#翻訳
山の記憶、「山」の記憶
今回は、川端康成の『山の音』の読書感想文です。この作品については「ひとりで聞く音」でも書いたことがあります。
◆山と「山」
山は山ではないのに山としてまかり通っている。
山は山とぜんぜん似ていないのに山としてまかり通っている。
体感しやすいように書き換えると以下のようになります。
「山」は山ではないのに山としてまかり通っている。
「山」は山とぜんぜん似ていないのに山としてまかり通って
わける、はかる、わかる
本記事に収録した「同一視する「自由」、同一視する「不自由」」と「「鏡・時計・文字」という迷路」は、それぞれ加筆をして「鏡、時計、文字」というタイトルで新たな記事にしました。この二つの文章は以下のリンク先でお読みください。ご面倒をおかけします。申し訳ありません。(2024/02/27記)
*
今回の記事は、十部構成です。それぞれの文章は独立したものです。
どの文章も愛着のあるも
音の名前、文字の名前、捨てられた名前たち
今回は、名前を付ける行為について、私の思うことをお話しします。最後に掌編小説も載せます。
◆音の名前
ウラジーミル・ナボコフは、Lに誘惑され取り憑かれた人のように感じられます。Lolita という名前より、Lに取り憑かれている気がします。あの小説の冒頭のように、 l をばらばらしているからです。
つまり、Lolita を解(ほど)き、ばらばらにするのです。名前を身体の比喩と見なすとすれば
【レトリック詞集】人間の「人間もどき」化、「人間もどき」の人間化
今回は、「【小話集】似ている、そっくり、同じ」の続編です。
【レトリック詞1】賞賛、嫉妬、恐怖
人には、ヒト以外の生き物のすることで、笑って済ませることと笑って済まされないことがある。人が笑うのはプライドがあるせい。
人には、機械のすることで、許せることと許せないことがある。人が許さないのはプライドがあるせい。
*
AIに対し、人はきわめて人間的に反応する。ほほ笑む、嫉妬
音読・黙読・速読(その3)
シリーズ「音読・黙読・速読」の最終回です。
・「音読・黙読・速読(その1)」
・「音読・黙読・速読(その2)」
◆センテンスが長くて読みにくくて音読しにくいけど素晴らしい文章
まず、前回に取りあげた文章を再び引用します。なお、あえてお読みになるには及びません。ざっと目をとおすだけでかまいません。
(Ⅰ)
(Ⅱ)
*節のある竹のような文章
上で見た、井上究一郎訳によるマルセル・プル
LRT―舌の位置をめぐる話(薄っぺらいもの・03)
シリーズ「薄っぺらいもの」の三回目です。前回に引きつづき、ぺらぺらして薄っぺらいけどしたたかな存在である――「伝えたい」=「(相手と)つながりたい」というヒトの欲求と欲望(私は欲求と欲望を区別したことがないのでこのように表記します)においてきわめて大切な役割を果たしている「器官=象徴」――舌についての話をします。
*「薄っぺらいもの・01」
*「ぺらぺら(薄っぺらいもの・02)」
今回は、