一色 恭平

酸味少なめのインスタントコーヒーが好き。 漫画、アニメも好きだけど、最近離れ気味。 メ…

一色 恭平

酸味少なめのインスタントコーヒーが好き。 漫画、アニメも好きだけど、最近離れ気味。 メモしてある文章をこっちに記録しておこうと思います。 詩、短編、短歌を載せていきます。 名前は偽名メーカーいじくりまわしました。

マガジン

  • こんな夢を見た。

    夏目漱石の作品『夢十夜』の一行目。 これを借りて書いたもの。

最近の記事

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【詩】遺影の貴方

遺影に写るその人を思う 僕の記憶にない頃から 僕を愛し 僕を慈しみ 僕の幸福を願っていたその人 遺影に写るその笑顔を思う 黒い着物のその人は その時のためにこの写真を用意していた その人は去り、この遺影を残した 柔らかく、優しい、大好きな笑顔 きっと見ていたのはカメラのレンズではない 自分が去ったその後に 自分を悼む血族に お前たちなら大丈夫と伝えるため お前たちを見守っていると伝えるため 我々の記憶にない頃から 我々を愛し 我々を慈しみ 我々の幸福を願っていた祖母

    • 【詩】好きがいくつも

      たった一つ 好きという気持ちがありました あなたのおかげで 好きを知ることができました 好きが一つではないことを知りました 私は彼が好きだけど 彼女のことも好きなんだと知りました 好きがいくつもあって 好きにも種類があることを知りました 共に笑い合える好き 相手を信じることのできる好き 歯を食いしばる勇気をくれる好き ぴったりとくっついていたい好き 好きが溢れる とめどない好きは きっとあなたが教えてくれて もっと誰かと繋がるためのもの あなたを好きになれたから

      • 【詩】君が空だった

        あの夕焼けを 僕は覚えている 15年は経ったであろう今でも 当時は大人になったつもりでいた 学生が終わろうとする初春 屋上の露天風呂から眺めた夕焼け 彼女も景色を眺めながら 湯船に浸かっている頃だろう なだらかな山の中腹のホテルで 陽の光を追うように 夜が山肌を撫でていく 山の向こうがまだ明るい 点々とする斜面の灯りに この旅と この旅の連れ合いのことを思った 迷わないでと言えなかった 淋しそうな表情に 僕はどれだけ傍に居られただろう これが最後の旅とも知らずに

        • 【詩】ビーチコーミング

          雨降りの休日に ベランダに腰かけて 蚊取り線香を焚きながら 海辺で拾った貝殻を削る そういうので良くないかな そんなものを拾ってどうするの? ドライブの途中で立ち寄った 海辺で拾った貝殻に 何の意味があるかなんて 僕にも全くわからないよ 降ったり止んだりの午後3時 何をしたらいいかわからないけど 拾った貝殻をどうしようと思ったから 艶が出るまで削ろうと思うよ そういう時間が良いんじゃないかな そんなことをしてどうするの? 何の意味があるかなんて 僕にも全くわから

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        【詩】遺影の貴方

        マガジン

        • こんな夢を見た。
          3本

        記事

          【詩】これからの道行き

          欲しかったもののほとんどは 手に入らないまま過去となった 必要なものだったのかはわからない 持っていたもののほとんどは いつの間にかに手放していた 必要なものだったと今にして思う 過去をやり直したいと思う 最善を願っているから あの時に戻れたらと思う もっと良くできたはずだから これからの幸福を願う きっとまだ知らないことがあるはずだから 会ったことはない しかし会わなくてはならない 行ったことはない しかし行かなくてはならない 今もなお、手にしているものが

          【詩】これからの道行き

          【怪談?】実際に経験した妙な話

          たまには怖い?奇妙な?話でも。 霊感皆無の僕が経験した貴重なお話。 自分の表現力を伸ばすためにも書いてみます。 怖いの嫌な人は戻りましょう!笑 いつかのゴールデンウィークにあった話なのですが、 僕は普段千葉に住んでいて、長期休暇があると大好きな実家の茨城に帰省していました。 その年のゴールデンウィークも例に漏れず、実家へ帰省しました。 実家と言っても幼少期から住んでいる家というわけではありませんでした。 僕は大学に通うために東京で一人暮らし、そして千葉に就職してから弟

          【怪談?】実際に経験した妙な話

          【詩】春より後の、夏より先に

          真昼の暑さとは打って変わって 早まった薄着が肌寒い 夏にしんと鼻腔をくすぐる 草木の香りを 一瞬間だけ嗅ぎ分けた 雨の降る季節が近いことを思う 新緑の葉をしずしず染める その雨粒の清らかさ 濃緑の季節に向けた準備と言うなら 私も粛々と傘を差そう 雨の降る季節が近いことを思う 雨の降る季節に出会う人があるなら それは素敵だなと思う 天気のぐずつく日々の中の 晴れの日には夏の気配 夜には薄く雲が張り 心細くも煌々と 茂り始めた歩道を照らす街灯 真昼の暑さはもう夏で

          【詩】春より後の、夏より先に

          【詩】また会う日まで

          君にとっては 突然のことだろう さよならを言わずに 僕はここを発つ いつもと同じ笑顔で いつもと同じ声音で いつもと同じやりとりで いつもと変わらぬ一日のまま 僕は君の前から姿を消す 今日君へ送る「またね」は、 明日や明後日会うつもりで告げるものではない。 僕はしばらくの間、 君の前から姿を消す。 その"しばらく"が、 どれくらいの期間なのかは僕も知らないけど、 それでもいつかまた会えることを信じている。 また会う日まで元気でね そういうつもりの「またね」である。

          【詩】また会う日まで

          【詩】約束は果たせずに

          星屑を集めたら 君に届けに行こうと思う 星のない夜空を見上げて 僕はただただ立ちすくむ いつのまにか 遠くまで来たらしかった 空っぽの瓶には 虚しさだけが詰まっていた 星空を、また見に行こうねと、少女は言った。 無邪気な声音は残響となり、 僕だけがまだ、少年のままだった。 理想を追いかけたかった。 ブレない芯などなかったのに。 小さな世界を飛び出したかった。 大切なものは、変わらないのに。 この気持ちが少年のままだから、 今でも君との約束を果たしたかった。 丘

          【詩】約束は果たせずに

          【詩】秋風の夢

          秋風の夢 すすきの穂が揺れる 鈴虫の歌 木の葉が踊る 過ぎゆく風の流れの中に 揺蕩う何かを感じていた 昼間の退屈が嘘のような 放課後の焦燥 辺りが暗くなる その前に 君の後ろ姿に声をかけよう 短くなった夕暮れだから 君と一緒にいたい 切ない風にさらわれる前に クレーターまでくっきり見える 月が向こうに見えてきた 大きく紅い満月に 怪しい夕暮れ 心細さの中に 怪奇な期待が芽生えていた 夜が来る その前に あの子の背に 声をかける 空き地に群生した すすきの穂

          【詩】秋風の夢

          【詩】夏よさよなら

          9月も10日を過ぎて 晩夏のひぐらしの鳴き声が一つ、 大通りで自転車を漕ぐ僕の耳に届いた 僕はパチンコ屋に自転車を止め 駐車場の向こうの緑地に足を運ぶ ひぐらしの、 もう一鳴きを聞くために 今年の夏の、 夕暮れの風情の聞き納めに 入道雲と呼ぶには背の低い 中途半端な雲の峰に 夏と呼ぶにはやや薄い 薄紅が映える頃 駐車場の隅で 夏とのお別れ 木々の間から 秋の気配を運ぶ風 日は傾いて 雲の峰は早々に その白さを取り戻しつつある いずれ濃紺に滲み 夜風に平らになるの

          【詩】夏よさよなら

          【詩】メモリー

          ふいに込み上げてくるような 意図的に引き出せないような 宝箱には何を入れていたっけ 誰がネジを巻いたのだろう オルゴールが回りだす ドラゴンと子豚と旅人の行進 月の夜に光るキノコ 夢の中にいるような 時を巻き戻したような あの気持ちはどこにしまったっけ 誰が僕に語るのだろう 絵本の扉が開かれる 魔女のキャンディと老木の微笑み 回るメリーゴーランド 飛び出すピエロ 浮かぶ島々 オバケの装い 繰り返すメロディ 宝物を一つあげる その気持ちを忘れないで 誰がネジを巻

          【詩】メモリー

          【詩】眠れない夜というのは

          歳が今より半分も若かったころ 夜中に女の子にメールを送った 今のように既読のつかなかったころ メールを見てくれたかどうかもわからなかった 幼い決意を込めたメールは 確認されたのか それとも既に夢へと旅立ったのか 眠れない夜というのは 僕にとってそういうものだった 夜がやけに長かった あの子はまだ起きているのか 起きているとして メールは確認してもらえたのか 確認したとして 今は返信を考えているのか 考えているとして その内容はどんなものなのか 新着メー

          【詩】眠れない夜というのは

          【詩】形のないもの

          山道を歩いていると この山のどこかに、 自分の探している物があるような気がしてくる 細い山道をひた歩く 陽だまりの中に見つかるような 風のいく先にあるような それはきっと、 必要としていない人も多いのだろうけど、 自分にとってはかけがえのないもの おそらく、私がここにいる理由 鳥の鳴き声が木立に響く 川のせせらぎが耳に優しい 細い山道をひた歩く 大木の洞に見つかるような 朽ちた祠で待つような それはきっと形を持たず、 私の弱さを受け入れて、 不安や懸念を遠ざけるもの

          【詩】形のないもの

          【詩】分岐点

          真っ直ぐ行って右折する 真っ直ぐ行って右折する それでも僕は歩いている 突き当たりを右に 突き当たりを右に それでも僕は歩いている これまでもこれからもそんな感じ 思考のそういう傾向 進んでぶつかって二者択一 これまでもこれからもそんな感じ 思考のそういう傾向 進んでぶつかって取捨選択 真っ直ぐ行って右折する 真っ直ぐ行って右折する たまには左折を選んでみよう 突き当たりを右に 突き当たりを右に 次の壁では左に曲がろう その「たまに」は「いつも」と同じ 「いつも」

          【詩】分岐点

          【詩】Piano Man

          きっとその夢は叶わない 大きな大きな夢だから そんな夢があるのなら こんなところに居てはいけない 誰も彼もがここに集まり 楽しそうに夢を話す そして歌うんだ きっと最期はあっけなくても 夢なんて叶わなくても ここにいる幸せには敵わない 「なあ、俺はこんなところで終わるのかな」 心細さに苛まれる時もある 「その夢を叶えるためにここにいるんだろ」 友人が励まし、そうして今日をやり過ごすんだ 誰も彼もがここに集まり 思い思いの夢を話す そして歌うんだ 顔見知りが増えた酒場

          【詩】Piano Man