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じんるいと向きあう月の淋しさよ

やくそくよまだ果たされず秋の虹

寺のかげうつくしいのも十五夜か

いぬのかげ飼いぬしのかげ秋夕焼

わきあがりながれおちては山霧よ

いっせいに時間飛ばすか草絮吹く

ひとつぶもひかりこほさず葡萄棚

混ざりだすそらよじかんよ秋夕焼

折りとればさわさわさわぎ芒はら

たかぞらよ風にさらわれ草のわた

ひとふさよまるいひかりの黒葡萄

望郷よまた見うしなうあかとんぼ

どのうしろすがたも花野風となれ

いちりんよちいさいながら菊日和

あたっては日かげる嶺々よ雁の列

ゆうやみよ色濃くならぶ稲架の列

雁の列かたちをもたずゆうぞらよ

あきのあめついに港の灯をともす

まんげつよ大橋のかげうみのうえ

野のとんぼはねしか見えず日の光

野良猫のふりむきがおよ露の路地

曼珠沙華みずたまりにも曼珠沙華

せいようにとうように鐘秋のくれ

文芸編集者が今、本当に考えなければいけないこと

2日前

見た夜々もひとすじにきえ天の川

家いえよさかえほろんで秋すだれ

おくにこそ一糸けぶってあきの滝

金閣よきんいくすじもあきのあめ

あおぎみてみずからを知る天の川

初恋よ以後うつくしくあまのがわ

銀閣をうつすみなもよあきのあめ

にじいろよ爪はじくときつゆの玉

踏みあるくひとすじの間よ竹の春

ゆく犬の腹まで濡らす野のつゆが

こめ炊いてたわらむすびに豊の秋

剥き終えてすでにしたたる梨の玉

とおざかるいまをながめて雲は秋

うずもれてまっさおな壜あきの浜

ちんもくよこどくかりりと落花生

馬鈴薯が丸ごといくつシチュー皿

いえごとの灯にものがたり天の川

ゆくみちよかげに日なたに山紅葉

ゆく道よ黄をうつくしくもみじ山

三千世界葉さきにひかるつゆの玉

名月よ夜の野をはしるかぜのおと

京路地よ吹きほそってはあきの風

水たまりほのと光っていなびかり

口語俳句 作品集 25 〜露の玉〜

すずめ跳ぶたがいちがいに大刈田

まいとしよ真あたらしくて望の月