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事業計画の非常に簡単な立て方

 私は、過去、経営管理を15年以上やってきた経験を持っている。
 最近、Noteで店舗経営を行いたいというような、希望に満ちた記事をいくつも見た。
 そういった人の助けになるかもしれないので、事業計画の簡単な立て方を書いてみようかと思う。
 私個人としては、事業計画の策定は、ぼんやりしたイメージを具体的に詰める際にとても有効な手段だと思っている。
 計画通りに実行することが目的では無くて、計画を立てる過程で不明瞭な箇所が洗い出され、思い至っていなかった部分とか、新たな課題が見つかってくるので、それを潰すことができることが事業計画策定の最大のメリットだと思う。

やりたいことをするのにお金がどれくらいかかるかを書き出してみる。

 店舗運営をしたいのであれば、まずは店舗を決めなければならない。実際には物件を探さなければいけないが、物件は出物なので、とりあえずやりたいことをベースに場所と広さを決め、相場の家賃を調べてみるのが良いと思う。

設備にかかるお金

 かかる家賃や保険料などに加え、ビルの警備費や清掃費が別途かかる場合もある。そのあたりも調べて費用として計上しよう。そういった毎月かかってくるようなランニングコストに加えて、敷金のような初期だけかかってくる費用などもあるので、それぞれ分けて計上するのがオススメ。
 次に水道光熱費、この辺りは広さによっても来るので、調べれば目安ぐらいはわかる。それもランニングコストとして計上しよう。
 設備に関する費用はそんな感じだ。あとは什器や店内の建具設備などの固定資産の償却費とかが毎月乗ってくるがそのあたりは後回しにしよう。まずは出ていくお金と稼ぐお金のバランスのプラスを目指さねば…。 

活動にかかるお金

 次は活動のためのお金になる。
 通信費。いわゆるネット料金とか電話代とか。
 運賃送料。郵送物とか宅急便とか。
 手数料。税理士さんとか社労士とか弁護士とかの士業報酬が多い。
 この辺りは調べればなんとなくの目安がわかる。調べて必要な分を多少余裕をもって計上しておこう。
 
 そして、ここから先は働く人数によって数字が変わってくるものになる。
 消耗品費。文房具とか、プリンタ用紙とかインクとか、細々したもの。一人、月にどれくらい使いそうかなーというのを想像し人数をかけて計上できるようにしておくとよい。
 加えて、毎月買うわけでもないけど、年間にこれくらいのものは買うよねとか、こういうサービスは使うよね。とかってものをイメージしながら計上しよう。PCのマイクロソフトとかGoogleのサービスとかもサービスと料金が個人と法人で違ったりするのでちゃんと調べて計上したほうがいい。
 新聞図書資料費。会議費、接待交際費。交通費。どれくらい使うかを想定して一人、月平均いくらとかを決めて、人数掛けて入れておくといい。
 出張交通費、出張旅費。これは年間これくらい使うかな? という感じでざっくり入れる。

そして人件費

 あとは人件費。給与、賞与、法定福利費、通勤交通費、福利厚生費など。本来なら細かく詳細を詰めた方がいいが、給料のほか、残業代などの手当てや、社会保障の会社負担分などがあるので、年収×1.5などで人件費を見積もっておくとよい。
 加えて、予備費を毎月いくらか積んでおこう。
 さて、そうやってやっていくと、ざっくり毎月いくら出費があるのかが見えてくる。 

売上もしくは損益分岐の検討

 そうしたら次は売上側に入ることになる。が、売上側は本来であれば似たような業種の似たようなパターンから推定するのが一番良いものの、中々そういった情報は見つけにくい。
 なので逆算して、かかっている費用をペイするためのハードルを計算してみると良いと思う。つまり損益分岐となる売上が現実味があるかどうかを見てみるというアプローチになる。
 
 店舗の小売り商売は、売上は客単価×人数でざっくり表される。それに類似業界や事業内容から想定できる原価率を掛けて原価を作り、販売費(販促費や物流費)、宣伝広告費などを見積もっていく。大体は売り上げに対する率で想定してしまってもいいかもしれない。
 売上からそれらを引いた利益が、上記費用とつりあえばOKだ。
 なので、想定客単価を決め、ざっくり粗利率を調べ、逆算で必要な客人数も算出できる。月の客数が見えたらそれを営業日で割って1日あたりにして、店舗の営業時間で割って1時間当たりの客数にしてみる。そこまで分解すると、大分数字は身近になり、それが現実的かどうかが判断しやすくなる。

ペイできないことがわかったら

 大抵こうやって詰めてみると、想定していた事業はなかなかペイできないものが多い。むしろそこからが本番で、では、何をすればペイできるのかを考えなければならない。
 客単価を増やす方法があるのか、営業時間を延ばすのか、営業日数を増やすのか、それとも店の広さや場所を変えるのか、事業を回す人数を減らせるのか。などなどなどなど。
 いろいろな方策を講じて対策を考えることが、先にも述べたが事業計画を作るメリットの一つだ。対策を考え、しらべてみると、大体実際にやった前例が出てくる。そして、多くは失敗している。その際、なぜ失敗したのかを調べれば、そのアイデアのどこに「想定外」があったのか見えてくる。その問題に対して対策ができるのか、また別のアイデアを考えるのか。
 そうやっていって計画を詰め、アイデアを煮詰めていく作業となる。
 要は設計図を作ってみるということだ。やってみないとわからないことというのは当然存在するが、やらなくても設計してみればわかることというのは結構多い。

ある程度煮詰まったら、数年間の計画表を作ろう

 ある程度アイデアが煮詰まって、これならいけそうとなってきたら、計画をもう少し精緻なものにしていこう。3~10年間ぐらいの複数年の計画を立てていこう。
 人員の採用をいつ、どのタイミングから行うのか、事業を動かす人だけでなく、会社や組織を回すための人(人事とか経理とか総務とか)も必要だ。そして採用コストにいくらかかるのか。
 人件費も給与、賞与、それぞれの社会保障費、通勤交通費などにどれくらいかかるのかを精緻化し、上の採用計画に合わせて展開する。
 最初の設備にいくら掛け、その更新はいつになるのか。耐用年数がどれくらいあって償却費がどうなるかを具体化して計画に織り込んでいこう。
 販管費は、いろいろな会社が明細を出しているので、その勘定科目ごとに自分の想定している内容を当てはめながら埋めていくと、漏れが少なくなるのでお勧め。
 いつからどうやって店やサービスを宣伝するかもそこで決めていけば、開業に必要な初期費用も見えてくる。
 そうすると大抵、売上の見込みが足りなくなってくる。そしたら前のようにどうやって売上を上げるのか、費用を下げるのかの対策を検討いくことになる。

 それらが全部クリア出来たらあとは赤字期間を持たせることができるだけのお金を調達して開業に向けて実際に動けばいい。
 銀行は担保なしではなかなかお金を貸してくれないが、計画がきちんとできていて、勝算をきちんと説明できれば、お金を貸してくれることもある。
 ここまでやっても想定外のことは死ぬほど発生するので、資金は余裕があった方がいいし、大きな想定外があれば、全面的な見直しが必要になることもある。だが、計画が作られていれば、事前にアレコレ考えているので、事業を回していてただでさえ時間が無い中で、無意味なアイデアを検討して時間を無駄にすることは防げる。
 
 どうか、夢ある人はうまくいってほしいと切に思う。


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