。
歴代の中国王朝、モンゴル、チャンパー、ラオ。近代に入るとフ

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なぜスターは国旗のモチーフになるのか

なぜスターは国旗のモチーフになるのか

スターの意匠は世界の国旗でお馴染みです。
自由主義陣営のお膝元アメリカのみならず、社会主義陣営の大親分ソ連もスターが入っていたし、イスラム諸国にも入っています。
どういうわけか思想や宗教を超えてスターの意匠は人気があって、敵対する勢力が同じ意匠を使っても気にしない。もしかしたら気になっているのかもしれないけど、自ら取り下げることはしないほどの強いシンボル性があるようです。

近代の「自由と解放」の

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19世紀の都市を荒らしたストリート・ギャング集団

19世紀の都市を荒らしたストリート・ギャング集団

田舎と都市とでは概して都市のほうが治安が悪いものです。
田舎はお互い顔見知りだから、何か粗相をしでかすとすぐに悪評がたってそこに住めなくなってしまう。だから治安は案外いい。
しかし都会は基本的に知らない人しかいないから、凶暴性を抑制する規範や道徳が薄い。だから自分と異なるバックグラウンドを持つ人間同士の衝突が起こりやすくなる。
急速に都市化が進んだ地域に地方から大量に人が流れ込み、貧富の格差が広が

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世界に散在する謎だらけの古代文明

世界に散在する謎だらけの古代文明

世界史の教科書の一番初めは、アウストラロピテクスとかクロマニヨン人とかですが、その次は黄河文明、メソポタミア文明、エジプト文明、インダス文明、クレタ文明、アッシリア、ヒッタイト等々、古代世界のメジャーどころが名を連ねます。
ですが、このような古代文明もある時突然起こったわけではなく、彼らの前任者が何千年と文化・技術・言語・宗教・芸術を発展させた上で花開いたものであります。

ということで、今回は

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西ヨーロッパの原型「フランク王国」の正体

西ヨーロッパの原型「フランク王国」の正体

カール大帝とフランク王国と言えば、高校の世界史でも大きく扱われるし、800年の「カールの戴冠」はセンター試験にも登場します。
メロヴィング朝のカール・マルテルがイスラム軍を打ち破った732年の「トゥール・ポワティエの戦い」や、前王のピピン3世が行った「ピピンの寄進」もめちゃくちゃ有名です。
これだけ後のヨーロッパに大きな影響を与えた事柄をが起こったフランク王国ですが、日本ではあまりこの時代は人気

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アイスランドの歴史――アイスランドの建国から第二次世界大戦まで

アイスランドの歴史――アイスランドの建国から第二次世界大戦まで

アイスランドという名前からして寒そうなこの共和国は、面積10万3000キロメートルに対し人口28万人という小国です。北海道と四国を足したほどの面積に、東京都目黒区ほどの人が住んでいる計算です。産業は昔から牧畜・漁業が盛んでしたが、現在では金融産業が主力になっています。
辺境にあったこともあり、世界史の主役に踊りでたことはありませんが、独特の興味深い歩みを見せています。

1. ノルウェー人の植民

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チェチェンの歴史

チェチェンの歴史

「チェチェン」といえば名前くらい聞いたことがあると思います。
では具体的にチェチェンの場所がどの辺りなのか、なぜ人々がテロに訴えてまでロシアに抵抗するか、そこまではあまり知らないのではないかと思います。
物理的に遠いというのもありますが、我々とあまり経済上交流がないというのも日本人がチェチェン問題に疎遠な理由の一つである気がします。
チェチェン問題が複合的理由や現地で実際何が起こっているかなど

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