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半世紀前から普通の人生に挑戦した車椅子おばあちゃんの物語

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語1~58
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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語②

半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語②

きっと来年も不合格

「行ってきま~す」
「いってらっしゃ~い」
「行ってくるね~、お昼ご飯テーブルの上にあるから~」
「は~い、行ってらっしゃ~い」

両親と兄と妹
朝みんなが出かけてしまうと、がらんとした家にひとり
し~んと静まり返った部屋
あ~あ、学校にいたときは今頃
「おはよう!」「おはよう!」って
さあ、今日も一日がはじまる!
そんな時間を過ごしていたのに

でも、現実は
一人では何

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語⑩

半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語⑩

てんやわんやの 普通の結婚式

実は、結婚式当日の記憶はほとんどありません。
憶えていることと言えば
挙式の時に私達新郎新婦の前を歩くはずのフラワーボーイ
牧師さんの息子さんにお願いしてあったのですが
ご機嫌斜めで、急遽他の女の子にお願いしていた情景
牧師様の
「汝、病める時も、健やかなるときも・・・」
「誓います」
の後の
「では、誓いの・・・」が
「誓いの握手を」
と言われたこと

五月晴れ

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㉑

半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㉑

「産まれたよ、見においで!」

諦めたとたんに
私のおなかに宿った小さな命

その頃、我が家には1歳になったばかりの長男がいました
血はつながっていませんが
名前はたつのりといいます。
たつのりの可愛い姿を思い浮かべて
辛い不妊治療や検査も頑張れました

1989年(平成元年)3月26日
「産まれたよ、見においで!」
実家の母から電話がありました。
「わかった、すぐ行く!」
長男たつのりが生まれ

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㉒

半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㉒

「切迫流産」

妊娠の経過は順調で、つわりもそれほどひどくはありませんでした
車の運転も普通にして定期検診や母親学級に通っていたくらいです
その日もいつもの通り夫は出勤、
義母は趣味のパチンコに出かけていたある日、
なんとなくお腹が痛い気がして
「何か悪いものでも食べたかな」
とトイレへ
すると、だんだん痛みが強くなり
その痛みは、一定の間隔で繰り返し襲ってきます
「これはちょっとおかしいかも」

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㉔

半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㉔

「こんなお身体でたいへんですね」

長女と二人でお出かけができるようになりました。
愛犬たっちくんのお散歩も車で近くの公園まで行きます。
まず、車椅子の膝に娘を乗せて車まで連れていきます
チャイルドシートは座席が高すぎて一人では乗せられないので
使えませんでした。

代わりに、大きなポケットのついたエプロンのような形のシートを見つけました。
助手席にエプロンを付けて、穴が開いてるポケットに両足を

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㉗

半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㉗

「エレベーターに足をはさんじゃった!」

次女が産まれてしばらくしたころに、
夫が仕事に行っている平日に、義姉が知人を連れて迎えにきて
義母は以前住んでいた街へ帰っていきました。
私は、娘二人の世話でなにも手伝えませんでしたので
昼食にせめてもの気持ちで出前を頼み
うな重をお出ししておもてなしをしました。
けれど、義姉達の冷ややかな対応が今でも心を暗くさせます。
おそらくは、
「嫁に追い出された」

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㉘

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「ママー、おしっこでるぅ」


おっぱい、おむつ、洗濯、ごはん、買い物、片付け、長男犬の世話、
家事に終わりはありません。
世の中のお母さん達はどれほど頑張っているのでしょうか
私は、とても一人ではできませんでした。
実家の両親と妹が強力なサポーターになり、週に何度も出動してくれていました。
実家が近ければよいのですが、車で片道40~50分はかかります。
父は主に買い物に行ってくれました。洗濯物

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㉞

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「「当たって砕けろ」精神を心から後悔」

今日は二女の年少組さんの遠足です
一緒に動物園へ行きます。
みんなはお母さんやお父さんと一緒に
うれしそうにバスに乗りこんでいます。
が、私は、バスには乗れません。
いったいどのようにして動物園まで行ったのでしょう
すっかり忘れてしまいました
どなたか付き添いのお父様にバスに乗せていただいたのかもしれません
もしかしたら、自分の車に娘を乗せて
バスの後をつ

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㉟

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「まんまと、作戦成功です」

♪おかあさんたち、みてみてきょうは
うれしいうれしいそつえんしき~♪

毎日、長女が卒園式の歌の練習をしています
私はそれを聞きながらいつも必ず涙ぐんでしまうので
みんなに気づかれないようにごまかすのが大変でした。

♪こんなにおおきくなりました、もうすぐいちねんせい♪

♪ほんとにこんなに大きくなって、入園した頃思い出す♪
小さかったあなたが、もうすぐ一年生♪

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㊲

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「がん細胞は出ませんでした」

落ち着かない1週間を過ごし、再び大学病院へ
「たしかに影が写っていますが、これが悪いものかどうかは組織を調べてみないとわかりません」
「形があまりよくないので、ちょっと気になりますね」
「胸に針を刺して組織をとる検査をしたほういいと思います」
モニターの画像を見ながら先生から説明がありました。

「そうですか」
「わかりました」
心のどこかで
「大丈夫ですよ」

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㊴

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「負けてたまるか」

夫が仕事から帰宅後、二人で病院に行き、
詳しい手術の内容を聞きました。

「がん細胞がどこまで広がっているかは、手術によってしかわからないので、
手術中に、切り取った部分をその都度検査にまわして確認しながら進めます」と医師は説明しました。
「しこりの部分とその周囲を切り取りつつ、なるべく温存できる予定ですが」とも話しました。
「がん細胞が広い範囲に散っていたら、乳房を全て摘

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㊵

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「何もできないから、夕ご飯何か買ってきて」

順調に回復し、いよいよ退院の日がやってきました
定期的な通院や投薬は必要ですが
再発や転移の不安はすごくありますが
考えていても仕方ありません

「家に帰れる」
「また普通の暮らしができる」
夫に、娘たちに、両親に、妹に
主治医の先生に、大学病院の皆さんに
心から感謝して
普通の日常へ戻れます
「ただいま!」
幸せがいっぱいです

とは言っても、体

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㊶

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「これは、ちょっとやばいかも」


春休みには母と娘たちと私の運転でドライブ小旅行、
GWには一度大渋滞にはまって懲りてからは近くの公園でピクニック、
この頃の二女の作文には
「ちっぽけな木の下でお弁当を食べました」
と書かれていて、担任の先生に褒められました
夏休みの家族旅行、秋の運動会、毎年恒例、軽井沢の紅葉、
クリスマスのディズニー、お正月の集まり、
バレンタインのチョコ作り・・・
どの季

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㊷

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「はい、お電話ありがとうございます」


数日後、教えて頂いたコインパーキングに車を停めて、近くのビルに入っていきました。
入り口の段差にはスロープがかけてあり、エレベーターに乗って一人で現場までたどり着くことができました。
ドアを開けると一段段差がありましたが、そこにもスロープがありました
担当者の方のお話では、数か月後にほかの場所で新しくコールセンターを
オープン予定で、オペレーターを大量募

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