柳は緑

何のために生きるのか。この世に価値はあるのか。読書のなかに回答を得たいと考えています。…

柳は緑

何のために生きるのか。この世に価値はあるのか。読書のなかに回答を得たいと考えています。1954年生まれ、男性です。

最近の記事

さいはての彼女(著者:原田マハ)

著作者:原田マハ 発行所:株式会社KADOKAWA 平成25年1月25日初版発行 主人公は鈴木涼香(すずか)三十五歳。六本木ヒルズのタワーに本社を構える社員百人の会社の社長。涼香が中学三年のとき、父親は若い愛人と出奔する。涼香はグレた。しかし、高一のとき付き合ってた子が、無免許運転でバイクで死ぬ。それで目が覚めた。勉強して、大学行って、会社も創って、いまの涼香になった。で、すっかりいい気になり、周りが見えなくなった。彼氏にはフラれ、頼りにしていたスタッフにも辞められる。

    • 生きるぼくら(著者:原田マハ)

      著作者:原田マハ 発行所:株式会社徳間書店 2016年8月1日電子書籍版発行 主人公は、麻生人生(あそうじんせい)。父と母が離婚したのは、人生が小学校六年生十二歳のときだった。それまでは、人生にとって、さんさんと日のあたる、もっとも明るい時期だった。運動会や遠足で校庭や野山を走り回り、おにぎりをほおばる人生は幸せだった。おにぎりのなかには、母が苦労して作った梅干しが入っていた。 『見知らぬ町の中学校に進学した人生は、無視されたりいじめられたりしたが、どうにか耐え抜いた

      • 月曜日の抹茶カフェ(著者:青山美智子)

        著作者:青山美智子 発行所:株式会社宝島社 2023年6月20日発行 この作品は、1月から12月までの東京と京都を結ぶ12の話から成っている。ここでは、1 月曜日の抹茶カフェ(睦月・東京)と12 吉日(師走・東京)を取り上げる。 美保(みほ)は、26歳、携帯ショップで働いている。1月も半ばとなったが、初詣をする。そこで、『きっといいことがありますように』と願う。この願いは成就する。 美保はマーブル・カフェへ行くが、そこでは、抹茶カフェというイベントを行っていた。メ

        • 祈りの幕が下りる時(著者:東野圭吾)

          著作者:東野圭吾 発行所:株式会社講談社 2016年9月15日発行 押谷道子(おしたにみちこ)が葛飾区小菅のアパートで殺された。部屋の住人である越川睦夫(こしかわむつお)は、姿を消していた。『越川の行方を推定できるようなものは何ひとつ見当たらなかった。それどころか、越川という人物が何物かを示すものさえないのだ。』 刑事の松宮と坂上は、滋賀県の道子の職場を当たって、交友関係、東京との繋がりなどを探るよう指示される。道子と仕事上関係がある「有楽園」という老人ホームは、無銭

        さいはての彼女(著者:原田マハ)

          麒麟の翼(著者:東野圭吾)

          著作者:東野圭吾 発行所:株式会社講談社 2014年2月14日発行 青柳武明(あおやぎたけあき)は五十五歳。建築部品メーカー「カネセキ金属」勤務で、製造本部長。武明は、江戸橋にある地下道で全長約十八センチの折り畳み式ナイフで胸部を刺された。刺された後、日本橋まで自力で移動した。 事件発生から約二時間後の午後十一時十分頃、日本橋人形町にある浜町緑道という公園で不審な男が潜んでいた。職務質問をしようとしたところ、男は突然駆け出した。警官が追跡すると、男は新大橋通りを横断し

          麒麟の翼(著者:東野圭吾)

          赤い指(著者:東野圭吾)

          著作者:東野圭吾 発行所:株式会社講談社 2009年8月12日発行 前原昭夫(あきお)は照明器具メーカーに勤務している。東京本社は中央区の茅場町にある。昭夫に妻の八重子(やえこ)から電話があった。「早く帰って欲しい」と訴える八重子はかなり興奮していた。 家に帰ると、八重子が出て来た。『顔色が悪く、目が充血している。その目の下には隈(くま)が出来ており、急に老け込んだように見えた。』庭には黒いビニール袋をかぶせた「知らない女の子」の死体があった。 中学三年の直巳(な

          赤い指(著者:東野圭吾)

          嘘をもうひとつだけ(著者:東野圭吾)

          著作者:東野圭吾 発行所:株式会社講談社 2003年2月15日発行 この作品は、5つの物語から成る。ここでは、「第二の希望」を取り上げる。母、楠木真智子と、娘、理砂の物語である。 真智子は、会計事務所での事務を仕事としている。その他にダンススクールの教師もしている。真智子にとってダンサーは第二希望だった。第一希望は、器械体操のオリンピック選手になることだった。 『理砂には天才的な運動神経が備わっていた。少なくとも真智子の目にはそう見えた。自分以上の才能がある。理砂

          嘘をもうひとつだけ(著者:東野圭吾)

          お探し物は図書室まで(著者:青山美智子)

          著作者:青山美智子 発行所:株式会社ポプラ社 2023年3月5日発行 この物語は、探し物をしている5人の主人公の話しである。ここでは、「五章 正雄 六十五歳 定年退職」を取り上げる。 正雄は六十五歳になった九月の最終日に、会社員人生を終える。正雄は定年退職してからわかったことが三つある。『ひとつは、六十五歳が思っていたよりずっと若いことだ。』少なくとも正雄自身は老人という実感はまだない。まだ中年が続いているような気がしている。 「もうひとつは、正雄には恐ろしいほど

          お探し物は図書室まで(著者:青山美智子)

          どちらかが彼女を殺した(著者:東野圭吾)

          著作者:東野圭吾 発行所:株式会社講談社 1999年5月14日発行 和泉園子(いずみそのこ)は佃潤一(つくだじゅんいち)と彼女が勤める会社(電子部品メーカーの東京支社)のすぐ近くで去年の十月に出会う。潤一は道端で絵を売っていた。 園子は子猫の絵を買おうとするが、潤一は「あげる」と言う。そこから二人の交際が始まり、潤一は両親に園子を紹介する。 園子にとって唯一心を許せる友人は弓場佳世子(ゆばかよこ)だった。二人は同郷で高校の一年と三年の時同じクラスだった。更に、二人

          どちらかが彼女を殺した(著者:東野圭吾)

          地獄変(著者:芥川龍之介)

          底本:「芥川龍之介全集 第一巻」岩波書店 1995年11月8日発行 『地獄変の屏風の由来程、恐ろしい話はございますまい。』大殿様は突然良秀(よしひで)を呼び、地獄変の屏風を描くようにと、言いつけた。この屏風の絵も凄まじいが、この絵の由来もまた凄まじい。 この絵の由来に欠かせないのは、画師の良秀、その娘、娘が可愛がった猿である。 良秀は、当時、絵筆をとったら、右に出るものは一人もいないと言われた位、高名な絵師である。しかし、良秀は、横柄で高慢であった。そして、立居振

          地獄変(著者:芥川龍之介)

          眠りの森(著者:東野圭吾)

          著作者:東野圭吾 発行所:株式会社講談社 1992年4月15日発行 四月十日日曜日、練馬区東大泉の高柳バレエ団事務所内で殺人事件が発生した。被害者の身元は不明。被疑者はバレエ団団員兼事務局員の斎藤葉瑠子、二十二歳。 事件の前に、葉瑠子は、バレエ団の経営者である高柳静子と団のバレエ・マスターの梶田康成と共に池袋で劇場の支配人と会っていた。 一足先に葉瑠子だけがバレエ団に帰り、強盗の男と鉢合わせした。男は葉瑠子に襲い掛かってきた。葉瑠子は無我夢中でそばにあった花瓶を振

          眠りの森(著者:東野圭吾)

          戯作三昧(著者:芥川龍之介)

          底本:「日本の文学 29 芥川龍之介」中央公論社 1964年10月5日初版発行 天保二年九月、午前。神田の銭湯松の湯では、朝から客が多かった。その混雑の中に、六十あまりの老人がいた。滝沢馬琴(ばきん)である。 馬琴は生活に疲れているだけでなく、何十年来の創作の苦しみにも疲れていた。今は、「八犬伝」の執筆中である。風呂の中で、馬琴の作品の悪評を言っている者がいる。『「どうして己は、己の軽蔑している悪評に、こう煩わされるのだろう」』と思う。 うちへ帰ると和泉屋市兵衛と

          戯作三昧(著者:芥川龍之介)

          検事の本懐 第二話 罪を押す(著者:柚月裕子)

          著作者:柚月裕子 発行:株式会社KADOKAWA 平成30年7月24日発行 米崎地検に身柄付送致があった。被疑者は、小野辰二郎(たつじろう)。『小野は三年前、筒井副部長が起訴した男だった。当時、小野は五十四歳、住居侵入罪及び窃盗罪で警察から送致されてきた。』『筒井は小野を起訴した。裁判官が小野に下した判決は、実刑三年。』 被害額は約五万円と少なかったが、『小野は窃盗や無銭飲食などの微罪の常習犯で、娑婆(しゃば)と刑務所を行ったり来たりしている累犯者だった。』 今回

          検事の本懐 第二話 罪を押す(著者:柚月裕子)

          検事の本懐 第一話 樹を見る(著者:柚月裕子)

          著作者:柚月裕子 発行:株式会社KADOKAWA 平成30年7月24日発行 県下警察署長会議の場面から物語は始まる。米崎(よねざき)東警察署長の南場輝久は、本部の刑事部長佐野茂から所管の警察署管内で起きている連続放火事件で責められている。南場は、胃が刺すように痛む。佐野刑事部長は、犯人をいまだに検挙できずにいるのは南場の責任であるとして、非難を延々と続ける。佐野が南場の無能さを責め立てるのは、署長会議が開催されるたびに行われた。 刑事部長の佐野は、南場の警察学校の同期

          検事の本懐 第一話 樹を見る(著者:柚月裕子)

          老害の人(著者:内館牧子)

          著作者:内館牧子 発行所:株式会社講談社 2022年11月1日発行 主人公の戸山福太郎は、昭和十年五月生まれの八十五歳。老害には種類があるが第一位は、「昔の自慢話」第二位は、「世代交代に抵抗」である。福太郎はこの第一位と第二位を併せ持ち、最強最悪な「老害の人」である。 ここでは、福太郎の孫の戸山俊(しゅん)に焦点を当てる。俊は、「雀躍堂(じゃくやくどう)」社長の純一と明代の長男で、埼玉県立岩谷第一高校の三年生である。 『岩谷一高は、戸山宅から自転車で十五分ほどのと

          老害の人(著者:内館牧子)

          希望の糸(著者:東野圭吾)

          著作者:東野圭吾 発行所:株式会社講談社 2022年7月15日発行 殺人事件が発生した。被害者は、目黒区自由が丘の喫茶店「弥生茶屋」の経営者「花塚弥生(はなづかやよい)」。年齢は五十一歳。『結婚歴はあるが、現在は離婚していて独り暮らし、子供はいない。栃木県宇都宮市の出身で、その地には今も両親が住んでいる。』 刑事の松宮脩平は、被害者の関係者からの聞き取りを行う。「あんないい人はいない。」と誰もがいった。誰かから憎まれたり恨まれたりするような人ではなかった。『被害者の花

          希望の糸(著者:東野圭吾)