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出版社で営業や編集などの経験を経たのち、上場しているエンタメ企業で経営管理として15年…

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出版社で営業や編集などの経験を経たのち、上場しているエンタメ企業で経営管理として15年働き、事業管理、グループ管理、IR、M&Aなどをやってました。出版、アニメ、映像、ゲーム事業等は一通りわかります。今は小さな会社に転職し管理全般やIPのライセンスを担当。

最近の記事

小説の電子化が進まない理由

 小説家になった方の素直な疑問の記事を拝見した。  私も明確には理由を掴み切れていないが、実際の数字を織り交ぜてなぜなのかを考えてみたいと思う。  ちなみに最初に言及しておくと、最大の要因は年齢層が高いからだと思っている。  現在、一般文庫を買う人は60代あたりの人が多い。これは書店さんが提供している購買者統計をみれば明らかで、ここに出せる証跡はないが、業界にいる人ならわかっていることだろう。  なので、ここではそれ以外の要因について考えて見よかと思う。 ジャンルによる電

    • 文芸編集者が今、本当に考えなければいけないこと

       下記記事を読んだ。  熱意があり、いろいろと行動も起こしていて、とても良い編集者さんなんだなと思った。  ひとりでも多く、こういう編集者が増えてほしいし、応援はしたいと思う。切に。  ただ、それと同時に、ビジネス面にはほとんど触れられていないところに違和感を感じたので、ちょっとそのあたりを書いてみようかと思う。   文芸は市場環境が全く良くない  このアカウントではさんざん愚痴的に書いてきたが、文芸作品の市場は結構厳しいものがある。  上記の作品は受賞作家さんなのでま

      • 海賊版対策に正規版を流通させるハードルについて

         以下記事を読んだ。ちょっと思っただけのことがあるので短い記事を1点。  コンテンツ産業にいる人間にとっては海賊版は頭の痛い問題だ。対策するだけでも膨大なお金と手間がかかり、かといって放っておくと徐々にちゃんとしたお客が減っていき、産業が衰退する。  そして、海賊版対策の最たるものは、公式が、きちんと有料、公式でコンテンツを楽しめる環境を作ることだと言われる。  だが、考えても見てほしい、きちんと有料サービスとして多言語、多文化対応するのは非常に大変なことなのだ。  海賊

        • ターゲティングと3本の柱

           その昔、情報雑誌を作っていたことがある。その時にいろいろと学ばせてもらったことは多いが、その中の企画の立て方などは、どんな商品を作る上でも言えるマーケティングの基礎だったように思う。  今回はそこのところを書いてみようかと思い立った。 雑誌=ブランド=ユーザー層  雑誌というのはどの雑誌においてもブランドとして運用される。ファッション雑誌などが顕著だが、雑誌にはそれぞれのカラーがあり、そのカラーが特定の読者層を形成し、結果それがブランドになる。  そしてそのカラーを作り

        小説の電子化が進まない理由

          小説の英語圏輸出のハードルの高さ

           英語はグローバルな場でもっとも使われている言語であり、母語として英語を使っている人は少ないが、多くの人が読み書きできる言語である。  だが、英語への小説のIP輸出は非常に難易度が高い。  今回はそのあたりの話を書いてみようかと思う。 翻訳出版の状況  小説の英語翻訳のハードルが高いというのは、昔からそうで、唯一講談社は講談社インターナショナルなどを作って細々と自社の作品を英訳出版していた。  現在、多少状況は変わっている部分があって、東野圭吾などの大人気作家の作品は少数

          小説の英語圏輸出のハードルの高さ

          隙あれば自分語り(好きあれば自分が足り)

           たまにはちょっと自分語りをしてみる。といっても仕事にまつわるキャリアの話だ。 1社目:小さい出版社  自分が最初に就職したのは小さな出版社だった。雑誌、小説やコミックなども出している会社で小さいながらもいろいろな種類の出版をやっていた。  学生時代からゲームを中心にエンタメコンテンツが好きだった私は、建築学科にいたものの、当時の建築業界のスーパー不況の状況と、その中で発生していたスーパーブラックな話を聞き、とても自分は行く気にならないとあっさりと人生の方針展開を行い、エ

          隙あれば自分語り(好きあれば自分が足り)

          アニメビジネスで収益を上げるということ

           アニメ産業は割と目立っている産業である。みんな割と見ているし、アニメが割合好きだったり、それなりに見るという人は20年前に比べると大きく増えただろう。  そもそも深夜アニメのスキームが定着したのは1990年代後半以降。その頃10代後半だった人たちは、今は45~50歳程度でそれ以上の世代はあまりアニメを見てこなかった世代となる。それがそのまま年齢が持ち上がっていって、結果として幅広い年代で楽しまれるコンテンツになったというイメージだ。  今回はそんなアニメのビジネス的側面から

          アニメビジネスで収益を上げるということ

          「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」を読んだ

           表題の件の本を読んでみた。  それは、自分自身も本を読む量が昔より減っていることもあるし、本に関わる仕事をしているからでもある。  以前にもどこかで書いたが、今、本が売れないのは大人があまり本を読まなくなったからだ。それはいろいろなところの統計に出ており、議論の余地はあまりない。  だが、なぜ読まなくなったのか、それとも、読めなくなったのか、環境の影響なのかという部分が自分の中でふわっとしており、それをハッキリと言語化したかったというのが、この本を読んだ動機だ。 文脈と

          「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」を読んだ

          シェア型書店についての話

           シェア型書店という言葉がある。最近、少しづつ増えているようなのでそれについて考えてみたいと思う。  なお、下記記事によると、シェア型書店は2021年に40店舗ほどあるらしい。 どこまで広がるか  結論から言うと、そこまで広がらない、と私は思っている。  なぜならば、そこまで読書が好きな人の人数がそれほど多くないからだ。  シェア型書店の棚主になるような人は、よっぽどの読書好きで、自分の好きなものを他の人へお勧めしたいとか、布教したいという欲求によって、月数千円を払いなが

          シェア型書店についての話

          事業計画の非常に簡単な立て方

           私は、過去、経営管理を15年以上やってきた経験を持っている。  最近、Noteで店舗経営を行いたいというような、希望に満ちた記事をいくつも見た。  そういった人の助けになるかもしれないので、事業計画の簡単な立て方を書いてみようかと思う。  私個人としては、事業計画の策定は、ぼんやりしたイメージを具体的に詰める際にとても有効な手段だと思っている。  計画通りに実行することが目的では無くて、計画を立てる過程で不明瞭な箇所が洗い出され、思い至っていなかった部分とか、新たな課題が見

          事業計画の非常に簡単な立て方

          書店経営難を考えるを読んで考えてみた

          上記記事を読んだ。こちらは、あくまで書店サイドから見たアイデアが語られていて、それはそれでわかる部分も多いのだが、やや近視眼的なのかもと思ったので、元出版社社員として出版社側から見た景色も記載しておこうかと思う。 出版社が負担しているものー①物流協力金  元記事にもあるが、もともと雑誌物流に合わせて毎日書店に届いていた書籍だが、雑誌ビジネスが大幅に縮小し、相乗りが出来なくなって書籍の物流も非効率になった。  その上で、書籍の物量も縮小し、燃料価格、運輸コストの増大もあって

          書店経営難を考えるを読んで考えてみた

          生成AIとコンテンツについて

          まずは話の入り口として以下の記事を紹介しておきたい。  細かい部分は記事本体を読んでいただきたいのだが、この記事の中で野尻氏は『生成AIで世界はこう変わる』 (SB新書、今井 翔太 著)の創造の3分類を引用し、  と記載されている。  この部分については私も同様の感覚を持っており、結局のところそれがイラストであれ、物語であれ、単にAIだけで作ったというだけの物には「何を見せたいか」が欠如していて、単に、へーこんなこともできるようになったんだねー。以上の面白さはない。  必

          生成AIとコンテンツについて

          図書館向けの本の存在について

           皆さんは図書館向けの本というものをご存じだろうか?  そもそも図書館においてある本は、もちろん一般的に書店で売られている本も多いのだが、実は図書館を主要ターゲットとして、そこ向けに作られている本もそれなりに多い。  今回はそんな話をちょっと書いてみようかと思う。 薄くて高くて奇妙なサイズ  公共図書館などで特に児童書、子供向けの本の類で、1冊は30ページから40ページ程度に薄く、にもかかわらず値段は3000円以上で、つくりは割と丈夫。シリーズで同じ形の数冊セットになって

          図書館向けの本の存在について

          図書館と書店の関係について

          こんな記事を目にしたのでちょっと補足をしたいと思った。  この記事の著者は出版の動向についての記事が多いので、完全にわかっていて、ボリュームの関係か、主題がぶれるからか、記事中には意図的に書いていないことなのであろうが、日本と北米ではそもそも書店のあり方が全く異なる。  そのため、書店が提供しているサービスも、引いては図書館の利用方法やニーズも全く異なるところがある。  私の自己満として、この記事の補足としてそんな情報を書いていこうと思う。 北米の書店とはどういうものか仕

          図書館と書店の関係について

          クリエイターは個人事業主でもあるという話

           アニメやゲームは集団的創作、小説やマンガは個人的創作になることが多いという話を以前書いた。  そういう意味で、小説家やマンガ家、イラストレーター、ライターのような人たちはクリエイターであるとともに、個人事業主であることも多い職業だ。  つまり、物を作るということをやりながら、それで生活をするために事業を回すということをやらなければいけない。多くのクリエイターは事業を回す方は面倒だと感じがちで、基本的にクリエイティブに全力集中したい人が多い。  そりゃそうだと思いつつ、現実

          クリエイターは個人事業主でもあるという話

          データドリブンマーケティングの副作用

           データをもとに判断をする、最適化をしていくことは、効率を追求する上で非常に有用な方法であると私は認識している。  だが、データドリブンな手法には結構副作用も多いようにも感じている。それはマーケティングにしかり、経営にしかり。  長年データドリブンの経営、マーケティングをリードするべきポジションにいて経験を積んでいたものとして、そのあたりをメモとして残しておこうと思う。 見えないデータの存在を忘れる  データドリブンな経営、マーケティングを支えるのは、詳細なデータになる。

          データドリブンマーケティングの副作用