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気が向いた時に昔の詩の翻訳をしたり、備忘録代わりの記事を書いたりしています。

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映画メモ:『ラ・ラ・ランド』のコピーバンドと80年代の音楽シーン

※大まかな論旨はそのままに、全面的に書き直しました。(2021/01/04) 【はじめに】 2020年は1980年代の洋楽チャートに浸かっていた。ポスト・パンクの時代をなすムーブメントの一端としてニュー・ウェイブが登場したり、ディスコやハードロックに押され気味だったポップがシンセサイザーやドラムマシンの台頭と共に盛り上がったりするなど、1970年代後半からの面白い変化がたくさんあった。  今回の記事では、2016年の大ヒット映画『ラ・ラ・ランド』に注目して、そんな1980

    • 翻訳 A.テニスン「旧き年の死(The Death of the Old Year)」

      【記事について】 ・新年も近いので、2015年の年末にbloggerで公開したものを転載します。 ・カバーの絵画:Walter Moras (1856-1925), Verschneite Waldlandschaft. 【日本語訳】 膝を隠す深さに冬の雪は積もり、 冬の風は物憂げに溜息を吐いている。 諸君、教会の鐘を鈍く悲しく鳴らそう、 そろそろと歩み、ひそやかに語ろう、 旧き年が死にゆくところなのだから。    旧き年よ、死んではならない。    ほら、君は僕らの

      • 2021年のアニバーサリー・イヤー・クラシック②ヤン・ピーテルスゾーン・スウェーリンク (没後400年)

        【はじめに】◯記事について ・2021年のクラシック・シーンに備えて、アニバーサリー・イヤーの作曲家をまとめておく記事です。続きが出るかはわかりません。笑 ・参考:「2021年にアニバーサリー・イヤーを迎えるクラシック音楽の作曲家リスト」 https://note.com/mattaream/n/n1973a0931bac ◯音源として紹介するCDの基本的な選び方 ・あまり長いと気楽に聴き通せないので、1枚組のCDから選んでいます。Naxos Music Library(NM

        • 翻訳:W.ワーズワース「彼女は喜びの幻だった」

          【記事について】今年はワーズワースの生誕250周年というわけで、滑り込みで翻訳しました。以前に「虹」を訳したことがあるので、今度は恋愛詩にしてみようと思い、She was a Phantom of delightを選びました。 【日本語訳】彼女は喜びの幻だった 僕の視界で彼女が初めてきらめいたときのことだ。 愛おしい影が放たれて 一瞬を飾りつけていった。 彼女の瞳は黄昏どきの星のように美しく 髪は黄昏そのものだった。 彼女が身に纏うそれ以外のすべては 五月の風光と朗らかな夜

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        • 翻訳 A.テニスン「旧き年の死(The Death of the Old Year)」

        • 2021年のアニバーサリー・イヤー・クラシック②ヤン・ピーテルスゾーン・スウェーリンク (没後400年)

        • 翻訳:W.ワーズワース「彼女は喜びの幻だった」

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          2021年のアニバーサリー・イヤー・クラシック①ジョスカン・デ・プレ(没後500年)

          【はじめに】◯記事について ・2021年のクラシック・シーンに備えて、アニバーサリー・イヤーの作曲家をまとめておく記事です。続きが出るかはわかりません。笑 ・参考:「2021年にアニバーサリー・イヤーを迎えるクラシック音楽の作曲家リスト」 https://note.com/mattaream/n/n1973a0931bac ◯音源として紹介するCDの基本的な選び方 ・あまり長いと気楽に聴き通せないので、1枚組のCDから選んでいます。 ・作曲家に焦点を定めているので、作曲家

          2021年のアニバーサリー・イヤー・クラシック①ジョスカン・デ・プレ(没後500年)

          私訳:T.S. エリオット『荒れ地』(1922年)より「死者の埋葬」の冒頭部分

          一 死者の埋葬(1/4) 四月は一番残酷な月だ。 死んでいた土地にライラックを育み、 記憶と願望を混ぜ合わせ、 眠っていた根を春の雨で起こしていく。 冬は僕らを暖めてくれた。 忘却の雪で地面を覆い、 乾いた塊茎で小さな命を養っていた。 夏は僕らを驚かせた。シュタルンベルクの湖は 夕立に見舞われた。僕らは並木で雨宿りをし、 日が出たところでホーフガルテンの庭園へ向かい、 コーヒーを飲み、一時間くらい話していた。 「ロシア人などではありません。リトアニア出身でも生粋のドイツ人で

          私訳:T.S. エリオット『荒れ地』(1922年)より「死者の埋葬」の冒頭部分

          2021年にアニバーサリー・イヤーを迎えるクラシック音楽の作曲家リスト

          【没後500年】◯ジョスカン・デ・プレ (Josquin des Préz, 1455-1521) ・フランドル(北フランス)出身。 ・イタリアで活動した。晩年は地元で主任司祭を務めた。 ・通模倣書法(through-imitation style)を確立した。 ・フランドル学派最大の作曲家。 ・まとめの記事を書きました(2020.09.28)。 https://note.com/mattaream/n/ndac7f7c00e51 【没後400年】◯ヤン・ピーテルスゾーン・

          2021年にアニバーサリー・イヤーを迎えるクラシック音楽の作曲家リスト

          2012-2017年に観た映画TOP20

          TOP 1-10 01. 周防正行『Shall we ダンス?』(1996) ・「普通の人の生きがい」を教えてくれる。不動の一位。 02. S. ダルドリー『愛を読むひと』(2008) ・愛の映画でも戦時ドイツの映画でもベスト。小説も好き。 03. G. トルナトーレ『ニュー・シネマ・パラダイス』(1988) ・どの名作リストでもトップにいる作品。時々嫌いになる。笑 04. A. リー『ブロークバック・マウンテン』(2005) ・人生が人に暴力を振るうという描写が重い名作

          2012-2017年に観た映画TOP20

          私訳:ウィリアム・ブレイク「イェルサレム」(1808)

          【日本語訳】 古き時代、あの方の足は踏み入った イングランドの緑豊かな山脈に。 神のきよらかな子羊が現れたのだ イングランドの清々しい草原に。 あの神々しい表情は照らしたのだろうか この煙で曇った丘陵を。 ここにイェルサレムは築かれたのだろうか 暗いサタンの工場地帯に。 私に燃え上がる金の弓を渡せ。 私に願いの矢を渡せ。 私に槍を渡せ。おお、煙の雲よ、散れ! 私に炎の戦車を渡せ! 精神の闘いから退く気はない。 この手の剣を眠らせる気はない。 緑豊かな清々しいイングラン

          私訳:ウィリアム・ブレイク「イェルサレム」(1808)

          私訳:エミリー・ディキンソン「林檎の樹に降るひとしずく」(「雨の詩」)

          【日本語訳】 林檎の樹に降るひとしずく 屋根の上にもひとしずく。 軒には六回、キスの音 切妻からは笑い声。 雫は川へと加わって 川は海へと加わった。 私はひとり推し量る、雫が真珠だったなら、 どうネックレスにしようかと! 舞う土埃も帰り道 浮かれた様子の鳥の歌。 陽射しが帽子を放り投げ きらめき残る果樹の園。 竪琴たちのさみしさを 幸せな風が洗い落とす。 東に一つの旗が立ち お祭り騒ぎを締めくくる。 【英語原文】 A drop fell on the apple

          私訳:エミリー・ディキンソン「林檎の樹に降るひとしずく」(「雨の詩」)

          私のレシピ:熱乾麺の作り方

          【記事について】・中国の指折りの麺類の一つ、熱乾麺のレシピを私好みに組み立てました。中国中部の湖北省(武漢市)の麺料理で、日本での知名度は担担麺や炸醤麺ほど高くありませんが、中国麺料理TOP10には入るくらいの一品だと思われます。名前の通り、熱して乾かすのが特徴の麺です(中国語の表記だと热干面なので「干した麺」となります)。 ・味は牛×醤油のタレを絡め、芝麻醬(ごまペースト)と一緒に食べるというもので、なかなか食べ応えのある麺という印象を受けます。牛ベースというと、中国北西部

          私のレシピ:熱乾麺の作り方

          感想メモ:『ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像』とイコンの認識

          ※劇場で見てきたので備忘録。ネタバレ含みます。 【映画について】・フィンランド語のタイトルは『不明の巨匠』(Tuntematon mestari)。「名前の無い巨匠」とか「未知の巨匠」とか訳しても良いと思う。直訳で英語に直すなら、The Unknown Masterといったところか(邦題の副題の「名前を失くした」に反映されている)。実際に公開された英語タイトルは『最後の取り引き』(One Last Deal)で、日本語タイトルもこちらを引き継いでいるようだ。何となく英語で"

          感想メモ:『ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像』とイコンの認識

          私訳:D. G. ロセッティ『命の家』より「愛の眺め」

          『命の家』(The House of Life) 第一部「青春と変化」(Youth and Change) 第五歌「愛の眺め」 (Lovesight) 愛する人よ、君を見つめるべき時はいつだろう。 明るい昼なら、僕の眼差しに宿る精神は 君の顔という祭壇を前に執り行うはずだ、 君を通して知られる「愛」への礼拝を。 (僕ら二人しかいない)夕闇の時間なら、 唇を重ねて雄弁な応酬を続けながら 君の顔は薄暮に隠れながら微かに光り 僕の魂は君の魂をただ自分のものと見知る。 ああ、愛す

          私訳:D. G. ロセッティ『命の家』より「愛の眺め」

          映画備忘録:『13日の金曜日』シリーズ

          【記事について】・13日の金曜日に『13日の金曜日』シリーズをレビューしていく記事。13日の金曜日に更新。 『13日の金曜日』(Friday the 13th, 1980) 【概要】 ・監督はショーン・S・カニンガム(Sean S. Cunningham, 1941-)。それ以前のキャリアとして、カニンガムは『鮮血の美学』(1972)の制作に参加している。この映画の監督は後に『エルム街の悪夢』(1984)を撮るウェス・クレイヴン(Wesley Earl Craven, 19

          映画備忘録:『13日の金曜日』シリーズ

          私訳:D. G. ロセッティ『命の家』より「贖い」

          『命の家』(The House of Life) 第一部「青春と変化」(Youth and Change) 第四歌「贖い」(Redemption) ああ、愛し合うときの君は恍惚としながら 僕の唇へずっとあてがっている 「愛」の肉と血からなる聖餐を。 僕が君に身を寄せて感じ取った君の吐息は 彼の聖域の奥で焚かれている香煙だった。 君が言葉もなしに彼に応え、その身を 彼の意志に捧げると、君の命は僕の命と混ざり合い、 葡萄酒の上で囁くのだ、「思い出しなさい!」と*―― ああ、君

          私訳:D. G. ロセッティ『命の家』より「贖い」

          私訳:D. G. ロセッティ『命の家』より「花嫁の誕生」

          『命の家』(The House of Life) 第一部「青春と変化」(Youth and Change) 第三歌「花嫁の誕生」(Bridal Birth) 望みが長い暗闇の後に夜明けを迎えたとき 新たに生まれた子へ最初の眼差しを注ぐ母親のように 僕の愛する女性は足を止めて見つめ、微笑んだ。 ついに彼女の魂は自分の養い育んだ「愛」を知ったのだ。 彼女の命とともに生まれたこの生き物、鋭い乾きと 激しい飢えを抱えた「愛」は、彼女の心に横たわり 暗がりで鼓動を速めながら、誰かの

          私訳:D. G. ロセッティ『命の家』より「花嫁の誕生」