独り言多めの読書感想文(朝井リョウさん『少女は卒業しない』)

朝井リョウさん『少女は卒業しない』を、読書感想文してみる。

(「月○本新作を仕上げる」というハードルを自ら設定してこなしていたという作家さん相手に)未熟者がおこがましい……!

という問題はスルー。だってお題で読書感想文募集してるんだもの。感想だもの。個人の主観だもの。勝手に好きなんだもの。勝手に好きに解釈したっていいじゃない。それが私の愛し方よ。相変わらず前置きが長い。

この作品は一言で言う

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私もスキ💕
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作品備忘録#1~私たちは何者になりたいのか~

この大都市東京に生きる私は、1400万分の1の存在。その中で私たちは誰になろうとしているのか。それとももっと大きな中で、なろうとしている人物を探そうとしているのだろうか。

私たちは”何者”になりたいのか。

●直感的な感想「嫉妬」
すごく気持ちがわざわざする映画だった。人の嫉妬が就活というイベントで露わになっていることが、この映画の魅力だと思った。その嫉妬にすごく共感ができてしまい、共感できてし

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理想と自分勝手の文化芸術活動(朝井リョウ/何様)

頭の中にいる叔父さんが、舞台の上で話している。自分の作ったものについて、自分が伝えたかったことについて。週末にきちんと休むことができ て、数時間のためにいくらかのお金を払うことができる人たちの前で、社会 の生きづらさについて描きたかったと、きれいなジャケットを着て、背筋 を伸ばして、話し続けている。
朝井リョウ. 何様(新潮文庫) (Kindle の位置No.2306-2309). 新潮社. Ki

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うれしいです!
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第14回

尚吾は、頭の中をぐるぐると回転させる。自分にも何か提案できることがないか、思考を巡らせる。もう何の選択もできません、今日使える分の判断力は使い果たしました――そう喚いている頭のエンジンを、無理やりふかす。

 学生時代にも、こういう瞬間はたくさんあった。ある一つのシーンをコンテ通りにいざ撮ってみたものの、何かが違うと悩む時間。もしかすると、撮影期間のうち最も多い割合を占めているのはそんな時間かもし

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第13回

4

 尚吾は一瞬、思考の綱から手を離そうとしている自分がいることを自覚した。そしてすぐに、こうなってからが本番なのだ、と、周囲に並ぶ顔を冷静な気持ちで見渡す。すると、自分がいま同行しているのが、かつて共同監督を務めていた紘でも、泉を始めとするサークルの後輩たちでもなく、憧れの鐘ヶ江組の面々だという事実に、脳が新鮮に驚き直すのがわかった。

「監督」

 占部(うらべ)が、渋い表情の鐘ヶ江に声を掛

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第12回

魚さばき界の三ツ星スター。

 魚さばき界の三ツ星スター。

 忘れないよう、小さな声でそう繰り返しながら帰宅する(「隣でぶつぶつ怖いけん! 運転に集中できんけん黙れ!」)。帰宅してすぐに母に尋ねると、「星野料理長? 知っとるよ、なんか癖になっとよねえあの声が」とあっさり言われた。

「桑原さんとこの子ォ、あれやね、客がおるところでも動画流しよるらしかけん、それはやめたほうがよかね」

 初めて作

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第11回

「二人とも、もう昼飯食うたね?」

 食料庫に酒を収めていると、桑原がそう訊いてきた。まだ、という返事の代わりに、ぐう、と腹が鳴ってくれる。

「食べていく? 今日昼食べる人あんまおらんで、食材のあまるごたっとよ。うち、宿泊客の数に関係なく魚ガンガン入ってくるけんねえ」

 紘は昭と顔を見合わせる。ラッキー。昭の顔にそう書いてある。

「じゃあお言葉に甘えて」

 納品を終え、昭とダイニングテーブ

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第10回

次回作を考えあぐねていた尚吾に、長谷部要(はせべかなめ)というボクサーを撮ることを提案したのは、紘だった。

 当時紘が付き合っていた彼女が、ダイエットのために大学のすぐそばにあるジムに通い始めたのだ(ボクササイズをしたいということだったが、案の定彼女がすぐに飽き、ジムにも通わなくなった)。一人でボクシングジムに行くのが怖いと言うので付き添ったのだが、紘の目は、薄着で汗をかきながら胸を揺らす彼女の

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第9回

紘が高校一年生のころ、役場の人たちが島の役場の公式サイトに載せるPR用の動画を撮ることを決めた。ふるさと納税、離島への移住やダイビングブームなど様々な要因が重なり、公式サイトへのアクセス数が伸びたもののユーザーを引きつけるコンテンツがないことがきっかけだった。ただ、役場の人間には、編集はもちろん満足に動画を撮影できる者すらいない。かといって本州の映像制作会社に外注してしまうと、スタッフの渡航費や宿

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