義己 伊月

はじめまして! 作家志望です〜 ちょくちょく小話を投稿しようかと思っております。軽い気…

義己 伊月

はじめまして! 作家志望です〜 ちょくちょく小話を投稿しようかと思っております。軽い気持ちで読んでみていただけると幸いです〜

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  • Halloween Word

    これから隔週投稿する記事をまとめました。 お見かけした方は、ぜひ読んでみてください!

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桜狩り

 春の晴れた暖かな日。  私は長い階段を上がり、ある神社に来た。近くの公園では花見客が集まっているものの、この神社では皆無に等しい。これほど美しい一本桜が咲いているというのに。  人のいない静寂に包まれた境内で、私は参拝を済ませる。そして早速、鳥居のすぐそばに伸びる桜の元へと向かった。 「綺麗……」  春の風が吹き、桜の花弁が散るその様は晴天の空によく映えた。  しばらく桜の木を眺めて、私はその場に立ち尽くしていた。  もうすぐ新学期がやって来る。一抹の高揚と不安が織り混ざり

    • 名もなき悪魔と孤独な少女 

       オレは悪魔だ。名前はない。  ヨーロッパのとある国で生まれて、約二百年。各地を放浪して、のらりくらりと自由気ままに過ごしてきた。  とある年。オレは日本という国を訪れていた。東の方に行ったことがなかったからか、はたまた興味が湧いたのか、今ではよく覚えていない。  だが、  あの夜の出会いは、オレの中の何かを確実に変えたのだ。  歓喜の震えとも、慄然とも違う。そんなゾクリとした震えを、あの夜に感じた。  あの娘に逢って、オレは全てを変えられた。  赤い月が闇夜を照らす丑三つ

      • Halloween World 其の肆

         陽真理に計画のあらましを話し終える頃には、すべての者が眠りにつく丑三つ時になっていた。  陽真理は深刻な表情で、私の領から届いた報告書を読んでいる。彼女や茉莉と違って、私の領地では悪霊問題が上に挙がることは滅多にない。  墓場の様子や茉莉の仕事量を見るに、これまでにない異常だ。 「この報告書、茉莉には?」 「まだ見せてない。最初は、墓場に入った莫迦を送り届けて、ついでに書類を見せようとしてただけだったんだけどさ、思った以上に悪霊が多かったからねー。そのことも、ついでに報告に

        • Halloween World 其の参

           吸血鬼領とキョンシー領は隣り合わせだ。故に、墓場の管理はそれぞれの領主が手分けして行う。そう、私たち三人で取り決めた。  船員たちがバタバタと船上で駆け回るのを横目に、私は船長室で地図と調査資料を睨んでいた。 (茉莉の忙しさは、明らかに悪霊とアイツのせいだが……この具合だと、あちらも忙しいはずなんだよな……)  悪霊が自然発生することは、まずない。こちらの世界の住民は皆、自由気ままに生活している。未練を残して死ぬヤツは、ほぼ皆無と言っていいほど少ないのだ。この大陸がまだ圧

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          4本

        記事

          Halloween World  其の弐

           部屋に運ばれた私は、マナに支えられて自室で座り込んでしまった。 「大丈夫? 最近は忙しかったらしいし……睡眠と鉄分不足でしょ」 「別に……この、くらいの、体調の急変は……よくある、ことだ……」  まったく大丈夫ではないが、早くマナには出てもらわなければ。 (あの時みたいなことは……もう、起こしたくないのに……)  マナを突き飛ばす力もない私は、ただ顔を背けることしかできない。 「私の血でよければ、飲んでいいよ」  そう言って、マナは躊躇うことなく服をはだけて首をさらす。 (

          Halloween World  其の弐

          Halloween World  其の壱

           この大陸・Halloween worldは、人ではない怪物たちの住まう国である。三つの領地に分けられたその大陸では、それぞれの領主三人が自身の土地を統治し、また助け合って暮らしていた。  その大陸で適用される十の原則。その中で、最も大切なもの。  それは、“自由気ままに生活し、暮らすこと”  かつてこの大陸では、統治していた王が圧政を強いていた。それに嫌気がさした三人は、革命を起こした。その三人は吸血鬼、キョンシー、海賊の頭領と、皆バラバラ。三人は出会い、そして手を取り合っ

          Halloween World  其の壱

          冬の日

           とある雪の日。  私は商店街へ買い出しに来ている。  今日はこれから忙しくなるお正月へ向けて、買い溜めをしに来たのだ。  十二月……もとい師走は、私にとっては繁忙期だ。祓い屋である私のおもな仕事は、神々から放り投げられる依頼をただひたすらにこなしていく魔の作業をする月だ。  だが、基本は自分の社に籠ってくれる神が大多数だ。そのおかげで、細かい雑用仕事が回ってくることはあまりない。  代わりに、身体を張る妖祓いが倍増する。神々からすれば、私たちのような祓い屋が仕事を代行依頼す

          月夜の晩に、二人で

           私は時雨。一人寂しく暮らす鬼だ。  鬼と言っても、姿が変わっているとかではまったくない。化けている姿とそうではない姿は、あまり見分けがつかないとよく言われる。  さて。今夜は十三夜の栗名月である。だが、私の場合はただの月見はできない。 「やはり、ここで飲む酒は格別だな」 「……毎年思うんですが、なんでここなんです?」  隣で猪口の酒を一息に飲み干すお方は、私の主であり、守護神でもある月読命だ。私は月読様と呼ばせていただいているが、本当は夜宮様と呼ばなければならない。  だが

          月夜の晩に、二人で

          詩月の困った日常 壱

           ある日の放課後。  私こと詩月は、幼馴染の時彦に用があったので、弓道場に向かった。明日の依頼内容に、大きく変更があったからだっさた。  しかし、近道である道場裏に続く道にて、女子の声が聞こえた。 「分かりましたわ。私があの女よりも、時彦くんに相応しい事を証明して見せましょう。一週間だけ、時間を下さいな」 「は? ちょっと、何言ってんですか。ちょっと待って下さい。俺はアイツ以外の人とは、」 「その考えを覆してみせます! なので、待っていて下さい。時彦くん。それでは練習に戻りま

          詩月の困った日常 壱

          最近は暑いです。 後編

           ※ 前作の続きです。後編のみでは、あまり楽しめないと思われます。  庭を歩いてきたのは、茜の祖母であり、私が関わる人間の一人・亜香里だった。私と違い、顔の皺が少しばかり目立ち、髪にも白髪が見えているが、まだまだ現役の祓い人として活躍している。  かなり険しい顔をしているが、私の姿を見ると、途端に笑顔になる。 『よっ、元気してた?』 『アンタよりかは、ね。そっちこそ、身体は?』 『最近の健康診断では、とりあえず大丈夫になってきた』  元気そうな亜香里だが、つい先日まで入院し

          最近は暑いです。 後編

          最近は暑いです。 前編

           桜はとうに散り、紫陽花すらも終わりを迎えた。春はあっという間に過ぎ去り、梅雨明けも分からぬほど暑い夏。 「うぅ……なんでこんなに終わらないんだぁ〜!」 「大学のレポートなんて、そんなに簡単なはずないですよ……私も課題が終わらない……」  春から時は流れ、私は新学期を迎えた。私こと渚と茜さんは、それぞれの学校生活を楽しんでいる。  そんなある日。  私と茜さんは、時雨さんの屋敷にお邪魔していた。  そうして、私は高校で出された課題を。茜さんは大学のレポートをやっていた。もう

          最近は暑いです。 前編