マガジンのカバー画像

心惹かれる本。素敵な読書の記事。

71
運営しているクリエイター

記事一覧

生命のはずみ・3:ベルクソニズム

生命のはずみ・3:ベルクソニズム

今、ベルクソンの「創造的進化」を読んでいる途中なのだが、ベルクソンについて知っているようであまり知らないな、と思ったので調べてみたら、ベルクソニズムという言葉があることを知った。

Henri Bergson (Stanford Encyclopedia of Philosophy)

経歴を見れば、数学や心理学を専門として収めているということで、なるほど、と思ったところだ。どこ、と言われるとちょ

もっとみる
「結果にこだわらず進捗を大事にする生き方を」(早く一人前になりたいと焦るあなたへ)

「結果にこだわらず進捗を大事にする生き方を」(早く一人前になりたいと焦るあなたへ)

書店になら何時間でもいられる。
待ち合わせは、書店がいい。
装丁にこだわった本には、つい手が伸びる。
大学生の時に、装丁デザインの授業があった。
まずは、想定したい本を選ぶ。
日本の作家、海外の作家・・・。
友人が選んできた本で、その内面を知る驚きや納得感が楽しかった。

私は、フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』に決めた。
既に何度も読んでいた本。
もう、どんなものだったかも忘れたが、黄

もっとみる
G. Polya "How to Solve It" a new aspect of mathematical method.

G. Polya "How to Solve It" a new aspect of mathematical method.

予定どおり、お盆で頂いた1週間の休暇とプラス3日間で今年の6冊目の洋書、G. Polya 著 "How to Solve It" を読み終えた。分量的にはそれほど多いわけではないし、本来、すでにマスターしていなければならない内容だし、すらすらすらっと読めないといけない本ではあるので、ちょっと時間をかけすぎたかな、とも思う。

数学の問題をどのような手順で解くのか、どのように考えたらよいのか、学生に

もっとみる
検事の死命(著者:柚月裕子)

検事の死命(著者:柚月裕子)

著作者名:柚月裕子  出版社名:角川文庫  平成30年8月24日発行

「検事の死命」は、四話から成るが、ここでは、第三話 死命を賭ける 「死命」刑事部編、 第四話 死命を決する 「死命」公判部編を取り上げる。

佐方貞人(さかたさだと)は米崎地検の検事である。米崎市は、東京から新幹線で北に二時間の距離にある。佐方の元へ配点されてきた案件の一件は、電車内で痴漢行為を働き、迷惑防止条例に違反した

もっとみる
愛することは怖くて美しい

愛することは怖くて美しい

夫に愛人がいたら
私はどう思うのだろう。

井上荒野さんの
「あちらにいる鬼」を読み終えたのだが
余韻がすごくて
しばらく私の心も遠くへ行っていた。

昔から井上荒野さんの書く物語が好きだ。
きちんとアイロンをかけた洋服に
触れるようなそんな気分になる。

この小説は
荒野さんの父である井上光晴氏と
恋仲になった瀬戸内寂聴さんと
荒野さんの母親をモデルにしている。
フィクションのことや
実話の部分

もっとみる
琥珀の夢 下(著者:伊集院静)

琥珀の夢 下(著者:伊集院静)

著作者名:伊集院静 発行所:株式会社集英社 2020年6月25日発行

喜蔵(信治郎の兄)は、築港へ向かった。やがて春の朝陽が昇る気配がして、空がぼんやり美しい色に染まりはじめていた。堤防沿いを歩くと、旧桟橋の突端に人影が見えた。うしろ姿で弟とわかった。

近づくと信治郎の目から大粒の涙がこぼれていた。「喜蔵兄はん。とうとうでけましたで」子供の時分から、どんな時にも涙を見せることのなかった弟があ

もっとみる
バートランド・ラッセル Bertrand Russel "History of Western Philosophy"

バートランド・ラッセル Bertrand Russel "History of Western Philosophy"

予定より2か月弱の前倒しでカントの「判断力批判」を読み終えた。正確に言うと、下巻235ページ以降の「付録 判断力批判『第一序論』」をスキップすることにして、その手前までなので、ちょっとインチキかもしれない。まぁ、でも、付録とか謝辞、注釈などは、すべて読まなくても許されていいのでないか、と思う。

全著作や書簡や切れ端のメモまでを読んで全てを理解しようとしたとしても、本人ではない以上、自ずと理解に限

もっとみる
あなたの存在をないがしろにする価値観は、すべて間違い。

あなたの存在をないがしろにする価値観は、すべて間違い。

わたしの日々の楽しみのひとつ。
それは、哲学書を読むことです。

「哲学」と聞くと
少々難しいイメージがありますが
読んでみると、とっても面白い。

本日は、さいきん読んで面白かった
フリードリヒ・ニーチェの哲学について
書いてみようと思います。

不幸は架空の価値観によるもの

わたしたち人間は
架空の価値観に振り回されて
不幸になっている…。

初っ端から、顔面パンチを
くらったような衝撃の内

もっとみる
日々のできごと 秋から冬へ

日々のできごと 秋から冬へ

日記のようなものです。

11月某日

最近よく、藪に行く。原っぱとか、草ばかりのところへ、分け入ってゆく。

からすうり。

ノイバラ。

赤い実をさがす鳥さんの気持ち。
猪と遭遇しかけ、なかなかサバイバルでした。

11月某日

枝のすがた。アートみたい。

椋の木。書のよう。

11月某日

水辺で
水面のゆらぐかたちとか
水鳥の曳行する水紋とか
ほのあかい川面とか、見ている。

11月某日

もっとみる
月族1 プラリネの物語 今村恭子

月族1 プラリネの物語 今村恭子

辻仁成さんの作品と知り、読んでみたくなり、図書館で借りました。

飛鳥が薬子に話すお話に惹き込まれて、信じてしまいそうになりました。薬子になりきって読んでいたのかもしれません。

物語が進むにつれ、飛鳥のお話に出てくるプラリネと薬子が他人とは思えなくなってきます。

3巻まであるようで、2巻を早速予約しました。

1巻だけでも楽しめるファンタジーですが、2巻3巻も読みたいです。

父のビスコ

父のビスコ

読書記録[父のビスコ / 平松洋子 著 / 小学館]

食べ物の記憶というのは不思議なもので、もう何年もその食べ物にお目にかかってないのに、思い出した途端に鼻腔にその時の匂いが広がり、頭の中にその時の状況が浮かび上がる。
誰にでもそんな思い出の食べ物がひとつやふたつあると思うが、この作品は著者である平松洋子さんが生まれ育った倉敷で巡り合った食べ物、東京に出てから巡り合った食べ物など自分自身や家族と

もっとみる
グルメとグルマン:安野モヨコ「くいいじ」

グルメとグルマン:安野モヨコ「くいいじ」

私は、note の自分のプロフィール(140文字以内)に「自称グルメにしてグルマン」と書いていたが「くいいじがはっている」となおしてみた。「自称」 すなわち「なんちゃって」とつけているところがポイントだったのだが、そこを読み取らない人も多そうだとも思ったのだ。いちゃもんつけられてもいちいち説明するのも面倒だ。

グルマン (gourmand) というのは、「たくさん飲み食いすることが好きな人」「健

もっとみる
物作りって大変で、だけど面白い。

物作りって大変で、だけど面白い。

最近、図書館の児童書コーナーにハマっている。昔からわかってはいたけども、私はいわゆる大人向けの書籍コーナーにいるよりも、こっちの方が性に合うみたい。手に取るスピードも、借りる冊数も全然違うもの……。

そんな中で、今回特に「これはすごい!」と思った1冊を紹介させてください。

パンダ広告社に勤める主人公、本田パンダは5年目のコピーライター。彼の視点から、広告作成のあれこれや、言葉と格闘する様子が描

もっとみる
「 もうひとつの居場所 」の物語

「 もうひとつの居場所 」の物語

「 逃げ出してしまいたい 」



今、そんな想いを抱いている人がいたら
ぜひ手に取ってみて欲しい本がある。

どこか懐かしく、少し切なく、とびきり温かい、
「もうひとつの居場所」を描いた物語。



雲を紡ぐ
特に、単行本120頁から122頁の
おじいちゃんの言葉、とても好き。

岩手の瑞々しく美しい自然と
糸を紡ぐ職人たちの芯通った心、
親子、夫婦の関係の再構築。
読み進めるにつれて
心が

もっとみる