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中沢新一著『レンマ学』『精神の考古学』『構造の奥』などを読む

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中沢新一氏の著作『レンマ学』『精神の考古学』『構造の奥』『精霊の王』『アースダイバー神社編』などを読み解きます。
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#レンマ学

潜在眼で心の深層を「見る」/卵の殻としての言語 -中沢新一著『精神の考古学』をじっくり読む(5)

潜在眼で心の深層を「見る」/卵の殻としての言語 -中沢新一著『精神の考古学』をじっくり読む(5)

中沢新一氏の『精神の考古学』を引き続き読む。

精神の考古学。
私たちの「心」は、いったいどうしてこのようであるのか。

私たちが日常的に経験している「心」は、よい/わるい、好き/嫌い、ある/ない、真/偽、結合している/分離している、同じ/異なる、自/他、といった二項対立を分別するようにうごいている。通常「心」というと、こういう識別、判別、判断を行うことが、その役割であるかように思われている。

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人類の”心”のアルゴリズムを解き明す神話論理×十住心論 -レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(44_『神話論理2 蜜から灰へ』-18)

人類の”心”のアルゴリズムを解き明す神話論理×十住心論 -レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(44_『神話論理2 蜜から灰へ』-18)

クロード・レヴィ=ストロース氏の『神話論理』を”創造的”に濫読する試みの第44回目です。

これまでの記事はこちら↓でまとめて読むことができます。

これまでの記事を読まなくても、今回だけでもお楽しみ(?)いただけます。

この一連の記事では、レヴィ=ストロース氏の神話論理を”創造的に誤読”しながら次のようなことを考えている。

則ち、神話的思考(野生の思考)とは、Δ1とΔ2の対立と、Δ3とΔ4の

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野生の思考の核心にふれる/螺旋状に踏破する「心」 -β樹木のβ樹皮を纏ったβ老人がβジャガーに変身し…  -レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(43_『神話論理2 蜜から灰へ』-17)

野生の思考の核心にふれる/螺旋状に踏破する「心」 -β樹木のβ樹皮を纏ったβ老人がβジャガーに変身し… -レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(43_『神話論理2 蜜から灰へ』-17)

クロード・レヴィ=ストロース氏の『神話論理』を”創造的”に濫読する試みの第43回目です。今回はとてもおもしろいので(もちろん毎回おもしろいと思って書いていますが特に今回は特別に)どうぞお楽しみください。

これまでの記事はこちら↓でまとめて読むことができます。
これまでの記事を読まなくても、今回だけでもお楽しみ(?)いただけます。

はじめに、下の図をご覧ください。

神話的思考(野生の思考)とは

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生命体としてのシンボル分節システム ー感覚、イメージ、シンボル、ことば

生命体としてのシンボル分節システム ー感覚、イメージ、シンボル、ことば

国立民族学博物館で開催された公開講演「イメージの脈動にふれる」をyoutubeで視聴しました(現在は非公開)。

基調講演は中沢新一氏の「眼とイマージュ」である。

中沢氏といえば、私もこのところ『アースダイバー神社編』を読み込んでいたところである。「イメージの脈動にふれる」も繰り返し再生して拝見しました。

講演の中で中沢氏は、人間の身体の内部から発生する”脈動”するイメージについて論じる。

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"相互包摂"であらゆる「項」を両義的で中間的で媒介的にする ー  『今日のアニミズム』を読む

"相互包摂"であらゆる「項」を両義的で中間的で媒介的にする ー 『今日のアニミズム』を読む

奥野克巳氏と清水高志氏の共著『今日のアニミズム』を読む。

(本記事について、twitterにて著者の清水先生に言及いただきました。
ありがとうございます。)

アニミズムアニミズムと総称されるさまざまな思考においては、たとえば「人間」対「動物」であるとか、「人間」対「植物」、あるいは「人間」対「自然(鉱物から気候や天体」、さらには「現世に生きる人間なるもの」対「それ以外のもの(人間や他のさまざま

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意味分節理論は「書く」と「読む」の役に立つ

意味分節理論は「書く」と「読む」の役に立つ

意味分節理論などというと、”いかにも抽象的で、現実離れして、とても何かの役に立つとは思えない感じがする”といった印象を持たれることも多い。

ちなみに、意味分節理論というのは意味(意味する)ということの発生を、次のようなモデルで考えるものである。



まず、ある二つのシンボルの二項対立関係を二つ重ね合わせ、そこに第三の二項対立を直交させる。この第三の二項対立を軸にして、最初の二つの二項対立の重

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月は、紐を使わずにどうやって海を引っ張るのか? -カルロ・ロヴェッリ著『世界は「関係」でできている』とレンマの論理

月は、紐を使わずにどうやって海を引っ張るのか? -カルロ・ロヴェッリ著『世界は「関係」でできている』とレンマの論理



「月は、紐が無いのにどうやって海を引っ張っているんだ??」



忙しい朝の保育園への登園の途上、不意に長男がこんなことを訊ねてきた。潮汐の話を、おそらく園で聞いたのだろう。

紐がないのに引っ張る。

月と海

月と地球

二つの物体が存在する。

二つの物体が引っ張り合う、綱引きする。

綱はどこに行った?



子どもの質問だからと言って、子供扱いしてはならない。

いや、子供とか

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意味分節理論とは(4) 中間的第三項を象徴するモノたち -中沢新一著『アースダイバー神社編』を読む

意味分節理論とは(4) 中間的第三項を象徴するモノたち -中沢新一著『アースダイバー神社編』を読む

(本記事は有料に設定していますが、全文「立ち読み」できます!)



中沢新一氏の『アースダイバー神社編』を引き続き読む。

(前回、前前回の続きですが、今回だけでお楽しみいただけるはずです)

『アースダイバー神社編』には、諏訪大社、大神神社、出雲大社、そして伊勢神宮といった極めて古い歴史を持つ神社が登場する。

中沢氏はこれらの神社に今日にまで伝わる神話や儀礼やシンボル(象徴)たちを媒にして

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創造的分節システムとしての"耳"を発生させる -中沢新一著『精霊の王』を精読する(7-2)

創造的分節システムとしての"耳"を発生させる -中沢新一著『精霊の王』を精読する(7-2)

(このnoteは有料に設定していますが、最後まで無料でお読み頂けます)



中沢新一氏の著書『精霊の王』を精読する連続note、その7回目の後編である。(前編はこちら↓ですが、前回を読んでいなくても大丈夫です。)



(最初から読みたいという方はこちら↓からご覧ください。)

境界性『精霊の王』、単行本の208ページには、精霊の王=宿神は「境界性」を象徴する、とある。

境界性とはどういう

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鼓のリズムから生じる波紋としての意味分節構造 -中沢新一著『精霊の王』を精読する(5)

鼓のリズムから生じる波紋としての意味分節構造 -中沢新一著『精霊の王』を精読する(5)

中沢新一氏の著書『精霊の王』を精読する連続note。その第六章「後戸に立つ食人王」を読む。

(前回はこちらですが、前回を読んでいなくても大丈夫です)

後戸というのは聞き慣れない言葉かもしれない。また食人王、人を食べる王、などというのもどうにも不気味な感じのする言葉である。

こういう謎めいた、時に不気味な言葉で新たな意味分節を試みることが、既成の思考のプロセスを織り成している言葉たちの分節体系

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区別・分節作用それ自体の象徴としての"精霊"へ -中沢新一著『精霊の王』を精読する(4)

区別・分節作用それ自体の象徴としての"精霊"へ -中沢新一著『精霊の王』を精読する(4)

中沢新一氏の著書『精霊の王』を精読する連続note。その第四章「ユーラシア的精霊」と第五章「縁したたる金春禅竹」を読む。

(前回はこちらですが、前回を読んでいなくても大丈夫です)

精霊の王というのはその名の通り「精霊」の「王」である。

精霊には古今東西色々なものが居り、人類によってさまざまな名で呼ばれてきた。精霊は多種多様でさまざまな名を持っている。

しかし、そうした精霊たちの間には、違い

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精霊の王は人界と異界の媒介者である -中沢新一著『精霊の王』を精読する(3)

精霊の王は人界と異界の媒介者である -中沢新一著『精霊の王』を精読する(3)

中沢新一氏の著書『精霊の王』。その第二章「奇跡の書」、第三章「堂々たる胎児」を読んでみる。

第一章「謎の宿神」では、宿神が蹴鞠の精霊、「鞠精」として姿を現した。それが第二章「奇跡の書」では、今度は宿神が能楽の「翁」として姿を現す。

幽玄の世界に入り込むと同時に、それを言葉によって理論化した金春禅竹。その善竹の筆による『明宿集』には「「翁」が宿神であり、宿神とは天体の中心である北極星であり、宇宙

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両義的媒介項としての宿神 -中沢新一著『精霊の王』を精読する(2)

両義的媒介項としての宿神 -中沢新一著『精霊の王』を精読する(2)

中沢新一氏の『精霊の王』を精読する連続note。

第一章「謎の宿神」を読む。



「侍従成通卿と言えば、比類のない蹴鞠の名手と讃えられ…」(『精霊の王』p.4)

この一節から始まる第一章は「蹴鞠」の話である。

「精霊の王」たるシャグジ−宿神は、日本列島に国家が成立する遥か以前から祀られてきた神である。

その精霊の王の話をするのに、なぜ国家が成立して数百年を経た後の時代の芸能のことから始

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中沢新一著『精霊の王』を精読する(1)

中沢新一著『精霊の王』を精読する(1)

これまでしばらくの間、中沢新一氏の『レンマ学』を精読していたのだけれども、ついに読み終えてしまった。

もう一度読めば良いのだけれども、せっかくなので別の本を精読してみることにする。同じ中沢新一氏の『精霊の王』である。

『精霊の王』については前にnoteにまとめたことがあるが、今回は「精読」してみることにする。

『精霊の王』は中沢氏による2003年の著作で、『レンマ学』を遡ること10数年前の話

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