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検事の死命(著者:柚月裕子)


著作者名:柚月裕子  出版社名:角川文庫  平成30年8月24日発行
 
「検事の死命」は、四話から成るが、ここでは、第三話 死命を賭ける 「死命」刑事部編、 第四話 死命を決する 「死命」公判部編を取り上げる。
 
佐方貞人(さかたさだと)は米崎地検の検事である。米崎市は、東京から新幹線で北に二時間の距離にある。佐方の元へ配点されてきた案件の一件は、電車内で痴漢行為を働き、迷惑防止条例に違反したとされる男だった。被疑者の名前は武本弘敏(たけもとひろとし)四十三歳。
 
『事件当日、武本は神原から午後一時三十二分発の富岡行き準急電車に乗った。その日は休日にもかかわらず、途中の米崎駅を過ぎる頃には、車中は身動きが取れないほど混雑していた。富岡にある大型イベント会場の「富岡アリーナ」で、大手レコード会社が主催するロック・フェスティバル』が開催されるのである。武本は電車の混雑を利用して、被害者に痴漢行為を働いた、とされる。武本は、痴漢行為を一貫して否認し、無実を訴えている。
 
武本は、地元の大手予備校で経理課長を務めていた。義父の保(たもつ)は、県教育委員会の元教育長で、県立高校の校長を歴任している。地元では有名な教育者である。義母の篤子(あつこ)は、旧姓本多(ほんだ)。県内有数の資産家一族である本多家の四女だ。
 
一方、被害者である仁藤玲奈(にどうれいな、十七歳)は、有力者の伝手(つて)などまったくない母子家庭の娘だ。しかも少女には、万引きと恐喝で補導された前歴があった。
 
米崎地検のトップは、鬼貫正彰(おにつらまさあき)検事正である。国会議員からの圧力もあり、武本を不起訴にしたいと考えている。佐方は、容疑は濃厚かつ悪質、起訴すべき事案と考えている。佐方は、鬼貫にこう言う「お言葉ですが検事正、自分は、罪をまっとうに裁かせることが、己の仕事だと思っています。」一歩も譲らない。
 
地域の有力者をバックにする武本と一介の少女との対決。それは、佐方が権力に対して正義を貫けるかどうかの戦いでもある。どうなるのか、楽しみです。
 
                          注:『』は引用文


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