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言葉の光ページ

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皆様の執筆された心に留めたいnote記事を集めさせて頂いております。 素晴らしい作品に感謝です。
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#エッセイ

【エッセイ】吉村萬壱「ガザに思う」

【エッセイ】吉村萬壱「ガザに思う」

 小学生の時、団地の社宅に住んでいた。私は詰まらない悪さをしては、母からしょっちゅう叩かれたり飯を抜かれたりする子供だった。団地の地下の真っ暗な物置に私を閉じ込め、扉の向こうから「ネズミに齧られるぞ!」と脅すような母だった。太い二の腕と巨大な脹脛を持つ母に太腿や頬を捻り上げられると、痛さの余り絶叫したが誰も助けてはくれず、翌朝同じ棟の小母ちゃんが、登校する私をベランダから哀れむような目で見送ってい

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大腸内視鏡の腸管洗浄剤が苦手な人の救世主!

大腸内視鏡の腸管洗浄剤が苦手な人の救世主!

ある日、お尻に違和感があってトイレに行くと、出血していた。しかも鮮血。

鮮血ってヤバい感すごいですよね。鮮血じゃない出血もヤバいけど。

私は痔主なんです。不労所得チャリンチャリンの地主ではなくて痔主。ちなみにイボの方。

そこからの出血かなあと思ったけど念のために受診したら、「skin tag、つまり見張りイボですね」と言われた。

skin tag は、なんか響きがシュッとしてカッコいいのに

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女体になりたいわけではないけれど。

女体になりたいわけではないけれど。

そう、性転換したいわけではないけれど、もっと言うならば女性として生まれたかったわけではないけれど、私は女性という生き物に憧れる。

いつからかしら、この心にそれが宿ったのは。もう記憶にもないけれど、これが変なものと自己嫌悪することはありません。むしろ「個性」というありがたい言葉に助けられているのかもしれません。

私の身体は間違いなく男性でありながら、女性らしくなってみたいと昔から憧れが募るばかり

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[#料理はたのしい] オッチャンの普通ご飯

[#料理はたのしい] オッチャンの普通ご飯

私は今年46歳の家事おじさんです。掃除、洗濯、庭の手入れなど、何でも結構楽しんでやっています。特に好きなのは昼と夜に料理を作ることで、妻ちゃんがそれをおいしいおいしいと言って食べてくれることにとても喜びを感じます。料理が好きと言うとよくあるのが、凝った料理を作るのが好きという趣味性が強いパターンですが、私はそういうタイプではなく、毎日の当たり前の事として普通の料理を作るのが好きというパターンです。

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[#今こんな気分] ゲゲゲの杉太郎 第2話 マママのマイ・マザー

[#今こんな気分] ゲゲゲの杉太郎 第2話 マママのマイ・マザー

第1話はこちらです。2話にうまくつながるように、少し修正しました。

何度か他の漫画にも描いているように、我々は子供のいない夫婦です。その主な理由は、妻が家庭を持つことにプラスのイメージを持てないからです。そしてさらにその理由は、妻にとって家庭は苦しみの多い場所だったからです。

私自身は妻の幸せを最優先に考えているので、自分が子供を持てないことに特に悲しみや後悔は感じません。全ての被害者は妻自身

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孤独との距離感

孤独との距離感

 古いCDを、ふと思い出し、かけてみた。
 クスコというドイツのユニットの、幻想的なインストゥルメンタルの楽曲とか、バッハの名曲集、エンヤなど。どれも20代~30代のころに聴いていたアルバムで、なかには20年以上前のものもある。
 当時は、孤独だった。

 ひさしぶりに耳から流れ込んでくるそれらの音は、単に懐かしいというだけでなく、当時の空気感のようなものをまとっていて、私の領域のしばらく触れてい

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父親にお前の精神不調は生理のせいだと言われた

父親にお前の精神不調は生理のせいだと言われた

「お前が暴れて(夫の名前)さんに迷惑をかけたり、時々(精神的に)おかしくなるのはたぶん生理とかそういう(子宮関連の不調)のの、せいなんじゃないか」ぼかすような言葉で実の父親に言われた。私はそれを無視した。

生理のせいにするということは、すなわち「(男の)俺には理解できない何かが娘に起こっているのだ」という理由づけだと思う。父親は、自分の中で絞り出した正当化する答えを言うことで「自分の子育ては間違

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顔からお尻の穴まで。

私は私のすべてを愛した。
もう心と身体は喧嘩しないわ。
顔からお尻の穴まで知っている。
私はこういう人間なんだと。

三代欲求は欠け、歪を好み、誰にも理解されずとも鏡と語り明かしたわ。
私は私の好きなところを見つけた。
特別輝いているわけでも、特殊なわけでもないけれど、私だけがそれを知り得るのよ。
こんな素敵なことはないでしょ。

バスルーム。
熱いお湯に身を沈めながら私は想う。
絵野めぐみという

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完璧主義者は呪い

完璧主義者は呪い

 私、もうとっくに良い人やめているはずなのに特に月曜日の朝は自分が良い人じゃないことを自分で責めがちだ。月曜日の朝はあらゆる"はじまり"の代名詞だから、そこに満たない自分の粗を探しやすいのだろうか。

 昔の私は99点の自分を許すことができなかった。100点取って当たり前で、いちばんを手にして初めて自分に価値が生まれる。100点取らないとお前はいらない、など直接的に言われたわけではないのに、自分で

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「頭で知る」よりも「心で知る」を大切にしたい

「頭で知る」よりも「心で知る」を大切にしたい

 先週10月11日(日)のオンライン礼拝で、印象的なお話がありました。
 横浜国際バプテスト教会(YIBC)の礼拝です。その日はいつものベン牧師ではなく、ゲストスピーカーのDueker Davidさんがメッセージ(説教)を担当されていました。

↓YIBCのオンライン礼拝(バックナンバーも)はこちらでご覧になれます。

 メッセージの後半で、
 聖書の言葉やイエス・キリストについて、頭で知っている

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パワハラ野郎にはたらく自由を奪われた話

パワハラ野郎にはたらく自由を奪われた話

4年前、前職の出版社で倒れた。月初めの月曜日にはいつも朝礼があった。急に頭がふらっとして「やば、立っていられないかも」と思った瞬間、もう遅かった。床に突っ伏した私は意識はあるが、喋れない。

「大丈夫?」「動かなくていいからね」と話しかけてくるまわりの同僚たち。なんだ、お前ら普段は怒鳴り合っているくせに。こういうときはやさしく話しかけてくるんだな。30人もいないフロアで人がひとり倒れたというのに、

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