マガジンのカバー画像

おはなし

10
運営しているクリエイター

記事一覧

ラザニアとレモンの葛藤3

🍋2話目はここだよ🍋

ラザニア
それは私にとって、この世で1番好きと言っても過言ではない食べ物。
重ねられたミルフィーユ生地と、その間に挟まるミートソース。ファミリアのラザニアにはホワイトソースも混ざっていて、美味しいって言葉じゃ足りないくらい美味しい。

でも、ここのラザニアは、なんだかちょっとピンとこない。
もちろん、美味しいんだけれども、ファミリアのラザニアには敵わない。それに、彼の綺

もっとみる

ラザニアとレモンの葛藤2

🍋1話目はここだよ🍋

突然のデートのお誘いから数日。忙しくしていたため、ファミリアに足を運べずにいた。というのは本当だけど、彼に会うと思うとドキドキで手の震えが止まらないからっていうのが本当の本当の理由。

カードに残された一方的なメッセージを眺める。私が直接彼に返答するしかないってことだこれ。無論、そんなキュートなお誘いを断ることはないけど、なんて返そうか?カードに英語でお返事を書いて渡す

もっとみる
ラザニアとレモンの葛藤

ラザニアとレモンの葛藤

あと2分…。
指が取れるんじゃないかってくらいの勢いで書類を作成する。

あと1分…。
パソコンの画面を静かにスリープモードにして、財布と携帯、日傘を取り出す。

12時30分!
来た。1日で1番幸せで楽しい時間。画面上の数字がちょうど1230を指した時。
隣に座るマリナとスタートダッシュを切る。「お昼いただきます!!!」

私たちは単なるOLではなく、一種の開拓者だ。洗練されたビルよりもお洒落な

もっとみる
わんころ

わんころ

私のわんころはいつも私を無視する
家族の誰かと帰宅すると私を素通りして彼らに飛びつく
尻尾をちんぎれるくらいに振って
これでもかってくらい笑いながら

しばらく家を留守にして久しぶりに帰宅した時に頭を撫でようとしたら手に小さな穴が空いた
普通に泣いた
唸り声をあげるわんころは諦めて絆創膏を貼った

わんころは家族と喧嘩しているといつも怒って止めに入る
怒られるのはいつも私
他の誰でもなく、私
きっ

もっとみる
結局私は

結局私は

後味の悪いジョークでも聞かされたような気分だった
内臓の端っこの方がうずいて、吐き気が込み上げてくる

身体中の細胞が、新鮮な空気が必要だと訴えている
髪に触れようとする腕を払って飛び出した

薄気味悪い霧の中ペダルを踏む
力一杯握りしめたハンドルは汗のせいか雨のせいか濡れていた

こんなのって全然新鮮じゃない
じっとりと肌にへばりついた服が気持ち悪さを増す

かろうじて見える木と木の間をぬっては

もっとみる
とある一室で

とある一室で

窓の外の空を見上げた
青くて、雲がぷかぷかと浮かんでいた

青紫の歯形をなぞる指
天井には男と女、シワのよったシーツ

部屋いっぱいに広がるタバコの匂い
混じり合う煙と新しい匂い

眩しくて影に隠れたけど
もともと立派な背中を神々しくするだけだった

手を伸ばして思わず背骨をなぞった
一瞬筋肉を寄せ、心地よい顔が覗く

「おはよう」
「おはよう」

微笑みは私だけのものじゃなくて
口づけだってすぐ

もっとみる
終点〇〇

終点〇〇

こうしてコンパートメントの一角で揺られ外を眺めていると、その景色とは別に、たくさんの言葉が浮かぶのです。

頭の中でぐるぐると色んな考えが回ってる時は、どうしようもなく悲しい時でもあります。

考えるなと人によく言われるのですが、考えたくないのに浮かんできてしまうのです。

悲しい曲をなぜ聞くんだと言われるのですが、わかりません。泣きたい気分だからでしょうか。

人の顔色を伺って生きるのは疲れます

もっとみる

ヨク

「これで」
今日差し出したのはラップ
前回はタオルだった
君の手首のアザに気づく人も増えてきたし
面倒になる前に次、探さないとなあ

俺らは一年前、夏の始まりに出会った
まだ6月だというのに
じっとりとした空気に舐められた肌を
照りつける太陽が焼いていた
そんな暑さの中現れた後輩ちゃん
真っ黒な髪と瞳が清楚さを物語っていた
終電2日連続で逃した俺とは住むところが違う
きっと真面目で
クラブなんて行

もっとみる
薔薇

薔薇

明日、空いてる?

怒りなのか欲なのかわからない

ただ、君を求める僕がいるのは事実

愛なのか独占欲かはわからない

でも君が僕を求めていないことは知ってる

壊れるくらい求めて欲しい

水が漏れるまで、溢れるまで

泡でできた世界に一つの花瓶を

わかって欲しい、心から

君を引き立てるためだけの僕を

溺れている僕を

ダイヤ、ガラス、陶器からプラスチック

沢山の花瓶を使った君は

僕につ

もっとみる
林檎

林檎

眩くて目に入れられぬその身体は
真っ赤に燃える
太陽のように熱い

林檎のように赤い唇から吹く風は
雪のように冷たい
その熱を移された者は
冷たさを求めるがゆえ
凍りついてゆく

細い氷柱のような指は
足に触れ、腹に触れ、胸に触れる
火照る身体を凍らせるように
首元へと滑らせる
顎を伝い頬に触れた時
熟した林檎を食せる
艶やかで降りはじめの雪のように柔らかであるが
実は溶けてゆく氷を口に含むかのよ

もっとみる