海賊版対策に正規版を流通させるハードルについて
以下記事を読んだ。ちょっと思っただけのことがあるので短い記事を1点。
コンテンツ産業にいる人間にとっては海賊版は頭の痛い問題だ。対策するだけでも膨大なお金と手間がかかり、かといって放っておくと徐々にちゃんとしたお客が減っていき、産業が衰退する。
そして、海賊版対策の最たるものは、公式が、きちんと有料、公式でコンテンツを楽しめる環境を作ることだと言われる。
だが、考えても見てほしい、きちんと有料サービスとして多言語、多文化対応するのは非常に大変なことなのだ。
海賊版側は楽だ。どんな文化の国にどんな文化の作品を持ってきたとしても、責任を問われることは無く、どんなひどい翻訳であっても、無料なので文句も出ることは無い。
キチンとやるには、文化を調べ、その国や地域のレーティングに適応するように、場合によってはコンテンツを修正する必要があるし、翻訳家に翻訳料をしはらって、文化的にわかりにくい表現には補助的な説明を入れるなどしていく必要がある。それにはとてもお金がかかる。
クリエイターも納得する翻訳である必要もあるし、現地の人が読んでわからないような表現は問題外だろう。一時期、アジア地域の観光地に行くと、日本人が読んでもわからない日本語で表記された何かがあったりしたが、そういったものにするわけにはいかない……。
そして、それだけかかったお金を回収できるほど売れれば問題ないが、マイナーな言語や地域では、回収はままならない…。
ちょっとした解決策(アイデア)
私が思っている解決策の一つが、翻訳と、コンテンツの分離だ。
ゲームの翻訳MODのようなイメージで、日本では日本語のコンテンツを置いて配信する。それを再生側のアプリケーションで別途翻訳ファイルを読み込ませる形で翻訳を表示する形だ。PCやスマホのアプリケーションで再生させるものであれば、技術的には可能だと思う。
海賊版の翻訳にしても、善意の誰かが翻訳しているケース、海賊版業者が翻訳しているケースなど様々だが、後者は論外として、善意の誰かが翻訳しているケースはかなりもったいない。そういった人たちが翻訳ファイルだけ作れるように仕組みを作れば、翻訳MODは有志の手でより良いものにUPDATEできるし、元となるコンテンツはそのまま売れるし、両得だと思うのだ。翻訳ファイルは別売りできるようにしたら、それはそれでありなんじゃないかなとも思う。
一方、そのアイデアも多くの問題点をはらんでいるのは自覚している。
例えばアニメで、字幕を入れられる仕組みだとしても、本来の意味合いとは全く異なる文章を入れられたMAD製造機になる可能性だってある。
文字情報だけなら、そう簡単に滅多なことにはならないと思うが、ウイルス的なものや、意図しない広告、リンク等を埋め込まれることもあり得るだろう。
つくられる翻訳MODは作家のクリエイターコントロールを完全に外れるので、それでもいいよと言ってくれる作品から始める必要もある。
そして、残念ながらこのアイデアは文化的適合については全く解決しない。
日本では創作物の表現は高い自由度がある。レーティングも多少あるし、スミケシとかモザイクなど局部表現に規制があったりもするが、文化的に内容が制限されるものはあまりない。
だからこそ生み出せる面白い作品も多いのだと思うが、逆に、特定の宗教、文化、風習にある人にとっては、良くないと思われる表現だって多い。
通常のコンテンツ輸出の場合は、配信サービス側がそこをチェックして場合によっては特定の国や地域をはじく。
日本から配信しようと思ったら、そこを自分たちでやらねばならない。だが文化や風習というのは明文化されていないものも多い。それこそ現地人でもなければわからないような問題も多数ある。難しい。
クールジャパン戦略を考える経産省や文化庁などは、そのあたりをサポートしてくれないだろうかと、常々思っている。
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