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クラシック音楽に興味があるなら読むべきnote

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演奏家はキュレーターの視点を持つべきだ

演奏家はキュレーターの視点を持つべきだ

こんにちは,音楽教育学者の長谷川です👓随分久々になってしまいました。

以前,こんなツイートをしたらプチバズが起きた。

キュレーターとは,現代美術の文脈において展覧会の企画・運営等を総合的に指揮する人のことである。どんな作品を取り扱うのか,どんなタイトルの展覧会にするのか,展示の順はどうするのか,ライティングは?解説は?チラシに掲載するキャッチフレーズは?等々。

今日のクラシックにおける自主

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ハンガリー人作曲家バルトークの有名曲「ルーマニア民族舞曲」はなぜハンガリーではなくルーマニアなのか?

ハンガリー人作曲家バルトークの有名曲「ルーマニア民族舞曲」はなぜハンガリーではなくルーマニアなのか?

20世紀を代表するハンガリーの作曲家、バルトーク。彼の人気曲の一つであり、ピアノ、弦楽器、オーケストラ公演の他、近年は吹奏楽コンクールの課題曲としても演奏されているルーマニア民族舞曲。しかしなぜこの作品の題名がバルトークの祖国「ハンガリー」ではなく「ルーマニア」なのか、疑問に思った方も少なくないはず。その背景にはハンガリーの悲しい歴史とバルトークの強い想いがあった…

意外と知られていないのが、そ

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君に届け。無伴奏チェロ組曲

君に届け。無伴奏チェロ組曲

 気息を整え,舞台袖からチェロを抱えてステージの中央にひとつだけ置かれた椅子に進む。客席に向かって,私は一言お願いをした。

「卒業演奏の曲はバッハの一番です。急なお願いで申し訳ないのですが,その前にアリアを無伴奏で6小節だけ弾かせてください。」

 私が何を弾きたいか,クラスメートはもちろん,教授たちも瞬時に理解したようだ。客席から音が消えた。
 ヴァイオリンより1オクターブ下で,控えめなヴィブ

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受容者層の変遷に着目した音楽史〜『ベートーヴェンを聴けば世界史がわかる』

受容者層の変遷に着目した音楽史〜『ベートーヴェンを聴けば世界史がわかる』

◆片山杜秀著『ベートーヴェンを聴けば世界史がわかる』
出版社:文藝春秋
発売時期:2018年11月

音楽の歴史には人類の歴史そのものが刻まれている。とりわけ音楽の受け取り手である教会、宮廷、市民層の変遷は、まさに政治、経済、社会の歴史にほかならない。本書はそのような認識に基づき、音楽批評にも健筆を振るっている思想史研究者の片山杜秀がクラシック音楽の歴史を語りおろしたものです。

ヨーロッパの音楽

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[入門編]これなら知ってる!?クラシックア・ラ・カルト

[入門編]これなら知ってる!?クラシックア・ラ・カルト

結局、何から聴けばいい?クラシックに興味がある、勉強したいと思ってるけど、どこから入っていけばいいのかわからない…

こんな風に思ってる方は意外と多いのではないでしょうか。

クラシック音楽は歴史の洗礼を受けて今も聴き継がれている作品の宝庫です。過去·現代に至るまでの作品数たるや膨大なもの。ですから、なかなか親しむきっかけをつかめない方もいるかと思います。

やっぱりベートーヴェンから?それともモ

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芸術を信じて疑わない人たちへ

声楽家の友人と会うと、たまに

「これからのオペラ業界はどーしたらいいんだ!!?」

みたいな話をすることがある。

ぶっちゃけ、日本のオペラ業界は大変である。
バブル期までは企業の寄付や行政の助成金で予算がジャブジャブあったので、ひとつ作るのに数億円規模!みたいな公演もあったらしい。

それが、バブルが弾け企業からの寄付や協賛は減り、民主党政権時代の事業仕分けで、文化事業への助成金も軒並みカット

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村上春樹『騎士団長殺し』とクラシック音楽

村上春樹『騎士団長殺し』とクラシック音楽

今日は村上春樹の『騎士団長殺し』について話します。

感想をPostしたいところですが、ネタバレする可能性があるため、ここでは、この小説に印象的に取り上げられていたクラシック音楽について書いてみます。

実は、私は20年以上のクラシックマニアです。
極めてマニアックな話が延々と続きますし、文章のオチもないので、関心のない方はこの時点で離脱することをお勧めします。
この機会にクラシック音楽にはまって

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Rock me Amadeus...!

Rock me Amadeus...!

オーケストラの仕事は紛れもなく流れ作業だ。毎日毎日リハーサルに行くと、譜面台の上には望むと望まざるに関わらず決められた楽譜がセットされている。当たり前のことだが「この曲が弾きたい!」とか「これは面白い曲だからやろう」ではなく、「これを弾け」という命令に従っているということになる。そして譜面台に乗る曲の回転率が速ければ速いほど、そしてそれを消化していくスピードが上がれば上がるほど、段々と自分が何万個

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クラシック音楽ってなに?

クラシック音楽ってなに?

こんにちは。Deaf.エリーゼです。

ある聴覚障害者からこんなことを言われました。
「クラシック音楽ってなに?眠くなるイメージしかない」と。

たしかに、実際に楽器を演奏したり、興味があって聞いたりしないと、
イメージが湧かないですね。

そこで今日は、「クラシック音楽とは何ぞや?」をわかりやすく書いてみたいと思います。

聴覚障害者から見たクラシック音楽のイメージとは・・・

・長い
・詳しく

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コロナ禍と音楽| 「弦楽器の新たな地平を拓きたい」 ヴァイオリニスト・吉田篤貴の試練と描く未来

コロナ禍と音楽| 「弦楽器の新たな地平を拓きたい」 ヴァイオリニスト・吉田篤貴の試練と描く未来



先月(6月)、東京・渋谷の地下駐車場。その奥まった場所にある音楽ホールで、ミュージシャン2人による演奏会が開かれた。

しかし本来いるはずの「観客」は1人もいない。あったのはカメラやビデオ、PCなどの配信機材。これらを使い、「カメラの向こうにいる観客」に音楽を届ける。

新型コロナウイルスの影響で、多くの演奏する場が失われる中、徐々に広がりを見せている「配信ライブ」の試みがこの日、行われたのだ

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《ピアノ》受けさせてみて。。

《ピアノ》受けさせてみて。。

今年は感染症の影響により、
ピアノのコンクールも動画で行われるところがほとんどでした。自宅で動画を撮影し、提出する方法です。

ピアノを教えていらっしゃる先生たちの間では、
双方の意見が聞かれました。

•動画だから今年は止めてみよう
•動画だからあの子に受けさせてみよう

毎年、コンクールに出場されていた生徒さんからも
同じような意見を頂きましたので

私の生徒さんには、
1、動画のコンクールで

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わたしはこの曲を、作曲家を、もっとたくさんの人に知ってもらいたい ための日 #20

わたしはこの曲を、作曲家を、もっとたくさんの人に知ってもらいたい ための日 #20

今日にぴったりな、今日のための音楽を紹介

ハンス・ロット(1858–1884) / 交響曲第1番 ホ長調

なかなか真っさらに晴れた空を見上げることができない日々のなかで、とくに今日は大きく激しい雨の音にわたしは目覚めた。もうものすごく叩きつけるような音と時々光る灰色の空。これは、朝のはじまり?とすこし疑ってしまうくらいだった(雷ってわたしの中で夕立とともにやってくるのがベストタイミングなイ

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2021年にアニバーサリー・イヤーを迎えるクラシック音楽の作曲家リスト

【没後500年】◯ジョスカン・デ・プレ
(Josquin des Préz, 1455-1521)
・フランドル(北フランス)出身。
・イタリアで活動した。晩年は地元で主任司祭を務めた。
・通模倣書法(through-imitation style)を確立した。
・フランドル学派最大の作曲家。
・まとめの記事を書きました(2020.09.28)。
https://note.com/mattarea

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みんなと違う耳でもいいんです。~聾者の音大挑戦から就活まで~

みんなと違う耳でもいいんです。~聾者の音大挑戦から就活まで~

最終話 悔し涙。その支えは音楽と、友達。

こんにちは。Deaf.エリーゼです。

第2話の続き、ピアノ、声楽のレッスン、実技試験のこと。そして友達のことを話したいと思います。

一回タイムスリップから現在に戻って・・・

レイ:
こんなに大変だと思わなかったです・・・。
経験した話を聞けてよかったと思います。

サクラ:
自分で行動するしかないですね・・・。
私も夢を叶えるために努力しかないです

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