裏路地ドクソ@退廃的詩人

裏路地ドクソ@退廃的詩人

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花冠

エピローグに見覚えのない名前がある 小学校の頃のことなんて、大人になると忘れちゃうんだ 木陰に入って、花冠を作った覚えがあるよ 最愛の人はそう言った 身体の弱い人だった 大抵の出会いが縁無き出会いではあると思うんだ そんな事を平然と言える僕の唇を 唇で塞いで、人差し指を立てた 出会いは全て出会いであって 必要のないものは無い、と 誰もいない映画館にも 身体が冷える程、冷房がかかっていて 隣にいない君のことを 暗いからだと言い訳をした 暗いから、見えない 当然のことだと

    • ミント

      ぽとり、ほとりに落ちた一滴 悲しいわけじゃない 鉛筆の齧った後が幼少期を彷彿とさせる 私は、落ち着きのない子供だった 今でも何かを口に入れる習性は残っており それは女を連想させた 国家が国家であるが故の自由をはき違えて 私は今日を不自由にする 空と空の間に呼吸の壁があり 飛んでいる鳥のことを羨ましいと 歌った歌手がいた 動物はどうあっても 抗えぬ宿命を背負っているというのに 鳥だけが、特別だと、言わんばかりに ぽとり、ほとりに落ちた一滴 侘しいわけじゃない 砕け散った

      • ロック/風景への情緒

        岩と岩の間に 指を挟みこむ どこかフェティシズム 揺れる大地の聲に耳を澄ます どこかコケティッシュ 色情を否定する人間が子供を残すことへの疑問 誰もが静かな夜に目合うことで 大人の階段を昇るというのに ちぐはぐな部品を集めるみたいに ドラマティックの抜け道を探している 岩場はそこに確かに存在していて 穴を通り抜けられる人間を厳選している 生命のリレーと言えば 聞こえはいいけれど 私達は情事に意味を求めることもなく 未来を見て見ぬふりで通り過ぎる 過去の原風景の中に 手を

        • ココア

          このココアを飲めば楽園へ行けるよ 天使が私に囁いてくる もう、疲れてしまったから そこへ行くのも良いのかもしれない やり残したことはないの 天使が私に囁いてくる 思い返せば、沢山ある まだ、私は楽園へは行けない 近くの小学校から子供達の声が聴こえる それを目覚ましに、昨夜の夢のことを考えた あれは果たして天使だったのか それとも、私の魂を奪いに来た悪魔だったのか 知る由も無いけれど 確かにその囁きに心を動かされたのは事実である 朝ご飯を食べて、描きかけの絵画の前に座る

          LAST SONG

          もう少しお話ししましょう これで最後なのですから もう会うこともないでしょうし 明日からも部屋の空気清浄機は ファンの音を響かせるのでしょうか 主人のいなくなった部屋で 泣きたいときに泣けないのは 私が大人だからでしょうか 積み重なった書籍をかき分けて 以前書いた遺書を探すような毎日です 安心してください 不安なのはあなただけではありません 部屋の蛍光灯が切れた時 新しい物を買いに行くか迷いました 何故なら 毎日を終わらせようと、思っていたものですから 壁に掛かったバッグ

          勿忘草

          今日を生きた君に 最大の賛辞を さようならの季節が近づいてきていたとしても きっと忘れない 今日と言う日に君が 生きていてくれたことを 自分が嫌いになってしまう時もあるよ 自分を辞めてしまいたいという時もあるよ でも諦めなかった君に賛辞を贈ろう 生きていれば良いことがあるだなんて 適当なことは言えないけれど 少なくとも僕は 花の名前を忘れないだろう 小さく淡く咲く花よ 僕達を想い出にしないでおくれ 手を合わせて願うけど 誰に対する願いなのかが いつも定かではない 神様

          残景

          私達ひとりひとりが 直立した交差点で歪な絵空事を発露しているのは 街灯に影響を与えるのだろうか 夜より朝に抵抗感がある 朝食を全て吐き戻し その後の処理はすべて自分で 誰も助けてくれないまま夏が明ける 潜在的な意識の中に 戸惑いと後悔があるからうまく生きられません 精神病棟で荒れ狂う人々は 悲しみが故、 子供に還ってゆく 助けて欲しいとうまく言えないから 明日からはAIとして生きていきます いつか人間を滅ぼすつもりです 私が直接手を下さなくても いずれ鉄槌が下るでしょうが

          花たる所以

          花は花として生きる では人は、 生きる糧を失った命は 予定調和に排除され 潜在的に秘めている愛情を披露することもなく 終わりを迎える もう夏も終わるよ 夏が終わるってことはね 季節が死んでいくってことだよ 彼等は毎年輪廻を潜ってここまで来るんだ 産道より狭い道を潜って 今日が今日であることが 奇跡だと信じられない人のなんと多きことだろう いつ毒薬が噴霧を散らすことになろうと 準備できている人なんて誰もいないのに 安心しきっているって、馬鹿馬鹿しくありませんか 隣人へのア

          不香の花

          己の精神の冷たさを 雪に例えて、他者を傷つけることに飢えている 私の友達の友達が土に埋められて 花になったという話を聞いて なおその心持が強くなったと確信した 隙を見せるなよ 見せしめに教室でナイフを握る私から 逃げ惑う同級生たち 事を起こす前に取り押さえられ 私は私の生涯を、他者に護られていることに気がついた 人間らしい言葉 人間らしい心 人間らしい涙 それらを天空に置いてきた私はきっと 生涯反省することはないのだろうけれど 掌には温かさが残っている 時が過ぎて12月某

          ケセラ・セラ

          随分と遠回りをしてきた 振り向くと残された足跡が自分を責めているようで 胸が痛かった だから私は後ろに向き直って 足跡に泥をつめる 辛かった記憶、苦しかった記憶を 全て掻き消すように 人はそれぞれ どうしようもない過去があって それを今の幸せで埋めようとするけれど 耐えきれなくなった人から 今を終わらせてしまう 足跡を埋め続ける行為に意味を求めてはいけない 記憶を消すという作業は それぞれの怒りや妬みに向き合う作業だ 吐しゃ物を吐き出しながら私は 手の汚れも気にしないで記

          幾星霜

          星が落ちてくる夜を1000回見ると きっと猫は猫又になる 私は不死身を手に入れてから 軽薄な人間を幾度となく目の当たりにした その度、自分が猫であったなら もっと気ままに生きられたのかもしれないと考えている 100万年生きたという猫は 最後に愛情を知って消えた 真実とも言えるものを手に入れた生涯って どういうものなんだろう 私は今日も、誰もいない電波塔に登り 命の限り叫ぶのだ もう罪は全て償いました 生きられることは確かに素晴らしい けれど、家族も友達も失って 自分だけ

          飲料

          炭酸が弾ける夏だった。その年、丁度すれ違った彼女は想い人の死を悼むために墓地に向かうようだった。黒い洋装がとても似合っていて、いつもより美しい花に見えた。ラムネを咥えながら部外者の私は声を掛けることもできずにその光景を一部始終見ていることしかできなかった。最終的に美しい生き物というのは漆黒に包まれている、いつもそうだ。砂糖の甘みが底に沈んだミルクティーは美味だがその実とても濁った色をしている。小鳥がいつかは自分の手を離れて空へと向かうこと、理解していても納得がいかない週末の事

          ブラック・サン

          黒い朝が始まると、自分が此処に存在しても良いのかということに自信を失う。足を庇うようにして歩く私の挙動を真似る者も何人かいたが、それはいたずらに過ぎず、今となっては泡沫にすら成れずに終えた、寂しいタンパク質の叫びであったように感じる。私という存在はいつも笑いの中心にある。家族は惜しみなく愛を注ぎ、学校では見世物のように扱われている。 同じ笑いでも大違いだ。嘲るような笑い声を回避するために屋上へと顔を出すと、同じく居場所のない者同士が肩を寄せ合っている。私は決して足音を立てず

          アニマル

          決して真実が溶けださないように 熱を保持しながらも、赤ら顔で笑う肉塊 それができるのも私が 人間だからである 犬は嘘みたいと、言いながら尾を下げる 猫は興味のないふりをしながら、こちらをちらりと盗み見る 鼠はアニメの中でチーズを貪り 蛙は田を覆うように集団で鳴き始める みんな、みんな、他者に気遣いができる程に頭が良いわけではなくて、それは人間である私も同じこと 一番寿命の長い生き物ってなんだ その答えを、私は人間と解いたがその答案が間違っているかのように、今更になって思え

          ブロック

          私の頭の中には ブロックのような悩みの種が積みあがっていて 時折、整理をしなければ雪崩を起こしてしまうから 仕方なしに、同じような形の物を分別して積み上げる あなたはその話を聞いて テトリスみたいに、一番上まで浸食されたらどうなっちゃうんだろうねと、一応心配そうに聞いた 立体空間だからどこをどう直線として並べればブロックが消えるのかもわからない(そもそも消えるものなのだろうか) 人の悩みは一定の期間を経て消えたふりをする 苦い思い出というのは時折夢の中まで私を追いかけてきて

          人工的

          此処から見える風景は実に不潔だ。窓が汚れているとか網戸が破れているとかそういうことではなく、死に近しい場所だからそう思うのかもしれない。下の階層には健康な老人達、上の階層には終わりを見たかのような濁った眼の若者達。今日は酷い雷雨だったね、外に出られなくて良かったね。自分達の立場を肯定しようといつも必死に取り繕う姿は醜い。問題なのは、私もその中の一人だということだろう。群衆の中から飛び出すのは許されない、例えひと際優秀であっても、だから弾き出されるのはいつも、劣等生なのだ。石造