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【詩】秋風の夢


秋風の夢
すすきの穂が揺れる


鈴虫の歌
木の葉が踊る


過ぎゆく風の流れの中に
揺蕩う何かを感じていた


昼間の退屈が嘘のような
放課後の焦燥


辺りが暗くなる
その前に
君の後ろ姿に声をかけよう


短くなった夕暮れだから
君と一緒にいたい
切ない風にさらわれる前に


クレーターまでくっきり見える
月が向こうに見えてきた


大きく紅い満月に
怪しい夕暮れ


心細さの中に
怪奇な期待が芽生えていた


夜が来る
その前に
あの子の背に
声をかける


空き地に群生した
すすきの穂
その中で
君を見つけて


すすきの海の
その中に
僕は飛び込み
君の手を取る


秋風の夢
鈴虫の歌


あの子は家に着いただろうか


天へと昇る
怪しい月は
だんだんと小さくなっていく


あり得る訳のない
妄想は
優しい月明かりに
塗りつぶされる


明日の夕暮れは
君の後ろ姿に声をかける


家に入るその前に
月を見上げてそう思う


明日になったらまた更に
夕暮れ時は短くなる


君がさらわれる
鈴虫が死に絶える
木の葉が落ち切る
その前に


すすきの海でつかまえる


なんの脈絡もない
妄想は
怪奇な期待は
天に昇った月明かりが
優しく塗りつぶす


すすきの穂は
月明かりで
金色に輝いているのだろう


僕の妄想は
すすきの海に
眠ったままに
秋は過ぎ行く


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子どもの時分の、秋のゆったりとした夕暮れの、
けれども何かを見つけなくてはならないといった、あの焦燥感はなんなのでしょうか。

すすきの中を泳ぐあの子のことをつかまえたい。

僕の好きな漫画で「らいか・デイズ」というものがあるのですが、主人公らいかちゃんを、竹田くんがすすきの中でつかまえる話があります(何巻だったかは忘れたけど…)。
その話がすごく印象的で、いつか自分の言葉で表現したくて詩にしてみました。

4コマ漫画なんですが、30巻以上出ていて、高校生のときから買っています(僕が持っているのは23巻まで)。

なんともいえないエモい気持ちを巧みに表現していて、万人にオススメしたい漫画です。


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