みんな大変ということば

 高校生は大変である。勉強、部活、バイト、恋愛、将来、親との関係など、したいこと、しなくてはならないこと、せずにはいられないことが多くある。どれも彼らにとって切実で、中途半端な気持ちではどれも失敗する。どれに対しても彼らの全力を尽くさなければ、思い描くような結果はでない。いや、全力を尽くしたって思い通りの結果にならないことだってある。そういう風にして、高いハードルを目の前にして、不安になりながら、泣きそうになりながら、あふれ出してしまうような気持ちを抱えている高校生が多くいる。
 そして、なにより高校生というのは、いつも眠い。そして、イライラしている。イライラしている原因は何だろうか。それは、寝不足、人間関係のこじれ、自分の能力が不十分であったり、それが十分に発揮できないことなどがあるだろう。しかし、仮にそれらがなかったとしても、高校生はイライラするし、眠いのだ。
 大学生だって同じかもしれない。とくに就活生だ。彼らは、本当に大変らしい。こんな話をきいた。現実は厳しいと知りつつも、心の底ではなんとかなると思っていた。しかし、結果がひとつも出ず、何もかも否定されたように感じ、落ち込む人。また、ずっとその職業を夢見ていて、そのために努力して、やっとそれが実現しそうなとき、その職業が自分に向いていないかもしれない、業界の雰囲気に絶望する人。
 みんな大変だという言葉に、私はどれだけ想像力を働かせられるだろうか。一人ひとりを想像して、その人がなにに苦しみ、なにに葛藤しているかを、私は考えられるだろうか。本当に、みんな大変なのだ。それに気づかないでいるのは、それらが目に見えないからだ。対話をしていないからだ。私も大変だけど、目の前にいる人も大変。「だから話を聞いてあげよう」などとは別に思わなくてもいい。しかし、目の前の人のことを少し想像するだけで、その人に言葉で伝わらなくても、何かが良い方向に変わるのではないか。

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