物作りって大変で、だけど面白い。
最近、図書館の児童書コーナーにハマっている。昔からわかってはいたけども、私はいわゆる大人向けの書籍コーナーにいるよりも、こっちの方が性に合うみたい。手に取るスピードも、借りる冊数も全然違うもの……。
そんな中で、今回特に「これはすごい!」と思った1冊を紹介させてください。
パンダ広告社に勤める主人公、本田パンダは5年目のコピーライター。彼の視点から、広告作成のあれこれや、言葉と格闘する様子が描かれていく。
小学4~6年生向けとは書いているが、広告会社及びコピーライターの仕事がかなりリアルなテイストで描かれているように感じた(コンペ=コンペティションといった用語の説明もナチュラルに入れてくる)。小学生向けだから~ という文脈は控えたいのだが、想像していたよりも「お仕事小説」だったので嬉しい誤算だったのだ。しかし、文体は平易でキャッチー。児童書では文字数が多い方だと思うが、グングン引き込まれ、一気読みしてしまった。
なんでこんなにもリアルなのだろう……と作者プロフィールを見てみると、文担当の間部香代さんの前職はコピーライターとのこと。広告を作る過程の描写が細かいのも、ご自身の経験が活かされているのではと想像される。
コピーを作る難しさ、何のためにコピー(広告)を作るのか、といった点についての一幕には、日々文章を書くことにトライしている私にも刺さるものがあったというか、独りよがりになっちゃいけないなあ、と帯を締め直させていただきました。
あと、最も現実っぽいなあと思ったのは、県大会の開催地が災害の影響で隣町から急遽自社のある街に変更となり、その企画を任された話。
時間が無いのに代々続いてきた県大会のコンセプトをガラッと変えた思い切りの良さと、全肯定する市長の懐の深さは、お話の世界ならではかもしれないが、そんな新開催地のドタバタだけでなく、旧開催地になってしまった街についてもちゃんと触れているのだ。
特に考えさせられたのは、メダル製作にあたって、当初メダル造りを頼まれていた隣町の金属加工会社に話を聞きに行った際、そこに積まれた在庫の山を目にした主人公が「メダルがここにあるということは、お金も払われていないことを意味する(132頁)」と心の中で考えたシーン。
話の主軸は広告会社にあるが、それ以外の利害関係者にもスポットライトを当て、『開催できそう! めでたしめでたし!』で終わらせないのが素敵だなと思った。また、直後の主人公の機転の良さもカッコ良かったし、勉強になりましたです。
物作りって大変で、だけど面白い。
物作りは、色んな人が関わることでできている。
そんなことを思わせてくれる1冊です。気になった方がいらっしゃったら、是非手に取ってみてください。
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