記事一覧

僕とあなたの関係

 人と人の関係を表す言葉はいくつかある。友達、家族、彼氏彼女、知人、同僚などだ。その意味が比較的分かりやすいものもあれば、分かりにくいものもある。よく議論される…

いとい
2年前

がん細胞に学ぶ、トレードオフの考え方

 がん細胞を勉強することは面白い。がん細胞は、突然変異した細胞が自然選択を受け、自律性と増殖性を獲得したものである。それは、細胞レベルの進化そのものである。  …

いとい
2年前
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自立が他者を救う

 村上龍「最後の家族」を読んだ。20年ほど前に書かれた本であるが、そう思えななかった。もちろんテクノロジーの点で今と異なる部分がある。しかし、読んでいて実感があっ…

いとい
2年前
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欺瞞を含んだ正当化について

 人は多少なりとも欺瞞を含んだ正当化をしていると思う。例えば、うまく結果が出ない人がいる。その人は、結果が出ないのは偶然だったり、昨日の寝不足のせいだったり、う…

いとい
2年前
1

人生を肯定する物語

 よしもとばなな「デッドエンドの思い出」を読んだ。人生を肯定するために必要なものの一つが物語であるということを、改めて感じた。  この小説を読むきっかけは、上白…

いとい
2年前

赤ちゃんによる現実逃避

 NICUで赤ちゃんの鳴き声をずっと聞いていると、それはもうセミの鳴き声と変わらなく思える。赤ちゃんの顔に関しても、ずっと見ていれば、その個体差はかなりある。そして…

いとい
2年前
2

ノマドランドを観て

 ノマドランドを観た。観た理由としては、賞を取って話題になっているということもあるし、また、孤独な人を観たいというのもあった。孤独な人を観たいという心の持ちよう…

いとい
3年前

「ヤクザと家族 The Family 」を見て

映画「ヤクザと家族 The Family」を見た。 社会が変容していく中で、義理人情によって生きるとはいかなることかを問う映画である。 主人公山本賢治は、父のようになりたく…

いとい
3年前

西川美和「永い言い訳」を読んで

 この物語は、妻を事故で亡くした主人公が忘れていた、また嫌いになっていた”愛”を取り戻す話だ。主人公の幸夫は、クズで薄情で傲慢で自意識過剰で未熟な人間だ。基本的…

いとい
3年前
2

みんな大変ということば

 高校生は大変である。勉強、部活、バイト、恋愛、将来、親との関係など、したいこと、しなくてはならないこと、せずにはいられないことが多くある。どれも彼らにとって切…

いとい
3年前

回転対称な顔

いとい
3年前

映画『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46』を観て

映画『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46』をみた。そこには欅坂46の生き様があった。それは映画を見る前に筆者が想像していたものとは全く異なる。今までにない新し…

いとい
3年前
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「明るい夜に出かけて」佐藤多佳子を読んで

 この本の魅力は読後にある。この本を読んでいるときは、登場人物のキャラクターのユニークさ、主人公の心情描写への共感、バラバラだった人たちが一つになっていくワクワ…

いとい
3年前
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「この割れきった世界の片隅で」を読んで わたしのふつうとは

この割れ切った世界の片隅で|鈴 #note #ゆたかさって何だろう 上の記事を読んだことをきっかけに、私のふつうとはどのように形成されてきたのかを振り返る。  私の家族…

いとい
3年前
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あなたのせきの原因はなに? 咳の診断学

 咳(せき)はつらいし、苦しい。咳をすることで、他人にも迷惑をかけてしまい、よりつらい。コロナウィルスが流行している現在、軽い咳ですら、街ではほとんど厳禁状態に…

いとい
3年前
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故郷とは幼いころの思い出の場所のことを言うのか? 映画「耳をすませば」

「故郷っていうのが私にはまだ分からないけど」 主人公の月島雫は、カントリーロードの日本語訳を終えて、仲間にこのように言った。故郷とはなんだろうか。それは、幼いこ…

いとい
4年前
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僕とあなたの関係

 人と人の関係を表す言葉はいくつかある。友達、家族、彼氏彼女、知人、同僚などだ。その意味が比較的分かりやすいものもあれば、分かりにくいものもある。よく議論されるテーマには、友達の定義がある。また互いが恋人同士であるかどうかもよく議論されるテーマかもしれない。今回は、人と人の関係を表す言葉について少し考えたい。

 私が児童養護施設でボランティアをしていたとき、担当していた児童が
「一緒に住んでいる

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がん細胞に学ぶ、トレードオフの考え方

 がん細胞を勉強することは面白い。がん細胞は、突然変異した細胞が自然選択を受け、自律性と増殖性を獲得したものである。それは、細胞レベルの進化そのものである。
 がんは元々は自己の体から発生する。そして、ホメオスタシスを保つための様々な生体機構を用いて、無秩序な社会を作り上げる。つまり、自己であると同時に、非自己でもあるのだ。細胞が増殖する働きは、成長や、創傷治癒、免疫機能、生殖機能など、さまざまな

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自立が他者を救う

 村上龍「最後の家族」を読んだ。20年ほど前に書かれた本であるが、そう思えななかった。もちろんテクノロジーの点で今と異なる部分がある。しかし、読んでいて実感があった。痛みを感じた。引きこもりをする息子、癒しを求め不倫する母、首が回らない会社に勤める父がいる。いずれも個人の力ではコントロールできないものによって起こっており、今を生き延びることに精一杯である。
 
 特に印象に残った言葉は、「親しい人

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欺瞞を含んだ正当化について

 人は多少なりとも欺瞞を含んだ正当化をしていると思う。例えば、うまく結果が出ない人がいる。その人は、結果が出ないのは偶然だったり、昨日の寝不足のせいだったり、うまく集中できなかったからだと言う。本当にその理由で結果が出ていないのかもしれないが、大体は誤魔化しているのである。実際のところは、成果を出すための準備時間が短かくぬるい時間ばかり過ごしていたり、自分の中でその意義に対して腹落ちしていなかった

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人生を肯定する物語

 よしもとばなな「デッドエンドの思い出」を読んだ。人生を肯定するために必要なものの一つが物語であるということを、改めて感じた。
 この小説を読むきっかけは、上白石萌歌さんのラジオだった。そのラジオにゲストでよしもとばななさんがいらっしゃっていて、上白石さんが最も大切な本の一つとして取り上げていた。以前から、少しではあるが両者に興味があったし、よしもとさんの優しくて、底の深い世界に潜りたい気分だった

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赤ちゃんによる現実逃避

 NICUで赤ちゃんの鳴き声をずっと聞いていると、それはもうセミの鳴き声と変わらなく思える。赤ちゃんの顔に関しても、ずっと見ていれば、その個体差はかなりある。そして、すでにかわいい顔とあまりそうでない顔の違いがある。
 赤ちゃんは皆等しくかわいい、愛おしいと思える人がいるらしいが、それは赤ちゃんのどこを見ているのだろうか。サイズは小さい。体型は4頭身ほどである。何をするでもない動きを常にしている。

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ノマドランドを観て

ノマドランドを観て

 ノマドランドを観た。観た理由としては、賞を取って話題になっているということもあるし、また、孤独な人を観たいというのもあった。孤独な人を観たいという心の持ちようがなぜ生まれるのか、具体的にどのようなものなのかはよく分からなかったし、踏み込めなかった。

 印象に残っているシーンが2つある。一つは、ノマドの女性が自分の人生を良い人生だと言い、その理由を話すシーンである。美しい風景を見たことや、ある人

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「ヤクザと家族 The Family 」を見て

「ヤクザと家族 The Family 」を見て

映画「ヤクザと家族 The Family」を見た。
社会が変容していく中で、義理人情によって生きるとはいかなることかを問う映画である。

主人公山本賢治は、父のようになりたくない思いと一人である孤独を抱えていた。父のようになりたくない思いとは、父の人生を狂わせた覚醒剤とそれに関係するヤクザに関わりたくない思いだ。また、家族がいない孤独を感じていた。そこに、覚醒剤には関わらない、義理人情を大切にする

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西川美和「永い言い訳」を読んで

西川美和「永い言い訳」を読んで

 この物語は、妻を事故で亡くした主人公が忘れていた、また嫌いになっていた”愛”を取り戻す話だ。主人公の幸夫は、クズで薄情で傲慢で自意識過剰で未熟な人間だ。基本的に自分のことにしか興味をもたず、他者の気持ちを想像することなどはしない。私は、この主人公に自分を重ねてこの話を読んだ。
 主人公が、その愛を取り戻すきっかけになったのは、妻の友人でともに亡くなった女性の子供たちとの生活である。その生活は、主

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みんな大変ということば

 高校生は大変である。勉強、部活、バイト、恋愛、将来、親との関係など、したいこと、しなくてはならないこと、せずにはいられないことが多くある。どれも彼らにとって切実で、中途半端な気持ちではどれも失敗する。どれに対しても彼らの全力を尽くさなければ、思い描くような結果はでない。いや、全力を尽くしたって思い通りの結果にならないことだってある。そういう風にして、高いハードルを目の前にして、不安になりながら、

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映画『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46』を観て

映画『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46』をみた。そこには欅坂46の生き様があった。それは映画を見る前に筆者が想像していたものとは全く異なる。今までにない新しいアイドルを模索し、圧倒的存在の平手友梨奈とその大きすぎる影響力に欅坂46は向き合っていた。
 筆者の想像と異なっていたのは、その必死さだ。アイドルとはもっと自己中心的で、過剰な自己主張をし、疑似恋愛をさせることで利益を

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「明るい夜に出かけて」佐藤多佳子を読んで

「明るい夜に出かけて」佐藤多佳子を読んで

 この本の魅力は読後にある。この本を読んでいるときは、登場人物のキャラクターのユニークさ、主人公の心情描写への共感、バラバラだった人たちが一つになっていくワクワクと嬉しさを感じていた。それらが面白く、読み終えることが出来た。しかし、この本を読んだ私にとって本当に大切なことは、読後に感じたことである。それは、苦しいときや何もかもが嫌になったとき、どこか離れたとこに行って、そこでバイトなんかしながら暮

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「この割れきった世界の片隅で」を読んで わたしのふつうとは

「この割れきった世界の片隅で」を読んで わたしのふつうとは

この割れ切った世界の片隅で|鈴 #note #ゆたかさって何だろう

上の記事を読んだことをきっかけに、私のふつうとはどのように形成されてきたのかを振り返る。

 私の家族は転勤族で、幼稚園卒業までは、東京の杉並区に住んでいた。父は長期出張が多く、私が5歳か6歳の頃まではずっと中国にいた。

小学生低学年
 横浜の旭区の公立小学校に通った。兄弟の影響で地元のサッカーチームに入った。
 サッカーの試

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あなたのせきの原因はなに? 咳の診断学

 咳(せき)はつらいし、苦しい。咳をすることで、他人にも迷惑をかけてしまい、よりつらい。コロナウィルスが流行している現在、軽い咳ですら、街ではほとんど厳禁状態になっている。そういった状況で、もし、咳が止まらなくなったら、不安になる。自身が抱えている咳はなぜ起こっているのか。また、どのようにしてそれを診断していくのだろうか。

 基本的に、咳は気道にある異物を除去するために行われるが、咳(咳嗽(がい

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故郷とは幼いころの思い出の場所のことを言うのか? 映画「耳をすませば」

故郷とは幼いころの思い出の場所のことを言うのか? 映画「耳をすませば」

「故郷っていうのが私にはまだ分からないけど」
主人公の月島雫は、カントリーロードの日本語訳を終えて、仲間にこのように言った。故郷とはなんだろうか。それは、幼いころに住んだ町のことをいうのだろうか。また、雫はなぜ故郷が分からないのだろうか。そして、なぜこの映画の主題歌がカントリーロードなのだろうか。

 幼いころ住んだ町に帰ってみると、その時の記憶が戻ってくることがよくある。そういう場所を多くの人は

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