松下 育男

詩とともに生きる。詩集『肴』(H氏賞)、他。詩の教室をやっています。現代詩文庫『松下育…

松下 育男

詩とともに生きる。詩集『肴』(H氏賞)、他。詩の教室をやっています。現代詩文庫『松下育男詩集』、詩集『コーヒーに砂糖は入れない』講演録『これから詩を読み、書くひとのための詩の教室』発売中。

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ある青年の話

ひとりの青年のことを、思い出すことがあります。 ぼくの勤めていた会社は、大きな会社だったので、財務、経理、会計は、いくつかの部署に分かれていました。 ぼくが50歳くらいの頃、隣の部にひとりの新入社員が入ってきました。 外資系の経理というのは、語学と会計についての知識が必須で、だれもが自分の能力を上のものに認められたいと、必死に仕事をしていました。 そんな中で、その青年は、ほとんど目立たなかったと思います。ぼくがその青年を知ったのは、隣の部で、よく上司に注意を受けている

    • 雑誌と読者のコミュニケーションの場をつくる。

      本日は朝から雨が降っている。 今朝の雨のように静かに、朝の用事をゆっくりとしている。 明日は13:00から「Zoomによる詩の教室」の続きがある。参加者の詩を読むのだけど、あと4編くらいしかないから、すぐに終わってしまうだろう。平日の昼間だし、参加者も数人しかいない。それはそれで、静かな喫茶店の片隅で小人数で集まっているみたいで、悪くはない。丁寧にやろう。 もし聴いてみたい方がいましたら、 fampine@gmail.com 松下までご連絡ください。 それで、3月と4月

      • 「かろうじて掴めたのが、詩だった」

        「詩を書くことに喜びがあるのであり、その詩が誰かの詩よりも秀でることが本来の目的ではない」と、ぼくは本の中でもたびたび書いている。 その思いに嘘はない。 けれど、自分のことを考えてみれば、「人よりも秀でた詩を書きたい」という思いが、なかったわけではない。 それはおそらく、それまでに、これといった優れたものを持っていないと感じていた自分が、生きている意味を求めて、かろうじてつかむことのできたものが、詩だったからなのではないかと、思う。 何をやってもだめな自分が、土俵際で

        • 2024年4月21日(日)詩をこよなく愛し、詩にたっぷり愛される。

          昨日は「Zoomによる詩の教室」でした。立石俊英さん、南田禎一さん、ユウアイトさんとの2時間ほどの座談会でした。 三人とも、詩を書き始めてから数年しか経っていないということを知りました。それにしては、作品の完成度が高いことに驚きます。そういうものなんだなと、思いました。 つまりは、大人になってから書き始めたのです。 ぼくは子供の頃から詩を書いていたので、そんなふうにも書き始めることができるのかと、語られることに興味が尽きませんでした。 そういえば、コロナ前に、池袋で教

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          2024年4月20日(土)床屋で

          昨日は歯医者へ、それから夕方、床屋へ行ってきた。床屋で髪を切ってもらっている時に、前の道で大きなクラクションが何度も鳴っている。明らかに誰かが怒っている。そんな鳴り方だ。床屋の主人がぼくの髪を切りながら、鏡越しに外を見て、様子を説明してくれた。 工事で片側交互通行をしていて、路線バスと乗用車が向かい合っていて双方がゆずらないらしい。だから動けないらしい。それで、乗用車の運転手(じいさんだね、と床屋の主人は言った)がクラクションをたびたび鳴らしている。田舎の短い商店街に響き渡

          2024年4月20日(土)床屋で

          俳句を読む 54 水原秋桜子

          朝寝して鏡中落花ひかり過ぐ 水原秋桜子 よくもこれだけ短い言葉の中で、このようなきらびやかな世界を作ったものだと思います。詩歌の楽しみ方にはいろいろありますが、わたしの場合、とにかく美しく描かれた作品が、理屈ぬきで好きです。読んですぐに目に付くのは、中七の4つの漢字です。これが現代詩なら、めったに「鏡中」だとか「落花」などとは書きません。「鏡のなか」とか、「おちる花」といったほうが、やさしく読者に伝わります。句であるがための工夫が、創作過程で作者によってどれだけなされたか

          俳句を読む 54 水原秋桜子

          2024年4月19日(金) 望んでいたような詩人になれますように

          昨日は用事があってほとんど詩を読めなかった。それでも夕方に、詩の通信教室の詩をひとつだけ読んで、感想を送った。 詩の仕事をしている時は、たいてい音楽を小さく流している。昔の歌を聴く。声が好きなので、このところは、谷山浩子さんの「河のほとりに」や、四角佳子さんの「春の風が吹いていたら」を繰り返し流している。 四角さんの声で「どこかで泣いている人の、心にきっと届くよう」と歌われると、そのたびにぼくは、「どこかで泣いている人」の気持ちになる。 ところで、ぼくは定年後に詩人と呼

          2024年4月19日(金) 望んでいたような詩人になれますように

          2024年4月18日(木)詩は、評価されるために書くのか

          昨日はいつものように点ちゃんと留守番だった。今度の土曜日の、Zoom教室の詩に送られてきた読んでいた。 20篇の詩はすでに一度読んでいて、感想を書いてはあるのだけど、昨日はもう一度読んで、感想を書き直していた。 読み直して気づいたところや、読み間違えていたところがたくさんあった。冷や汗をかきながら、詩に謝りながら書き直していた。 むろん、詩を読んだときに感じたものを、できるだけ正直に書くわけだけれども、「詩を読んだときに感じたもの」というのが、そもそもあてにならない、と

          2024年4月18日(木)詩は、評価されるために書くのか

          【お知らせ】小池昌代さんとの対談「放課後によむ詩、定年後にかく詩」予約受付中です。

          【お知らせ】小池昌代さんとの対談「放課後によむ詩、定年後にかく詩」予約受付中です。

          2024年4月16日(火)長く詩を書いていて思うこと。

          昨日は病院へ。それから家に帰って、いくつか詩を読んだ。いつもと変わらない。それが嬉しい。 これからいくつか人前で話をする予定があるので、その準備をしている。人前でなにが語れるか、わからないけれども、ともかく少しずつ準備をしている。時折に空を見ながら、楽しみながら、やれることをやってゆこうと、当たり前のことを考えている。 急にやる気を出すのではなく、平常心で、こつこつと準備をしてゆくことが大事だと、わかっている。 ところで、会社勤めをしていた頃に、外資企業だったせいか、ト

          2024年4月16日(火)長く詩を書いていて思うこと。

          2024年4月15日(月)14年ぶりの対談

          東日本大震災の前年、2010年9月に、ひとつのイベントがありました。もう14年も前のことです。その時のお知らせを、昨日見ていました。3日間もやったのだな、すごいなと思いました。 初日にぼくも出演していて、対談の二本立てという、今考えるとおそろしいことをしました。 小池昌代さんと対談したのはその時が初めてでした。それ以来、小池さんとは立ち話を何度かしただけです。なので、5/12(日)の「隣町珈琲」での対談は、14ぶり2度目になります。 あれからなにがあっただろう。「放課後

          2024年4月15日(月)14年ぶりの対談

          【お知らせ】5月12日(日)小池昌代さんと対談をします。「放課後によむ詩、定年後にかく詩」。

          【お知らせ】5月12日(日)小池昌代さんと対談をします。「放課後によむ詩、定年後にかく詩」。楽しみです。

          【お知らせ】5月12日(日)小池昌代さんと対談をします。「放課後によむ詩、定年後にかく詩」。

          【お知らせ】峯澤典子さんとの「投稿についてのお話し会」です。

          **「詩のお話し会」のお知らせ** 日時:2024年5月26日(日)14~17時(開場13:30) お話 : 投稿について 出演:松下育男、 峯澤典子 場所:ケトルドラム・聖蹟桜ヶ丘駅2分 参加費:2000円+1ドリンク お申込はfampine@gmail.com(松下まで) 定員:15人 お気軽にご参加ください。 (追記) すでに満席になりました。申し訳ありません。

          【お知らせ】峯澤典子さんとの「投稿についてのお話し会」です。

          2024年4月13日(土) 自分が書けるものを書くしかない。

          昨日は少し外出して用事をすませ、それから家に帰って詩を読んだ。それから来月の、対談やお話会のことをつらつら考えていた。いつもと変わらない日だった。つまりは人生の中で、もっとも望んでいた日のうちの一日だった。 ところで、ぼくは、何かを書こうとする時に、あれこれ考えて迷うのだけど、ある瞬間に、「あっ、これは書けるな」と気づくことがある。そうすると何かが書ける。 どういう瞬間かというと、なんだろう、説明するのはむずかしいのだけど、目の前の四角い入れ物に、考えていることが、ぴたり

          2024年4月13日(土) 自分が書けるものを書くしかない。

          2024年4月12日(金)詩からの愛され方は、きっとある。

          本日は歯医者へ。口を大きく開け、歯を磨かれながら、考えごとをしていました。詩と人のことを、考えていました。 詩との付き合い方というのは、人それぞれだと思うのです。というか、どんな人も、自分に合った付き合い方を探し、選ぶことができると思うのです。 人生のある時点で、だれかの詩に出会い、いたく感動したことがあるのなら、そのような感性を持ち合わせているのなら、その人なりに、きっとうまく詩と付き合ってゆけるのです。 たとえば、投稿に落ち続けているから、もう詩をやめる、という必要

          2024年4月12日(金)詩からの愛され方は、きっとある。

          2024年4月11日(木)好きなことをしていても、バチはあたらない。

          昨日、6月に横浜で講演をする告知をしました。 それで、夜、お風呂に浸かって、そうか、また講演をするのだなと、つくづく考えたのです。なんでこんなふうになったのだろうと、思い出していたのです。不思議に思えたのです。 7年前、ぼくは66歳で長く勤めていた会社をやめました。その時のことを思い出していたのです。 あの頃、しばらくは仕事を探すこともしないでおこうと思い、好きなことをしてみよう、43年間も早起きして電車に乗って、人に使われて仕事をしてきたのだから、もう、自分のために時

          2024年4月11日(木)好きなことをしていても、バチはあたらない。