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#306「ビジネス頭の体操」 今週前半のケーススタディ(5月17日〜19日分)

はたらくおとな向け。普段の仕事と無関係なケーススタティで頭の体操。
その日にちなんだ過去の事象をビジネス視点で掘り下げています。
普段の仕事を超えて、視野を広げ、ビジネスの頭の体操をするのにぴったり。
考えるための豊富な一次情報やデータもご紹介。

 →部分は、頭の体操する上での自分に対する質問例、です。


5月17日(月) 日本での臓器移植、年間○○○例。

ドナー(臓器提供者)の家族で作る「日本ドナー家族クラブ」(JDFC)が2002年(平成14年)に制定した「生命・きずなの日」です。
日付は5月は新緑の候で生命の萌え立つ季節であることから、17日は「ド(10)ナー(7)」と読む語呂合せから。生命の大切さ、生命の絆について考える日とされています。

臓器提供。
1997年(平成9年)10月16日、「臓器の移植に関する法律」(臓器移植法)が施行されたことにより、脳死後の心臓、肺、腎臓、肝臓、膵臓、小腸など臓器の提供が可能になりました。
要件が厳しかったこと等を受け、2010年(平成22年)7月17日、改正臓器移植法が施行され、脳死移植は本人が提供拒否の意思を示していない限り、家族の同意があれば認められるようになった。これにより、国内で15歳未満のドナーの臓器移植が可能となりました。

なかなか重たいテーマですが、調べてみました。
そもそも、どれくら行われているのでしょうか?

厚生労働省 厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会の資料「臓器移植対策の現状について」によると、法施行後の臓器提供の件数の推移は以下の通りです。

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年間で100件を超える臓器提供が行われており、近年では脳死による提供の割合が増えていることがわかります。
また、令和2年は感染症の影響で激減していることもわかります。

これは、移植を希望する患者の方々のどれくらいのニーズを満たしていると言えるのでしょうか?

同資料の移植希望登録者数の推移は以下の通りとなっています。

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前後しましたが、臓器移植法の平成21年の改正内容を確認しておきましょう(下図)。

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大きなポイントとしては、以下2つです。
☑️ 本人の意思が不明な場合でも、家族の書面による承諾があれば臓器提供が可能に。
☑️ 15歳未満について、家族の書面による承諾があれば可能に。

臓器移植のフローは、
① ドナーとなる可能性のある方を担当する病院等が日本臓器移植ネットワークに問い合わせを行う(全情報)
② 日本臓器移植ネットワークでは移植を希望される方の情報を持っており、問い合わせのあったドナー候補の方とのマッチングを調べる(うち合致した場合、有効情報)。
③ 臓器提供の可能性を医師から家族に説明(家族説明)。
④ 家族が同意すれば移植に進む(提供承諾)。

提供承諾されても、容態が急変したり、医学的な理由で見合わせることもあるので、提供承諾されたものが全て移植となる訳ではありません。

それらの件数の推移を示したのが以下となります(出典:厚生労働省「臓器移植対策の現状について」)。

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最後に、すでに見た通り、移植を希望する患者数に対して実績は少なく、普及・啓発活動のため、運転免許証等への意思表示の記載を可能とする施策などが行われています。この意思表示欄等を使って、臓器提供の意思を記入している割合は以下の通りです(出典:厚生労働省「臓器移植の実施状況等に関する報告書」)。

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→臓器移植。意思表示カードなどができた当初は話題になったが、最近は聞かない。8割が記入していない、という現状を変えるためには、どのような方法が考えられるだろうか?


5月18日(火) 水族館も「博物館」!?

1977年(昭和52年)に国際博物館会議(International Council of Museums:ICOM)の第11回大会で制定された「国際博物館の日」です。
翌1978年(昭和53年)から実施されています。英語表記は「International Museum Day:IMD」。

博物館。
実は、博物館、と聞いてイメージするより対象は幅広く、美術館・科学館、さらには、動物園・水族館・植物園なども含みます。

博物館法という法律があるのですが、そこで定められている定義は以下の通り(博物館法 第2条)

この法律において「博物館」とは、歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集し、保管(育成を含む。以下同じ)し、展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行い、あわせてこれらの資料に関する調査研究をすることを目的とする機関(以後省略)

「保管」に注で、「育成を含む」という記述があるのが、動物園や水族館、植物園を含むからこその表記なのです。

博物館の定義がわかったところで(実は、細かくいえば、登録博物館、博物館相当施設、博物館類似施設という分類もあるのですがマニアックすぎるので省きます)、どれくらいあるか、を見てみましょう。

文化庁のHPによると、全国の博物館の数は平成30年10月現在で5,738館となっていて、過去の増加傾向が近年では落ち着いていることがわかります(下図)。

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種別で見ると、歴史博物館が飛び抜けて多いことが分かります。これは、各自治体などが設置するケースが多いことが要因と思われます(下図)。

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入館者数は平成29年で3億人にもなります(下図)。

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先ほど5,738館(時期はちょっと違いますが)ありましたので、単純計算で1館あたり、約5万人になります。

5万人、すごい多い気がしますが、皆様も思いつく通り、大変な偏りがあります。

日本博物館協会などが行った令和元年度「日本の博物館総合調査研究」によると、調査に回答した博物館のうち、年間入場者数は「5千人未満」が最も多く、なんと25.7%を占めます(下表)。

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「3万人未満」までで3分の2を占めます。
また、調査では実数を聞いているそうですが、その平均は14,464人だそうです。その一方で、「50万人以上」は2.8%(約60館)ほどあります。
やはり偏りが大きい、ですね。


最後に、収支の状況をご紹介します。
収入は平均で9,026万円。うち入館料によるものは1,938万円です(下表)。

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入館料収入は館種によっても大きく差があり、動物園、水族館の入館料は1億円を超えている一方、郷土博物館は300万円程度となっています(下表)。
これも偏りが大きいようで、郷土博物館の入館料収入の中央値はなんと、8万5千円、となっています。ほぼ無料開放なのかもしれませんが…

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一方の支出は平均で1億560万円で、年々減少していることがわかります。
特に管理費の減少が大きくなっています。

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赤字とか黒字、といった概念は相応しくないのかもしれませんが、収入の平均が9,026万円で支出の平均が1億560万円ということは、単純計算で1,534万円の赤字、ということになります。

この感染症下で閉館を余儀なくされているところも多い状況を考えると、経営という観点では厳しい状況が続いているといえます。新設はほぼないようですが、今後は廃止なども増えていくかもしれません。

→博物館は水族館や動物園などエンターテイメント性が高いところや、世界的な名画を期間限定で展示することで数百万人規模の集客を行う美術館などがある一方、地域に根付いた郷土資料館のようなものもある。こうした予算も少ない博物館を地域の生涯教育などに活用していくにはどのような方法が考えられるだろうか?


5月19日(水) ボクシングは無観客に強いビジネスモデル!?

2010年(平成22年)に日本プロボクシング協会が制定した「ボクシングの日」です。
1952年(昭和27年)のこの日、世界フライ級タイトルマッチで挑戦者・白井義男(1923~2003年)がチャンピオンのダド・マリノ(アメリカ、1915~1989年)に15回判定勝ちし、日本初のボクシングのチャンピオンになったことに由来しています。


ボクシング。
正直あまり詳しくないのですが調べてみました。

ビジネス目線で見ると市場規模、と言いたいところですが、ボクシングに限ったものは見つけられず。

少し古いデータですが、2013年にはグローバルスポーツ市場規模761億ドル、2017年には909億ドルと予想されていました(出典:AT Kearney「Winning in the Business of Sports」)

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特にコンテンツとしてのプロスポーツの価値は特に動画配信サービス企業には魅力的で、放映権料は高くなっているようです。

例えば、DAZN(イギリスのスポーツメディア企業パフォーム」が開設したインターネット上の有料スポーツチャンネル)は、日本のJリーグと2017年シーズンから10年間の放送権契約を結びましたが、その金額は約2,100億円という巨額になっています。

このDAZNですが、日本のボクシング選手、村田諒太選手が2018年10月にアメリカラスベガスで行った、世界ボクシング協会ミドル級チャンピオンの防衛戦を「独占生中継」をしました。テレビからネットへ大きな流れがあることが伺えます。


さらに、昨年には、井上尚弥選手がやはりラスベガスで行ったバンダム級防衛戦では、ファイトマネー100万ドル(1億500万円)であることが公表され話題となっています(この試合WOWOWが生放送したようですね)。

無観客試合かつ軽量級では破格のファイトマネーだそうですが、このお金がどこから来るかといえば、最も大きいのは放映権料ですから回り回って選手にとっても良いことですね。

ボクシングと他のメジャーなプロスポーツと比較したときに、最も異なるのが、会場の収容人数ではないでしょうか?

サッカーや野球は数万人規模の観客を集めることができます。
一方ボクシングは、代表的な後楽園ホールで2,000人ほどの収容人数しかありません。つまり、プロスポーツの収入源の3つ、チケット代・グッズ販売、放映権料、スポンサー料のうち、チケット代・グッズ販売が多額は望めないのです。

逆にいうと、無観客試合となった時に、収入面でのインパクトが他のスポーツに比べて影響が少ないと言えるでしょう。実際、先ほどの井上選手のファイトマネーは無観客試合となっても変更されなかったそうです。

最後に、毎年「スポーツ産業調査」というレポートを公表しているPwCの分析をご紹介します。


実は、2018年までのレポートには、「今後の成長が期待されるスポーツTop10」にボクシングはランクインしていました(下図)。

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これが、2019年、2020年とランク外となっています(下図は2020年)。

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ボクシングからは離れてしまいますが、スポーツ産業の最も顕著な変化をご紹介します。それは、eスポーツです。

2018年でもTopでしたし、当然2020年でもTopです。

そもそもこのランキングは、プロスポーツ産業の関係者に広く行ったアンケートを元にしており、今後収益増加が見込まれるか、という質問に、「平均以上」「非常に高い」と答えた割合の高い順にランキングしたものなのですが、その数字が以下の通りです(2020年のもの)。

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関係者がそう認識している、ということは実際の行動にも移している、ということでもあります。「組織はeスポーツにすでに関与している?」という質問に対しては、実に61%が「はい」と答えています(下図)。

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F1の例がコメント欄にありますが、「モータースポーツ」は先ほどのランキングで5つランクを上げ、9位とTop10に入ったのです。これは、各国代表が参加する公認のバーチャルF1大会を実施したことなどが評価されているようです。

PwCの同レポートから「今後のスポーツメディア情勢」をご紹介して終わりたいと思います。

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先ほど、テレビが放映を独占していた時代からDAZNなどのネット配信企業に移りつつある動きをご紹介しましたが、今は、消費者側からすると分断された状態ともいえます。これが未来には、再統合され、アグリゲーターの時代になると予想しています。

→Jリーグの取り組みのように、その競技のファンを増やすには競技人口を増やすことも1つの有力な手段であった。人々の生活様式に大きな変化が起こっているが、今後のスポーツ、そしてスポーツ産業はどのようになっていくだろうか?


最後までお読みいただきありがとうございました。

1つでも皆様の頭の体操ネタがあれば嬉しいです。

「臓器移植」
もう一度免許証の裏面、見てみようと思いました。

「博物館」
どうしても集客に工夫、という発想になりがちですが、それは役割の一部で、貴重な資料の保存、研究、地域住民の生涯学習に役立つという目的もある、という点でもっと活用する目線が必要だと感じました。

「ボクシング」
eスポーツには馴染みにくいかもしれませんが、リングサイド席が高額で取引されていることを考えると、高解像度の配信が可能となっている今、有料配信としてはコンテンツの価値は高いように感じました。


昨年7月からこのような投稿をしています。だいぶ貯まってきました。以下のマガジンにまとめていますのでよろしければ覗いてみて下さい。


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