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いつかのための詩集

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どこかで酒と出会うための詩集。
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#空想

【詩】お盆休みの中腹で

【詩】お盆休みの中腹で

ある晴れた日にあなたと墓標の話
空っぽの隕石に殴られて空想の昏倒
目をまん丸くしないので精いっぱいだった
わたしはあなたと一緒にいた

小さな宇宙の中では
いままさに白色の回転茶色の回転
茶色がお茶色じゃないのはなぜだか分かった
煙のにおいをかいでごらんよ

匙ばかりがめぐっていた
金属のボート、メッキがゴールド
あなたの唇はきっと渇き切る
その歌は歌い切られたことがない

ファミレスには夢がある

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私情をはさんで、この夜を抜けて

ポケットの中に素敵な街がある
ずっと夢に見ていた素敵な街が
両手をそこに雑に突っ込んで今
この時だけの夜の街に恋をする

出穂した稲を星空の下で眺める
あたりでは盆の花火大会も終幕
浴衣の袖に流れてく汗が目尻を
くすぐっては眩しい濃紺の衣装

僕のポケットに銀河の街がある
歩道は少しばかりの砂利と星屑
メロンソーダを片手に揺らして
鈴が鳴る草履を得意気に振って

詩情をはさんでこの街を抜ける
髪飾

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スターバックスを知ったときから

スターバックスを知ったときから

待っていてとまた呟いてしまった
さらさら ほとりにひとりでいた川
呟いてから数時間
買ったあんぱんに仄かな熱が

桜が取り残されている
花はもう散っていた
当たり前の夏至の午後
耳が壊れるよ 少年の声

3時間目の あれ
眠いんだよ 英語の和訳
あんなに
怒らなくってもいいじゃんか ねえ

10分早く出てきてしまった
出欠は あれ無効だろうか
来週も再来週もあるから
いや いっそ履修をやめよか

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一生分のたいくつさ

一生分のたいくつさ

エクアドルのバナナが
売られている店先
おじいちゃんが眠り
ちびっこが踊る

中型バイクで二人乗りする
ペアリング上々な横顔に
脱力して 
また前を向く

やけに新しい銀色のシャッター
開けた日々を思う
たくましい身体がひかり
直立不動の出で立ちで

コンビニから聞こえる
しゃーせー ちわー
しゃーせー ちわー
省略でなく それが言葉で

手元のコメントを眺めて
同一地点の満足と不満足
家に帰って

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砂埃の匂い夕日に香る

砂埃の匂い夕日に香る

つつっと滑る廊下の先
光差す西階段の前
画鋲だらけの掲示板
喋り声がこだまする

はや五時限目
はや五時限目
グラウンドの芝生も乾いた
激しい千の雨粒 どこいった

鉛筆が回る
先生が机に向かう
問われていたのは
動く点P 動く点P

隠れてスマホで問う
おすすめ カフェ 駅近
右の指ばかりが早い
グランドに赤とんぼ舞う

チャイムが鳴る五分前
そっとペンをしまう
音に合わせてけだるさが去る
数人

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【ショートエッセイ+詩】世界は終わらない飴玉か棒

【ショートエッセイ+詩】世界は終わらない飴玉か棒

言葉の森に迷い込んだのは、いつからだろう。

そんなふうに感じる詩の展示を見てきました。横浜美術館で。

その展示自体のことは後日別記事にするとして、今日は冒頭のひとことについてぼんやりと考えながら詩でも書くかな。そんな気分です。

言葉の森は明るいのか、暗いのか。そこに迷い込み歩くのは楽しいのか、つまらないのか…。ここは人によって分かれるところな気がします。

この森は広い、深い森です。
面倒に

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日々ポテトあるいはチップス

日々ポテトあるいはチップス

今はもうない

実家の階段の途中



クソ狭いステップ

に身を

かがめ 今日もまた

何度も読んだコミックに熱中

意識の外に母の声が

宿題とか やれとか

へえ

そうかコレ

6巻はこんな感じだったっけ

主人公のバッシュまがいが

破れ敗れた

シーンを読んでる、いや

見てる

空想の負けを見ながら

狭いスペースで

心地よい広さをとるには

どうしたらよいのか

考えていた

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インディゴ・ブルーのシャツの袖

インディゴ・ブルーのシャツの袖

月が青いな 

いつにも増して

気分のせいか

不意に

ギターが鳴り響く店

僕が視線をやる先には

ちいさな

男がすわる

粗い木目の

椅子に腰掛けて

そいつは昔の

流行歌を流す

一つも調子が外れないことが

調子外れであるような夜

名もなき

スコッチのロックを

指でかきまわす

ぼうっと蒸留酒の

棚を見つめる

名も知らぬあなたの

上気した頬に

見とれている

ひとり

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火星のひとよ、さようなら

愛する人は地球の人で

愛した人は火星の人さ

「さようなら」の口の形が目に浮かぶ

置くとパスする七並べみたいな

意地悪な笑みが似合う

火星の人よ

若葉の頃は不純さまでもがまっすぐで

葉脈の隅々まで

極彩色の血がうごめき駆ける

季節はまあ予想通り去って

君のいない地球で

僕は少し太った

階段をのぼり

階段を のぼり

熱いな

ふうふう ふうふう

ずるずる ずるずる


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モノラル、モノクローム、響く鐘の音

モノラル、モノクローム、響く鐘の音

未だに自分のたましいに

重さがあるなどとは考えられず

今日も腐っているわけなのですが

ああ から ころ 鈍い色の音

教会の端っこ 犬小屋の隅

僕の空想はそこに生きてます

そこに生きてるものを掬ってます

どうやらちいさな生き物のたましいは

揮発しやすいものであるようで

あとに残らない虫のたましい

あとに残らない僕のたましい

モノラル、モノクローム、響く鐘の音

ステレオタイプに

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空想日記第三番夏・紙と煙

空想日記第三番夏・紙と煙

押し入れから引き出してきたノートにはあ

の夏の先が書かれていたような気がして、

どうにも僕は開くのをためらっていた、こ

の紙の先はどこへつながっているのだろう

朝の鳥たちはもう夕方に向かって飛んでい

る、誰も追いつけない時間を超えた速さを

身にまとっている、僕の手には花束、いつ

でも花束。君には両手があり手に取るかど

うかは自由な意思に任せられているような

心持がした、と33ペー

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夕焼け色の雪ふりおちて

夕焼け色の雪ふりおちて

はっとして 右を見たわたしは
夕焼け色の雪ふりおちて いま
きみの 隣で踏み固めるそれを
 通る通るひと頭の上とける それを
どこか忌まわしく 思っていて それを
きみの口から こころが ながれてゆく
あ ああ あああ あ 後 1 0 分 位

(雪がつよくなってきたね 重いや)

ね え 覚え て る ? ときみ がいう
商店 街 に積 も る傘 の高 音
さ かさか さか さかさかさ か
 汗

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ねえ、けむりの傍で眠ろう

ねえ、けむりの傍で眠ろう

あれは強い雨の日だったよ

君はバッグを傘にして走る

ヘッドライトに照らされて

濡れた瞳の欠片をみたよ 

スマホが

君は人混みとぶつかるように

落ちた 落ちた 落ちた

走りきってた 息が先駆け

僕は消え入る霧の虜の木

君が座る すっと

僕が立つ さっと

隣が 隣で 雨が強まってく

手で顔を隠す

開く 瞳を見た 見た

加速していく夜の光が

なんだか今日は蛍に思えて

いつ

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このドキュメントで駆けるんだ

このドキュメントで駆けるんだ

このドキュメントで駆けるんだ

LとRで迷って飛んで

出来上がった文字たちが跳ねる

湧いて止まって淀んで光る

直線と曲線と連なりの連なり

このドキュメントで駆けるんだ

夜は今や劇場となって

暗がりの圧で指に絡まる

溶ける震える握る押す

三歩進んで二歩下がり

のプロセスインターバルに

琥珀色の酒の夢を見るのだ

それは色付きながら澄んでいて

リビングデッドであった いや

デッ

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