自立が他者を救う

 村上龍「最後の家族」を読んだ。20年ほど前に書かれた本であるが、そう思えななかった。もちろんテクノロジーの点で今と異なる部分がある。しかし、読んでいて実感があった。痛みを感じた。引きこもりをする息子、癒しを求め不倫する母、首が回らない会社に勤める父がいる。いずれも個人の力ではコントロールできないものによって起こっており、今を生き延びることに精一杯である。
 
 特に印象に残った言葉は、「親しい人の自立は、その近くにいる人を救うんです。」(幻冬舎文庫版p303)である。
 この文章を読んだとき、”自立とは多くの他者に浅く依存することである”ということを思い出した。この2つの主張は決して矛盾しない。導き出せることは、誰もが他者に依存しているが、それには程度がある。そして、その程度を減らし分散させることで、自分の近くにいる人を救えるということだろうか。

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