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カガリビ書房

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火の暖かさに誘われて、着いた先には小さな書店。あなたにとって大切な一冊が見つかりますように。
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【お涙前線にご注意を】読書ロク~2022年1月に読んだ三冊~

【お涙前線にご注意を】読書ロク~2022年1月に読んだ三冊~

 一月といえば、僕のいる会計業界にとっては、忌むべき繁忙期の幕開けである。

 手始めに牙を剥くのは年末調整業務と、支払調書などの法定調書作成業務。何のことだか分からない人は検索してみよう。こちらから説明することは億劫だ。文章を書く時くらいは仕事から離れたいのだ、ご勘弁願いたい。

 さてそんな一月だが、三冊の小説を読んだ。繁忙期の中よくぞ読み進められたと自分を労いたい思いだが、奴らは繁忙期の中で

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あなたが働くから(小説+あとがきのようなもの)

あなたが働くから(小説+あとがきのようなもの)

年越し牛丼

こんな時にまで牛丼食いに来るなよ——

優司は心の中で毒づいた。日付は12月31日、時刻は11時42分。新年の到来まであと18分である。

優司は牛丼屋のチェーン店でアルバイトをしていた。大みそかにも関わらず働いているのは、店長から懇願されたからだ。通常よりも割増しで賃金が支払われるという。しかし、その差額もたかが知れている。店長の勢いに優司は仕方なく引き受けたが、そのせいで友人たち

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名作大体10分解説!~カフカ著「変身」~(前編)

名作大体10分解説!~カフカ著「変身」~(前編)

ある朝、グレーゴル・ザムザがなにか気がかりな夢から目をさますと、自分が寝床の中で一匹の巨大な虫に変っているのを発見した。

あまりにも有名なフレーズから始まるこの物語は、ドイツの作家、フランツ・カフカが記した怪作「変身」である。

冒頭からいきなり身体が毒虫と化してしまった男こそ、主人公のグレーゴル・ザムザだ。

突如として彼の身に降りかかった悲劇。この物語は、そんなグレゴールの苦悩を、まるでレポ

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衝撃の新人類史~「地球星人」を読んで~

衝撃の新人類史~「地球星人」を読んで~

私は、人間を作る工場の中で暮らしている。
私が住む街には、ぎっしりと人間の巣が並んでいる。

上記は、芥川賞受賞作家の村田沙耶香さん著、「地球星人」より。

今回は、「衝撃的傑作」と呼び声高いこの作品について、ご紹介していきたいと思います。

どんなお話か
一言で言うと「世間の常識からの脱却、その新人類史」と言ったところでしょうか。異論は認めます。
村田沙耶香さんの物語には、毎回驚かされているので

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熱く、毒のある。~芥川賞受賞作「彼岸花が咲く島」を読んで~

熱く、毒のある。~芥川賞受賞作「彼岸花が咲く島」を読んで~

今回は、李琴峰(り ことみ)さん作、「彼岸花が咲く島」について紹介してまいります。
こちらは、2021年第165回芥川賞を受賞し、大きな話題を呼びました。

装丁の絵が美しうていたり。いと好き。

李琴峰さんは台湾出身の作家さんです。台湾出身というだけで、冷たい批判の声を浴びたことがあるという李さん。そんな李さんが紡ぐ文章には、不当な差別に対する是非を、私たちに考えさせるような箇所も見受けられまし

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「暑い」なら「暑さ」を読んでみて。~星新一「暑さ」より~

「暑い」なら「暑さ」を読んでみて。~星新一「暑さ」より~

以前、夏の終わりだなんだ散々書いて参りましたが、僕の住んでるクマモトタウンの昼はまだ、いと、蒸し暑うしていたりです。

太陽もその鋭意を綻ばせることなく、燦々とこの身を焼き付けます。
残念ながら暦の上では十分「秋」でも、十二分に「暑さ」は健在です。

そうそう「暑さ」といえば、
ショートショート界のパイオニア、星新一先生の「暑さ」というお話を思い出します。

星新一先生はご存知ですか?

星新一先

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夏の終わりに心からの一冊を~「ペンギン・ハイウェイ」を読んで~

夏の終わりに心からの一冊を~「ペンギン・ハイウェイ」を読んで~

「この謎を解いてごらん。どうだ。君にはできるか?」
お姉さん(ペンギン・ハイウェイ)

気がつけば昨日の投稿で20投稿目でした!!
驚きと、いつも読んでくださる皆さんへ感謝の気持ちが止まりません。

にっちもさっちも右も左も往々している僕ですが、今後ともよろしくお願いします。

さて今回は、昨日に引き続き本の話題を。

「ペンギン・ハイウェイ」という物語をご存知ですか?

「ペンギン・ハイウェイ」

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「兄ちゃん何か本ない?」

「兄ちゃん何か本ない?」

筆が遅いのを何とせう。

今日も何を書こう書こうと、悩みあぐねていたらこんな時間です。

また夜更かしをしてしまう。

僕は夜更かしをすると、胃腸を悪くします。
胃腸が悪くなると、精神状態に悪影響を及ぼします。
精神状態が不安定だと、手軽な娯楽に逃げたくなります。
そして、手軽な娯楽に逃げた結果、また書けなくなり夜が更ける……。

こんな負のスパイラルに片足を突っ込んでしまっているわけです。

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人生を変えた一冊は犬の匂い

人生を変えた一冊は犬の匂い

言い訳は優しく肩を叩くが、その後の面倒は一切見ちゃくれない
(MOROHA「三文銭」より)

こんにちはこんばんはフジカワです。
2投稿目にしてMOROHAを出してくるあたり、筆者の本気具合が伝わってきますね。
「血迷っているだけじゃないか」との声も上がっているようです。僕もそう思います。

さて、今回は僕の人生を変えた一冊についてご紹介したいと思います。

「椋鳩十の野犬物語」(理論社)

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