文學界

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    〈対談〉田中慎弥×阿部公彦       「私小説じゃなきゃダメなんだ」   

    西村賢太はなぜ私小説にこだわったのか? なぜその作品に惹き込まれるのか? 親交のあった作家と文芸評論家が作家の謎、作品の魅力を語り合った。 構成●吉田大助 (発売中の文學界7月号、特集「西村賢太 私小説になった男」より、田中慎弥氏と阿部公彦氏による対談「私小説じゃなきゃダメなんだ」の冒頭です) ■世界が変わった 阿部 西村さんが亡くなられたことは、当日(二月五日)の夕方に、スマホのニュースサイトが報じた記事を通して知りました。最初はとにかくびっくりするばかりで、その後も

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      • You Can’t Always Get What You Want―青山真治追悼/阿部和重

         青山さんと最初に会った場所は『Helpless』の試写会場だった気がする。同作の初公開日は一九九六年七月二七日とされているから、その数カ月前、四月か五月あたりか。だとすると、わたしの年齢は二七歳、監督は三一歳。鑑賞後は数人で会食という流れだった。  ひきあわせてくれたのは、アテネ·フランセ文化センターのキュレーターや安井豊の筆名で批評活動をされていた当時の安井豊作さんだった――アテネの映画上映によく通っていたわたしは、九四年のデビュー直後から『カイエ·デュ·シネマ·ジャポ

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        • 「ICO」 上田岳弘

          発売中の「文學界」7月号より上田岳弘さんの短編「ICO」の冒頭をお届けします。  ICOは孤独である。  と同時に孤独ではない。  なぜなら――  *  ICOはiPhone13の前で踊っている。  なぜなら――、  なぜなら彼女はTikTokerだから。いや正確に言えば、彼女はTikTokerでもある、というべきか。あくまでそれは彼女を説明するための一つの要素に過ぎないのだから。  しかし取り急ぎ今彼女について説明するのなら、TikTokerであるとするのが

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          • 西村賢太氏墓参の記

            『雨滴は続く』の担当編集者による、西村賢太氏の墓参りの記を写真と共にお届けします。 5月13日、七尾の西光寺を訪ねた。前日に見本が出来上がったばかりの単行本『雨滴は続く』を西村さんの墓前に供えに来たのだ。 七尾駅から西光寺まで、15分ほどの道のりを歩く。西村さんがたびたび訪問したという北國新聞七尾支社の玄関を眺め、西村作品ですっかり馴染みの「一本杉通り」を進む。通りから小さな路地に入ったその先に目的地はあった。山門をくぐって左手に広がる墓地の、最も手前にお墓はあった。

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            • 文學界7月号 目次

              【特集】西村賢太 私小説になった男 未完の長篇『雨滴は続く』を遺し五十四歳で世を去った「最後の私小説書き」西村賢太(1967-2022)を対談、回想、手記、名言集で追悼。あなたはまだ本当の西村賢太を知らない。 〈対談〉田中慎弥×阿部公彦「私小説じゃなきゃダメなんだ」 西村氏をもっともよく知る古書店主のインタビュー、北町貫多の“思い人”が綴る手記による「私だけが知る西村賢太」 〈回想〉「西村君との三十有余年」荒川義雄(「朝日書林」店主) 〈手記〉「親愛なる西村さんへ」葛山久

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              • 『雨滴は続く』 西村賢太 4

                「文學界」で連載され、最終回執筆中に著者が急逝したために未完となった、西村賢太さんの『雨滴は続く』(文藝春秋刊、488頁、定価2200円)が単行本にまとまりました。  発売を記念して、1章から4章までを順に無料公開いたします。 四  年が改まって二〇〇五年となっても、貫多はまだ『群青』誌に提出する三十枚ものに手を付ける気にはなれなかった。  一つには、すでにシノプシスは出来上がっているのだから、あとはそれに沿っていつだって書けるなぞ云う、ヘンに余裕をこいている部分もあっ

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                • 『雨滴は続く』 西村賢太 3

                  「文學界」で連載され、最終回執筆中に著者が急逝したために未完となった、西村賢太さんの『雨滴は続く』(文藝春秋刊、488頁、定価2200円)が単行本にまとまりました。  発売を記念して、1章から4章までを順に無料公開いたします。 三  しかしながら、とあれ千載一遇と云うべき好機―それはあくまでも藤澤淸造の〝歿後弟子〟たる資格を得るに当たっての好機であるが―を掴んだかたちの貫多は、まずは件の短篇のネタ繰りに没入した。  誰であったか昔の作家で、自らの人生の歩みを題材とすれば

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                  • 『雨滴は続く』 西村賢太 2

                    「文學界」で連載され、最終回執筆中に著者が急逝したために未完となった、西村賢太さんの『雨滴は続く』(文藝春秋刊、488頁、定価2200円)が単行本にまとまりました。  発売を記念して、1章から4章までを順に無料公開いたします。 二  だから購談社の、『群青』編輯者との約束の当日を迎えたとき、貫多の得意な気分は弥が上にも絶頂の昂ぶりをみせていた。  午後二時過ぎになって宿を出た、その足の運びはいつになく軽ろやかであり、姿勢も平生の俯向き加減のものとは大きく異なる、まるで意

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                    • 『雨滴は続く』 西村賢太 1

                      「文學界」で連載され、最終回執筆中に著者が急逝したために未完となった、西村賢太さんの『雨滴は続く』(文藝春秋刊、488頁、定価2200円)が単行本にまとまりました。 後年の西村さんのキャラクターは広く知られていますが、本作に描かれているのは、それが確立される以前、小説家としてデビューする前後の北町貫多=西村賢太の姿。何者かになろうともがく貫多の、言わば”遅すぎた青春”篇です。  発売を記念して、1章から4章までを順に無料公開いたします。 一  このところの北町貫多は、甚だ

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                      • 小説を語る声は誰のものなのか      ―橋本治「桃尻娘」論  千木良悠子

                        発売中の「文學界」6月号より千木良悠子さんの批評「小説を語る声は誰のものなのか―橋本治「桃尻娘」論」の冒頭をお届けします。 1、愛は理屈じゃない、なんてことはない  私の一番好きな小説は「桃尻娘サーガ全6部」(1978―1990年、以下「桃尻娘」)だ。文学の傑作は世界に星の数ほどあるにしても、こればっかりは特別だから仕方ない。中学1年とかそんな時期に出会って以来、約30年も繰り返し読んできた。今もシリーズ6冊のうちのどれかを開いて数行読むだけで脱力して笑ってしまうし、思わ

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                        • ギフテッド 鈴木涼美

                          発売中の「文學界6月号」より鈴木涼美さんの初中編「ギフテッド」の冒頭をお届けします。   歓楽街とコリアンタウンを隔てる道路に面した建物の裏手に回り、駐車場の奥にある重たい扉を開けて、その扉のすぐ横の内階段を三階まで登る。階段を登り切ると再び廊下に続く重たい扉があり、そこに体重をかけて一定以上の幅まで開いたときに鳴る金属の軋むような音を必ず鳴らして、ゆっくり閉まりきる前に、今度は自分の部屋のドアの錠に鍵を差し込み左側に回して鍵の開く音を聞く。夜ごと、この二つの音を聞いて帰っ

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                          • AI研究者・三宅陽一郎インタビュー   「AI研究は世界と知能を再構築する」   

                            文學界2022年2月号の特集「AIと文学の未来」から、山本貴光さん&吉川浩満さんによる三宅陽一郎さんのインタビューの一部を抜粋して掲載します。 三宅陽一郎 みやけ・よういちろう●1975年生まれ。ゲームAI開発者。京都大学で数学を専攻、大阪大学大学院物理学修士課程、東京大学大学院工学系研究科博士課程を経て、AI研究者に。『人工知能が「生命」になるとき』など著書多数。 ■「知能」は定義されていない 山本 この特集では「AIと文学の未来」をテーマに、吉川浩満君と私で三人の方

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                            • 文學界6月号(5月8日発売)目次

                              文學界6月号、5月8日発売です。 【創作】 鈴木涼美「ギフテッド」130枚 歓楽街に住む娘の部屋に、「詩を書きたい」とやってきた死にゆく母。『「AV女優」の社会学』著者による渾身の初中編! 磯﨑憲一郎「日本蒙昧前史 第二部」 初来日したパンダの公開を上野動物園の飼育課長が終えた翌年、美男美女の俳優同士が結婚した―― 青野暦「夢と灰」(文學界新人賞受賞第一作) 絵未、眞澄、千秋、伊沢。ことばですれ違い、ことばでつながりあう、若者たちの群像劇 中野沙羅「鳥たちは遠くで騒ぐ

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                              • 「文學界note」開設のお知らせ

                                月刊文芸誌「文學界」です。このたびnoteを始めます。 「文學界」は小説、批評、対談や座談会などを掲載していますが、月刊誌なので書店で手にとっていただける期間は限られています。より多くの読者に「文學界」の内容を知っていただきたく、過去に話題になった記事から最新号の紹介まで、こちらでいろいろと読めるようにしていきたいと思います。 どうぞよろしくお願いいたします。 「文學界」編集部

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                                • 蓮實重彦・青山真治・阿部和重「映画三狂人、アメリカ映画を大いに語る」 (文學界2015年5月号掲載)

                                   映画監督・小説家の青山真治さんが3月21日、逝去されました。文學界にたびたび登場していただき、会うたびにともに楽しい時間を過ごした青山さんがいなくなってしまった淋しさは、はかりしれません。  哀悼の意をこめて、2015年の映画特集号の鼎談を、ご遺族、蓮實さん、阿部さんのご了承をいただいてここに全文掲載します。  米軍の英雄を描く反動的な映画か、PTSDを扱う反戦映画か? クリント・イーストウッド監督の問題作「アメリカン・スナイパー」の「とらえどころのなさ」から映画が今日直

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