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サバイバル・ノンフィクションの一つの頂点「絶海 英国船ウェイジャー号の地獄」

<文学(134歩目)>

海賊が跋扈していた18世紀を舞台にしたサバイバル・ノンフィクションは時代の前提がまるで違う。でも、法の裁きを適用する際は21世紀的でした。

絶海 英国船ウェイジャー号の地獄
デイヴィッド グラン (著), 倉田 真木 (翻訳)
早川書房

「134歩目」は、デイヴィッド・グランさんのサバイバル・ノンフィクション。でも、特に帰国後の裁判については法廷文学として秀逸でした。

1740年にスペインのガレオン船を拿捕して略奪をするため(目的が既に、21世紀的には「海賊行為」)に、イギリスのポーツマスから出航した軍艦5隻。

しかし、意気揚々と出航するも現実はとても厳しく、謎の伝染病で多くの乗組員が亡くなった後に、南米大陸の最南端の地域で座礁する。

ここから、凄惨なサバイバルが始まるのですが、このサバイバル・ノンフィクションを読むために手に取った。しかし、無事にイギリスに帰還した後の法廷での闘いが、この本を特別なものにしている。

色々なノンフィクションを読んだが、帰国後の問題点をきちんとあぶりだしたものは少なかった。

その意味で、とても新鮮であると同時に、その壮絶な環境に置かれたときに人間というものはどうなるのかがあぶりだされている。

帰国した後に待ち受けているのは普通の人間の集合体である社会。

社会は、サバイバルとか関係なく、長く営まれてきた人間間の総意で各種法律が定まっている。サバイバルを理由にしては法律の前では無力。そんなところも丁寧に描かれている。

まさか、300年近く前のサバイバル・ノンフィクションの良作が刊行されているとは知らなかったのですが、サバイバル・ノンフィクション好きの方ならば必読レベルで高い水準の本です。

今日で267日目、私の朝のルーティンです。

#朝のルーティーン

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