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結局私は

後味の悪いジョークでも聞かされたような気分だった
内臓の端っこの方がうずいて、吐き気が込み上げてくる

身体中の細胞が、新鮮な空気が必要だと訴えている
髪に触れようとする腕を払って飛び出した

薄気味悪い霧の中ペダルを踏む
力一杯握りしめたハンドルは汗のせいか雨のせいか濡れていた

こんなのって全然新鮮じゃない
じっとりと肌にへばりついた服が気持ち悪さを増す

かろうじて見える木と木の間をぬってはしる
急いで吐き出して急いで吸い込むのに生暖かい濡れた空気に変わりはない

途端にあたりが明るくなって、気づけば湖が広がっていた
その冷たくて汚れのかけらも見つからない液体に触れようと手を伸ばした

確かに、確かに触れているはずなのに
感覚がない
冷たさも濡れた感覚も

さっきまで握りしめていたハンドルも、乗っていた自転車もいつのまにか消えていた
身体と感覚と

ああ、そうだった
何度試したって私はあの館から出られない
結局私は

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