読書ノーツ

高校・大学時代は山岳部。趣味は登山・読書です。 「愛(love)」がたっぷりで、面白い…

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高校・大学時代は山岳部。趣味は登山・読書です。 「愛(love)」がたっぷりで、面白いと思った本を投稿します。 守備範囲は文学とSF、そしてエンターテインメントです。

マガジン

  • 「愛(love)」を感じる文学作品

    読んで、深い「愛(love)」を感じた文学作品です。

  • アメリカ的な本

    私の主観なのですが、アメリカ的な本を集めました。

  • 「愛(love)」を感じるSF作品

    読んで、深い「愛(love)」を感じたSF作品です。あたたまりました。

  • 日本的な本

    私の主観なのですが、日本的な本を集めました。

  • ヨーロッパ的な本

    私の主観なのですが、ヨーロッパ的な本を集めました。

最近の記事

圧倒的なロードノヴェル&マジックリアリズム「歌え、葬られぬ者たちよ、歌え」

<文学(166歩目)> 筆力に引き込まれて、3世代の苦悩に感情移入して止まらない。 歌え、葬られぬ者たちよ、歌え ジェスミン・ウォード (著), 石川由美子 (翻訳), 青木耕平 (解説) 作品社 「166歩目」は、ジェスミン・ウォードさんのアメリカ南部の貧困問題を感じるロードノヴェル。 とてもいい作品で、ロードノヴェル&マジックリアリズムで感情移入して読みふけってしまいました。 友人から、フォークナーから難解さを取り除いた作品とのことでしたが、ロードノヴェル&マジッ

    • 粒ぞろいの柞刈湯葉さんの詰め合わせ「まず牛を球とします。」

      <SF(165歩目)> どの作品も素晴らしい。時間があっという間に経っていました。 まず牛を球とします。 柞刈湯葉 (著) 河出書房新社 「165歩目」は、柞刈湯葉さんの短篇集。魅力たっぷりです。 とても読後感がいい。特に5作が私の脳に効きました。 「まず牛を球とします。」 ジョージ・オーウェルさんの「動物農場」が出てきたときには、どんな展開になるのか?と思いました。SFを押さえていて、近未来を考えさせてくれる。そして、いろいろな意味で私の脳をブレークスルーさせてくれ

      • 法廷劇から安楽死問題を考える「神」

        <文学(165歩目)> 倫理学上の問題である「安楽死」を深く考えてみる。 神 フェルディナント・フォン・シーラッハ (著), 酒寄 進一 (翻訳) 東京創元社 「165歩目」は、ドイツの短篇の名手のフェルディナント・フォン・シーラッハさんによる戯曲形式による斬新な試み。「テロ 東京創元社」と同じく短い戯曲形式で新たな問題を提示している。 表題に惹かれて読んだが、精神疾患もなく死にたいと強い意志を持った老人に対し自殺幇助の議論を「法学」「医学」「神学」を要点を丁寧にまとめ

        • 美しい百合の世界「永遠の真夜中の都市」

          <SF(164歩目)> とても美しい。ただ二段組は長いと感じる。 永遠の真夜中の都市 (創元海外SF叢書) チャーリー・ジェーン・アンダーズ (著), 市田 泉 (翻訳) 東京創元社 「164歩目」は、チャーリー・ジェーン・アンダーズさんの人気作。この作品も美しいのですが、なんとも二段組で延々と読まされると、途中で集中力が切れる。 読了までに、努力が必要でした。 設定と、終盤がとてもいいだけに、もったいない。 ジェンダー系SFは旬でもあり、視点も面白い。 これが、も

        圧倒的なロードノヴェル&マジックリアリズム「歌え、葬られぬ者たちよ、歌え」

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        • アメリカ的な本
          91本
        • 「愛(love)」を感じる文学作品
          166本
        • 日本的な本
          55本
        • 「愛(love)」を感じるSF作品
          165本
        • ヨーロッパ的な本
          109本
        • ロシア・東欧的な本
          51本

        記事

          どこの国でもあり得るディストピア世界「グラウンド・ゼロ 台湾第四原発事故」

          <文学(164歩目)> ちょっと他人ごとにはできないリアルさがあります。 グラウンド・ゼロ 台湾第四原発事故 伊格言 (著), 倉本 知明 (翻訳) 白水社 「164歩目」は、伊格言さんのこの作品は、福島第一原発事故の記憶が新しい時から気になっていたのですが、積読から精読に移行させました。 舞台は、台湾の第四原発であり、日本ではない。 しかし、当時の政府発表を関心持って収集していた私たちには、人ごとに思えない「リアル」さがある作品です。 テクノジーとしては、かなりこ

          どこの国でもあり得るディストピア世界「グラウンド・ゼロ 台湾第四原発事故」

          アニメで見たい「空のあらゆる鳥を」

          <SF(163歩目)> アニメシリーズにすると、もっと裾野が広がると思いました。 空のあらゆる鳥を (創元海外SF叢書) チャーリー・ジェーン・アンダーズ (著), 丸紅 茜 (イラスト), 渡邊 利道 (その他), 市田 泉 (翻訳) 東京創元社 「163歩目」は、チャーリー・ジェーン・アンダーズさんの人気作。とにかく美しいのですが、このボーイミーツガールの物語は、アニメ化したらファンが増えると思った。 科学の天才のロレンス、そして美しい魔法使いのパトリシアの愛ある作

          アニメで見たい「空のあらゆる鳥を」

          義肢へ移行したら「ハイブリッド・ヒューマンたち――人と機械の接合の前線から」

          <文学(163歩目)> アフガニスタン紛争地に従軍して両脚を失ったハリー・パーカーさんが、身体と義肢との融合時に感じること、伝えてくれます。 ハイブリッド・ヒューマンたち――人と機械の接合の前線から ハリー・パーカー(原著), 川野太郎 (翻訳) みすず書房 「163歩目」は、今までありそうでなかったカテゴリーの本で、義肢の歴史から、最新テクノロジーまで。 ご自身の経験と、深い研究から明かされた作品で、初めて理解できたことが多い。 また、みすず書房さんなので興味を引く

          義肢へ移行したら「ハイブリッド・ヒューマンたち――人と機械の接合の前線から」

          コミカライズされているが、本(テキスト)から入った方がいい「横浜駅SF」

          <SF(162歩目)> 先に、コミカライズされた作品から入ってしまいました。インパクト強くて、書籍の方で登場人物が顔まで想像できて、逆に柞刈湯葉さんの主旨を逸脱した感じしています。 横浜駅SF 柞刈湯葉 (著), 田中 達之 (イラスト) 角川書店 「162歩目」は、柞刈湯葉さんの人気作。私は、新川権兵衛さんの漫画から入ってしまった。 すると、作中に出てくる「横浜駅」や登場人物のイメージがすべて新川さんの絵になってしまい、柞刈湯葉さんが描いた笑える箇所が素直に笑えなくな

          コミカライズされているが、本(テキスト)から入った方がいい「横浜駅SF」

          憎しみから生まれるものは憎しみなのだが「11日間」

          <文学(162歩目)> テロとの戦いに従軍する息子を待つ母の物語。 11日間 リー カーペンター (著), Lea Carpenter (著), 高山 真由美 (翻訳) 早川書房 「162歩目」は、リー カー・ペンターさんの同時多発テロ以降のテロとの戦いに埋没していくアメリカの軍に従事する家族の作品。 どの戦争が、ひどいとかはなく、戦争そのものがひどいとは思う。 しかし、特に「戦争」ではなく、「戦闘」で解決しようとする作戦に従事される軍人は、様々な国際法の法規は関係なく

          憎しみから生まれるものは憎しみなのだが「11日間」

          超難解だけど、最後まで引っ張る作品「シルトの梯子」

          <SF(161歩目)> いつもの如く、噛み応えありのハードSFの世界で新たな世界を見つめてみる。 シルトの梯子 グレッグ・イーガン (著), 山岸 真 (翻訳) 早川書房 「161歩目」は、グレッグ・イーガンさんの超ハードSF。 イーガンさんの作品は、常にハードSFですが、硬度がダイヤモンドレベルでカタいです。 イーガンさんの作品は、一読で理解しきれないこと多い。 この「シルトの梯子」も二読してしまった。 理論が難解なのですが、やっぱりオモシロい。 イーガンさんの作品

          超難解だけど、最後まで引っ張る作品「シルトの梯子」

          強い「愛(love)」を感じる反戦の物語「マーリ・アルメイダの七つの月」

          <文学(161歩目)> 知らなかったスリランカの内戦を知ることができた。そして、こんな表現方法があるんだと強く感じました。 マーリ・アルメイダの七つの月 上 シェハン・カルナティラカ (著), 山北 めぐみ (翻訳) 河出書房新社 マーリ・アルメイダの七つの月 下 シェハン・カルナティラカ (著), 山北 めぐみ (翻訳) 河出書房新社 「161歩目」は、スリランカのシェハン・カルナティラカさんの作品。内戦の問題を突く作品ですが、表現方法があまりない作品です。 死者の

          強い「愛(love)」を感じる反戦の物語「マーリ・アルメイダの七つの月」

          究極の“透明性”って大変です「透明都市」

          <SF(160歩目)> SNS等々で問題になる個人情報保護の問題。隠すものではなく、まさに「透明」に見せるものになったら。 透明都市 リリア・アセンヌ (著), 齋藤 可津子 (翻訳) 早川書房 「160歩目」は、フランスのリリア・アセンヌさんの意欲的な作品。 テーマは、「隠すもの」を皆が「公開するもの」にしたフランスの「新革命」の世界。 ただ、大きなテーマに隠れているものは、人間の本質だと思う。 誰もが「犯罪の被害者」になりたくない。その予防の一環での大きな「革命」

          究極の“透明性”って大変です「透明都市」

          行きつくとこまでいくと不条理は笑いで表現するしかなくなる「ハルムスの世界」

          <文学(160歩目)> ソ連のスターリン時代の不条理を、乾いた笑いで突く作品集です。 ハルムスの世界 (白水Uブックス) ダニイル・ハルムス (著), 増本 浩子 (翻訳), ヴァレリー・グレチュコ (翻訳) 白水社 「160歩目」は、ダニイル・ハルムスさんの短篇集。 カルト的な人気になっていますが、スターリン時代の人間をすりつぶす不条理を描くには、乾いた笑いが必要なことが心に突いてきます。 超短篇集で、最初は戸惑いました。 初めの方にある「落ちて行く老婆たち」。とて

          行きつくとこまでいくと不条理は笑いで表現するしかなくなる「ハルムスの世界」

          美しい「愛(love)」を感じる「世界の終わりの天文台」

          <SF(159歩目)> 帯にあった『インターステラー』×『渚にて』のSF感動作というのは本当でした。 世界の終わりの天文台 (創元海外SF叢書) リリー・ブルックス=ダルトン (著), 加藤 直之 (イラスト), 佐田 千織 (翻訳) 東京創元社 「159歩目」は、リリー・ブルックス=ダルトンさんのこの作品は、SF色よりも、文学・エンタメ作品寄り。 ハードSF愛好家には物足りないが、美しいエンターテインメントならば良品です。 映像化されたのもうなづける「美しさ」があり

          美しい「愛(love)」を感じる「世界の終わりの天文台」

          グレーゾーンで生きるとは「ハーレム・シャッフル」

          <文学(159歩目)> 「地下鉄道 早川書房」と同じく、アップテンポに進む虐げられた者たちの世界。 ハーレム・シャッフル コルソン ホワイトヘッド (著), 藤井 光 (翻訳) 早川書房 「159歩目」は、「地下鉄道 早川書房」のコルソン・ホワイトヘッドさんの作品。冗長になることなく、どんどん読ませてくれます。 中篇3作品ですが、ニューヨークのハーレムでの「真面目に生きよう」とする主人公が、ファミリーの助けあいの中で手を出したことで巻き込まれていくアップテンポな展開に目

          グレーゾーンで生きるとは「ハーレム・シャッフル」

          70年前の作品も、かなり突いてきます「人間の手がまだ触れない」

          <SF(158歩目)> 何気に、現代社会の問題点も突いています。予測はしていなかったと思いますが、人間の本質をうまくとらえていたと感じました。 人間の手がまだ触れない ロバート シェクリイ (著), Robert Sheckley (原名), 稲葉 明雄 (翻訳) 早川書房 「158歩目」は、ロバート・シェクリイさんの70年も前の短篇集です。 作風は勿論、70年前で古いが、心を突くものが多く、21世紀の私たちにも興味深い作品になっている。 そして、この短篇集に入っている

          70年前の作品も、かなり突いてきます「人間の手がまだ触れない」