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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㉑

「産まれたよ、見においで!」


諦めたとたんに
私のおなかに宿った小さな命

その頃、我が家には1歳になったばかりの長男がいました
血はつながっていませんが
名前はたつのりといいます。
たつのりの可愛い姿を思い浮かべて
辛い不妊治療や検査も頑張れました
 
1989年(平成元年)3月26日
「産まれたよ、見においで!」
実家の母から電話がありました。
「わかった、すぐ行く!」
長男たつのりが生まれた日です。
 
実家に着くと
日の当たる縁側に面した茶の間で
女の子が1匹…?
男の子が3匹…?
「ミュウミュウ」と声を上げて、小さな産まれたばかりの子犬が
のたうち回っていました。
実家で飼っている白いトイプードル「ハナちゃん」の子供たちです
女の子の子犬は、メグという名前を付けて実家に残し
男の子の子犬2匹は、早々に新しい家族が決まっていました
ただ、きょうだいの中で一番おっとりしていて、
何をしても後れを取ってしまう
(はっきり言えばどんくさかった)
男の子の子犬1匹が売れ残っていたのです
そこで、我が家の長男として迎えることになりました

夫が読売巨人軍の原辰徳選手(当時)のファンだったので
たつのりと命名し、タッチと呼ぶことにしました。
タッチは我が家の初めてのワンちゃん
夫、義母、私の3人の愛情を独り占めにしてすくすくと育ちました。
周りの人たちに「かわいい!」と言われると、自分のことだとわかっていて
すぐにこちらを向き、しっぽを降って寄ってきます!
(ほんとにかわいい!)
散歩に連れていくとワンちゃん好きの人が声をかけてくれます
「かわいいですね~」
「何歳ですか?」
「まだ6か月です」
などなど
不思議なことに、そういう時は飼い主の車いすなど眼中になく
単なるワンちゃん好きのトークになるのです
朝晩のお散歩は義母の楽しみになり
休みの日には毎週のようにあちこちの公園や川や海などへ
ドライブに出かけました
タッチを中心に毎日が過ぎていたのです
退屈だった専業主婦の生活に活気が生まれ
毎日笑顔があふれていました
タッチ君が我が家に来てくれたことに
心から感謝です
 
そんなタッチの最強のライバルは私のおなかで確実に育ち
いつの日かタッチの前に立ちはだかる時がやってくるのです。

どうするたつのり
 


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