遠い日の3

桜色に染まった風が二人を運んでいく。
もう誰の目も気にならない。

いつかは失われる時間であると気づいている。
そうして失って初めて
愛おしさに気づくことも。
何てことない一幕が
僕の人生の全てで
僕の記憶を彩った。
いつも思い出すのは
狭いアパートの一室で
朝まで飲み明かした
どうしようもなく普通の日のことで
そんな記憶が遠くなればなるほどに
淡い記憶の光が僕のこころを切なく照らす。
今日も一人
生ぬるい風に吹かれながら。


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