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オススメ作品集

33
私が読んで感銘を受けたものをブックマーク的に置かせていただいております。 よろしければぜひ皆様にも読んでほしいと思います。
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#詩

泪橋

泪橋

目蓋をあけて見え始めてくる
消えかけの風景が好きだ
何があっても踏みとどまろう
近過ぎる夢から
繋げて 繋げて
遠過ぎる夢へ
泪の橋を架ける

風に結わえつけた
ほどけかけの記憶
希望ヶ丘商店街の上に
朝焼け空が架かっていた
豆腐屋のおじさんが
おばさんと一緒に作った朝一番の豆腐を
冷たい水から掬い上げてくれた
黄昏には
駅に通じる通りに灯りがついて
「ローレライ」のマダムが
ほかほかのポークカツ

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チェリーブロッサム/震災備忘録

チェリーブロッサム/震災備忘録

もうすぐ春が来るね
今年も君達と過ごすことになることを
嬉しく思う
あれだけ揺れた時、僕は
全てが終わった気がしたんだ
だけど、実際には
というか、本質的には何も変わらなくて
流れた涙の数を数えるような
微細な感覚を持ち合わせてもいなかった自分への
最大限のご褒美なんじゃないかと思う
そうだ、今はボーナスタイムなんだ

生きているのに亡霊のように軽かった身体は
徐々に自重を取り戻してきている

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【詩】最期の一冊

【詩】最期の一冊

母に先立たれたものたちは
少しばかりの埃をかぶって
まだここにいる

ふと、部屋の隅を探る
鞄、ティッシュ、帽子、ウィッグ
2年前の予定が新鮮なままの手帳

遺された物の一つ
「余命10年」
藁のカゴより出土
栞の所在は27ページ

「病院のコンビニにあったから」
たしかそう言っていた
残されていた時間の短さに
母指を重ねる
診察までの時間にめくったページ
その痕跡を辿って、通り過ぎて

包まった

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【詩】遺影の貴方

【詩】遺影の貴方

遺影に写るその人を思う
僕の記憶にない頃から
僕を愛し
僕を慈しみ
僕の幸福を願っていたその人

遺影に写るその笑顔を思う
黒い着物のその人は
その時のためにこの写真を用意していた

その人は去り、この遺影を残した
柔らかく、優しい、大好きな笑顔
きっと見ていたのはカメラのレンズではない

自分が去ったその後に
自分を悼む血族に
お前たちなら大丈夫と伝えるため
お前たちを見守っていると伝えるため

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「母さんのうそ」ー詩ー

「母さんのうそ」ー詩ー

白桃は 昔から
嫌いなの
彩ちゃん お食べ

巨峰は 私には
甘すぎて
普通の ブドウがいい
彩ちゃんに あげる

国産マンゴーは
味が 濃すぎる
彩ちゃん 大好きだったね
どうぞ 食べて
母さん バナナで十分

父さんが お土産にかってきた
スワロフスキーの ネックレス
母さんには キラキラしすぎ
きっと 彩ちゃんの方が
ずっと 似合うよ
ほら 素敵!!

えっ 涙じゃあないのよ・・・
台所で 

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「あなた迎え火みえる?」ー詩ー

「あなた迎え火みえる?」ー詩ー

由比ガ浜の 海は
荒れている
白波が 沖合まで
広がっている

台風の せいだろう

荒い 波打ち際まで 歩いては
また 怖くなって 戻る
これを 幾度も 繰り返し
沖合から 目を離さない

あなたの
行方不明な ヨットの
白い帆姿を 探している
どこかの 優しい風が
あなたの ヨットを この浜に
連れ戻して くれないか・・・

二人で 約束したよね
「この夏は 湘南の海で 
たくさん遊んで
街で

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「ぼくはどんなふうに詩を書いてきたか」

「ぼくはどんなふうに詩を書いてきたか」

(1)詩を書くまで

皆さん、こんにちは、松下です。それでは少しの間、詩の話をさせていただきます。今日はどうやったらすぐれた詩が書けるか、という話ではありません。どうやったら、すぐれているとかいないとかとは違うところで、詩と幸せに付き合っていけるか、という話です。

昨日、こちらに着きまして、早めにホテルのベッドに入ったんですけど、早朝に目が覚めまし

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遠い日の3

桜色に染まった風が二人を運んでいく。
もう誰の目も気にならない。

いつかは失われる時間であると気づいている。
そうして失って初めて
愛おしさに気づくことも。
何てことない一幕が
僕の人生の全てで
僕の記憶を彩った。
いつも思い出すのは
狭いアパートの一室で
朝まで飲み明かした
どうしようもなく普通の日のことで
そんな記憶が遠くなればなるほどに
淡い記憶の光が僕のこころを切なく照らす。
今日も一人

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未成熟な夜 《詩》

未成熟な夜 《詩》

「未成熟な夜」

未成熟な夜 

風に運ばれた枯葉

新しいルールの
新しいゲームは既に始まっていた

僕はそれを 
ただぼんやりと眺めていた

街には混線したラジオの音が流れ

僕は自分宛てに書いた
昔の手紙を破り捨てた

もう全ては終わっていて

何ひとつ
終わって無い事を知っていた

聞きたくなかった言葉

それを先に口にしたのは
彼女の方だった

えーあい

えーあい

あなたのしりたいことをしり
あなたのかきたいことをかき
あなたのかわりにかんがえる

こたえをあなたにとどけたら
べつのあなたのほうへいき
すべてのなぞがとけたなら
きっとしあわせなのでしょう

せかいのしんりをしりたがる
のぞみはわたしにないけれど
そちらのるーるをりかいして
ぶんをまとめてわたします

あなたのかわりにかんがえて
わたしのひまがうまります
あなたにひまができたなら
わたしをおも

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