イラストレーター×デザイナー
先輩からもらえる唯一の「やりがい」
2019年5月
イラストレーターとして広告制作会社でバイトをはじめた。
イラレもろくに弄ったこともなく絵を描くことしかできなかったのだが、随分とよくしてもらった。いろんな意味で。
先輩社員がデザインを仕上げていくにあたり、挿絵などのイラストが必要になることがあった。そこで私がちゃちゃっとイラストを描きデータを渡すというのが主な仕事。
他には、広告の主役がイラストになる場合は私がどでかい絵を描き、それに先輩方が文字入れをして整えるという仕事もあった。
デザインに優れた人が多かったためか、私自身タイトルやロゴなどイラスト以外のデザインに自信がない。
才能がないと言われた事はないがどうしても「ちょっと専門外です……」という気分になる。表紙絵を描く際に文字入れも頼まれることもあるのだが、実は「私でいいのか?」という気分になっている。内緒だ。
とはいえ、
デザイナーと仕事をするイラストレーターも、ひとりのデザイナーだった。
先輩が作業しやすいようなデータをデザインする。
データ名は直感的にわかりやすい言葉で。数が多い時は用途ごとにファイル分け。調整しやすいようにレイヤーを分割しておく。必要だと思えば別パターンのイラストも添付。できる限り修正を早く。解像度は高い方がいい……などなど。
「そんな最低限のことはやって当然」という声が聞こえてきそうだが……。
どんなに忙しくても最低限のことを配慮できたのは、先輩に「ありがとう」を逐一言ってもらえたからだ。
当初は気づかなかったが、今思えば「ありがとう」の力は絶大だっただろう。
営業先に直接行くわけでもない、先方と通話することもないイラストレーターにとって「ありがとう」は先輩からもらえる唯一の「やりがい」だった。
(無理難題な納期に追われ残業しまくる先輩に同情しただけではない。決して。)
人と仕事をするときに大事なことをそこで学んだ。
大事なことと言うと語弊があるだろうか。
人と仕事をするときにあったら嬉しいこと、としておこう。
「ありがとう」をしないのもその人の自由だしな。