赤ちゃんによる現実逃避

 NICUで赤ちゃんの鳴き声をずっと聞いていると、それはもうセミの鳴き声と変わらなく思える。赤ちゃんの顔に関しても、ずっと見ていれば、その個体差はかなりある。そして、すでにかわいい顔とあまりそうでない顔の違いがある。
 赤ちゃんは皆等しくかわいい、愛おしいと思える人がいるらしいが、それは赤ちゃんのどこを見ているのだろうか。サイズは小さい。体型は4頭身ほどである。何をするでもない動きを常にしている。その脆弱性に対し、必死に生きようとしている。社会の中で生活する私たちとあまりに異なっている。それは、驚きでもある。そのため、私たちは良い意味で、社会のことを忘れられるのかもしれない。その時間だけ、考えなくて済むのかもしれない。
 それ自体の可愛らしさ、愛おしさに加え、ある種の現実逃避が出来ることが赤ちゃんの魅力なのかもしれない。

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