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図書館向けの本の存在について

 皆さんは図書館向けの本というものをご存じだろうか?
 そもそも図書館においてある本は、もちろん一般的に書店で売られている本も多いのだが、実は図書館を主要ターゲットとして、そこ向けに作られている本もそれなりに多い。
 今回はそんな話をちょっと書いてみようかと思う。

薄くて高くて奇妙なサイズ

 公共図書館などで特に児童書、子供向けの本の類で、1冊は30ページから40ページ程度に薄く、にもかかわらず値段は3000円以上で、つくりは割と丈夫。シリーズで同じ形の数冊セットになっているような本を見たことはないだろうか。
 例えば下のリンクの啓林館の出しているような本がそれだ。

 これらはおそらく(推測なので確実にそうとは言えない)が、図書館向けに作られている本だと思う。
 これらの本は基本的に書店に並ぶことはほとんどなく、基本的には図書館を主要ターゲットとして作られている本になる。

図書館向けの本のターゲット

 一般的に書店に並ぶ児童書は、子供向けではあるが、実際には親をターゲットに本を作る。財布のひもを握っているのは親であり、子供に読ませたい本を作ることが「売れる」「売れない」に響くから。
 つまり実際には、子供に読ませる本ではあるが、親を喜ばせるための本づくりをしている。
 これが、児童文庫や、ライトノベル的なものであれば、子供に自分の小遣いで買ってもらうことを想定するので、親を意識することは多くないのだが、割と値段の高い絵本や児童書単行本はどうやっても、【お金を出してくれる本当の顧客】を意識せざるを得ない。
 それと同様で、こういった本は図書館員や司書をターゲットにしていて、最終消費者である子供の間にさらに1枚挟まったような形になる。
 図書館員や司書に対し、「子供を持つ親が喜びそう」と思わせる本だったり、「図書館に置いておきたい本」と思わせる本を作る。
 なんだかちょっと言葉にはしにくいモヤっと感があると思うが、そういうモノなのだ。で、実際にそういった図書館向けの本を主力とする出版社も数は少ないがそれなりに存在している。
 そして、この図書館に買ってもらう本というのはメリットもある。なぜならば無料であれば読んでみたいと思わせる内容であれば本の企画が成立するからだ。
 その結果として、マイナーな内容だけどとてもためになりそうな本というような感じの企画が成立して、図書館に並んだりする。

図書館向けの本の流通とTRC

 そういった図書館向けの本があるということは、その本の流通というのもまた微妙に特殊だったりする。
 図書館流通センター(TRC)という取次がありそれが全国の図書館と取引しているケースが多い(もちろん、地元の本屋さんの外商からの仕入れだってあるが…)
 このTRCは日本出版販売という、大手取次の傘下なので、一般書籍と近い流通経路ではあるが、法人格としては別なのでやっぱり違う流通なのである。
 で、このTRCなのだが、図書館を相手にサービス提供をしているので、実は本の卸だけをやっているわけではない。
 十字架の手配や目録整理、トイレ等の清掃サービスの手配から移動図書館用の車だって売ってる。
 普段一般の人からはなかなか見えない商売だけに、HPとか覗いてみるとけっこう新たな発見があって面白いんじゃないかなと思う。

https://www.trc.co.jp/index.html

 ちなみに私はアロマまでやっているのに驚いた。確かに最近、住民に支持される図書館を目指した結果、憩いの場としての性格を強めてきている感があるが、こんなこともやってんのね、幅が広い!
 まぁ、最近は指定管理者制度によって、図書館運営はどんどん民間に管理運営が委託されるようになってきていて、TRCも公共図書館596館、学校図書館897校も運用しているそうなので、そういう意味では自分事で、そこで培ったノウハウをサービスとして提供しているわけだ。
 リラクゼーションスペースを税金で賄う意味、と一瞬思ったが、屋外であれば公園は憩いの場だし、屋内の憩いの場があったっていいよねという気もする。
 ちょっとなかなか知らない図書館豆知識でした。

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