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家族+くらし

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家族のこと。その土台になる暮らしのこと。などについて思うことをまとめています。
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黒猫のミリー【vol.1:うなぎの蒲焼】

黒猫のミリー【vol.1:うなぎの蒲焼】

黒猫のミリーは、ちっとも釈然としなかった。

あれは、夢だったのか――。
ぼんやりしてよく思い出せないが、ずっと頭から離れないシーンがある。

そこには確かに「天使」がいた。
天使は、優しそうなおばあさんと話をしていた。よく試練に耐えましたね、そんな風に、おばあさんを労っていた気がする。

それから、おばあさんは何か頼み事をしていた。最後に天使がこう話したのは覚えている。

「分かりました。50回

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黒ネコになった母へ

黒ネコになった母へ

母は、静かな早朝にそっと旅立っていった。

30歳を過ぎた頃から、たくさんの大きな病気を抱え乗り越えてきた母は、そのたびに身体の機能を少しずつ手放してきた。趣味のお習字、自分の足で歩くこと、自分の口から食べること、寝返りを打つこと。そして最後は呼吸をすること。

””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””

2年半前、渡米す

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八百屋さんは楽しい。

八百屋さんは楽しい。

こんな酷暑には、夏野菜をたっぷりとるに限る。

夏野菜には、身体をクールダウンさせたり紫外線から肌を守ったり、暑い夏を健やかに乗り切るための要素がいっぱい詰まっているそうだ。

冷水でシャッキとさせて素材の旨味を楽しんだり、軽くグリルして香ばしさを加えたら、たっぷりのおかかとめんつゆをかけて頂くのも良し、バルサミコ醤油をかけても良し。新鮮な野菜は出来るだけシンプルに頂きたい。

4人家族にとって、

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あなたのキャンプの原点は?

あなたのキャンプの原点は?

私のキャンプの原点は、高1の夏休み、14日間を過ごした北海道・標津に建つ山小屋にあります。ここには鮮やかな思い出がいっぱい。

今はファミリーキャンプをするし、学生時代には登山キャンプを何度も経験したけれど、キャンプをするときには、いつもこの原体験が頭をよぎります。

【プロローグ】私の通っていた中高一貫校の生物教員のK先生が、夏休みに希望者を募る北海道の山小屋生活。他にもいくつかの学校の生徒(希

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寒ければ寒いほど、釜めしは旨い。

寒ければ寒いほど、釜めしは旨い。

先週末は、秋の気配深まる山奥まで。冷たい空気がぴりっと心地よく、マスクを外して思い切り吸い込みたくなりました。 

◇渓谷に映える優美なめがね橋訪れた群馬県の‟めがね橋”は、かつて使われていた線路の跡地。明治25年の竣工から、昭和38年の廃線まで鉄道を支えていました。山の渓谷に映える優美な煉瓦製アーチ橋で、国の重要文化財に指定されています。

長さ91メートル、高さ31メートルある我が国最大級のア

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トラップファミリーは、アメリカ・バーモント州に眠る

トラップファミリーは、アメリカ・バーモント州に眠る

ミュージカル映画が好きだ。

小学生のころ、「ウェスト・サイド・ストーリー」や「メアリー・ポピンズ」などのクラシカル作品がテレビ放映されるたびに、母が録画して家族団欒タイムに観ていた。

ミュージカルを観ると、なぜか気分がスカッとする。幸福感や高揚感はもちろん、現実には心の内に抑え込むような、憤りや猜疑心、寂しさなどのネガティブな感情も全力全開で表現してくれるので、いつの間にかどっぷり感情移入して

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我が家を幸せに彩る、週に一度の「お家のパン屋さん」

我が家を幸せに彩る、週に一度の「お家のパン屋さん」

お家のパン屋さんは、子育ての一段落したお母さんが、自宅の一角で開いているパン屋さん。

週に一度、お家のパン屋さんに通う。

7年前頃に始まったそんなささやかな楽しみは、いつしか我が家にとって欠かせない習慣へと変化していた。

❏20年営業してきたおばあちゃんのパン屋さん

我が家の近所には2軒のお家のパン屋さんがある。

このうち1軒は、70代のおばあちゃんがひとりで切り盛りするお店で、20年間

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気持ちを上げてくれる、我が家のガラス製品たち

気持ちを上げてくれる、我が家のガラス製品たち

先日、日本帰国から5カ月を経て、ようやく自宅に戻ることができた。諸事情により、帰国後は仮住まいを転々とする日々だった(自宅は貸していて契約期間が満了していなかった)。

仮住まい生活中、家族そろって体調を崩し続けていたが、自宅に戻るとそれが不思議なほどピタっと終息し、ようやく落ち着いた生活を楽しんでいる。先日は、久しぶりに取り出したお気に入りの品々で自宅を埋め尽くした。

❏ラップランドの極夜が蘇

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アメリカ滞在中、アジア系差別と思われる出来事を前に思ったこと

アメリカ滞在中、アジア系差別と思われる出来事を前に思ったこと

少し前、アカデミー賞授賞式でのアジア系差別が話題になっていた。報道を傍観しつつ、心の中は様々な思いが駆け巡っていた。

記憶のすみに追いやっていた、アメリカ滞在中のシーンがいくつか蘇る。

2年間のアメリカ滞在中、たくさんの素敵な出会いがあったし、様々な国の興味深い文化に触れることができた。

ただネガティブなことが一切なかったというと嘘になる。人種差別の多くは見方によって変幻自在で、ジャッジが難

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アメリカの図書館と、そこで出会った日本の絵本たち

アメリカの図書館と、そこで出会った日本の絵本たち

今日図書館いこっか。
うん。行く!

アメリカへ転居した頃、娘は通園する先が無かった。月齢条件を満たしていないという理由で公立のプレスクールには入園できず、かと言って月謝が20~30万円のアメリカの保育園に通うのは経済的に無理なため、9月のキンダーガーテン(義務教育)入園まで家で見ることにした。

子連れで外を歩いていると、満面の笑みをたたえたアメリカ人が子供にフレンドリーに話しかけてくれる。それ

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アメリカで感じた「正解を当てるより大切な、理由を考える力の育み」

アメリカで感じた「正解を当てるより大切な、理由を考える力の育み」

2年弱のアメリカ滞在中に「これはいいな。真似したい」と思ったポイントを書いていく、アメリカの「これいいな」シリーズ。

第2弾は"小学校の授業"。小3息子と保育園年長(アメリカでは小1)娘から聞いた話が興味深かったので、子供達との対話をそのままご紹介します。

◎答えが合ってる子より、良い理由を考えられた子が褒められる

夕飯時、子供達の学校生活の話を聞くのが楽しい。

先日、息子がエビグラタンを

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アメリカで感じた「小学生の持ち物は3つだけでよい」

アメリカで感じた「小学生の持ち物は3つだけでよい」

2年弱のアメリカ暮らしを経て、昨年末に日本帰国したLarge cedarです。

先日の記事で、日本暮らしを再開して噛み締めた日本の良いところ・好きなところベスト6を書きました。

今度はアメリカ滞在中に、「これはいいな。真似したい」と思ったポイントを書いていきたいと思います。題して、アメリカの「これいいな」シリーズ。第一弾は"小学生の持ち物"です。

❏小学生の息子がバックパックに入れてたのは「

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創作大賞2023発表で個人的に思ったことのつぶやき

創作大賞2023発表で個人的に思ったことのつぶやき

note創作大賞2023の発表記事で、フォローさせて頂いてるせやま南天さんの作品『クリームイエローの海と春キャベツのある家』が見事に受賞されているのを見て、なんだか嬉しくなった。きっとあの作品は受賞するだろうなと勝手に期待していた。

アメリカ生活を始めて、英語スキルの向上という平坦ではない道をたどるなか、「日本語の誘惑」に溺れるのを恐れて、日本語コンテンツを意識的に遠ざけている時期があった。

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週末の朝をちょっぴり豊かにしてくれるのは、近所のパン屋さん 〜ボストンのパン屋さん「Iggy's」

週末の朝をちょっぴり豊かにしてくれるのは、近所のパン屋さん 〜ボストンのパン屋さん「Iggy's」

その土曜は完璧な朝だった。だから私はいつも通りの朝ごはんで一日を始めるのをやめてみた。

近所のパン屋さんでスモークサーモンとクリームチーズのたっぷり入ったベーグルサンドを買って朝ごはんにしよう。きっと完璧な朝食になる。

朝に弱い夫が出張中だったので、子供達と特別な朝をつくる絶好の機会だった。

❍真面目なパン屋イギーズ

パン屋の名はイギーズ。 いつ行ってもパンを焼く匂いの漂うレンガ建ての大き

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