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私訳:ウィリアム・ブレイク「イェルサレム」(1808)

【日本語訳】

古き時代、あの方の足は踏み入った
イングランドの緑豊かな山脈に。
神のきよらかな子羊が現れたのだ
イングランドの清々しい草原に。

あの神々しい表情は照らしたのだろうか
この煙で曇った丘陵を。
ここにイェルサレムは築かれたのだろうか
暗いサタンの工場地帯に。

私に燃え上がる金の弓を渡せ。
私に願いの矢を渡せ。
私に槍を渡せ。おお、煙の雲よ、散れ!
私に炎の戦車を渡せ!

精神の闘いから退く気はない。
この手の剣を眠らせる気はない。
緑豊かな清々しいイングランドの地に
私たちがイェルサレムを築き終えるまで。

【英語原文】

And did those feet in ancient time A
Walk upon Englands mountains green:
And was the holy Lamb of God,
On Englands pleasant pastures seen! 

And did the Countenance Divine, 
Shine forth upon our clouded hills?
And was Jerusalem builded here,
Among these dark Satanic Mills?

Bring me my Bow of burning gold:
Bring me my arrows of desire:
Bring me my Spear: O clouds unfold!
Bring me my Chariot of fire!

I will not cease from Mental Fight,
Nor shall my sword sleep in my hand:
Till we have built Jerusalem,
In Englands green & pleasant Land.

【解説】

・元はブレイクの著作ミルトンの序論に挿入された詩であり、独立した詩ではなかった。また、ブレイクの最後の大作『イェルサレム――大アルビオンの流出』と直接の関わりはないとされる。
・ヒューバート・パリーが書いた合唱曲を通して相当に親しまれており、『炎のランナー』や2012年のロンドン五輪の開会式でも用いられた。
・基本の構図は、昔のイングランドの緑色の自然と今のイングランドの灰色の工業という対比からなっている。聖書からモチーフを借りた「信仰の闘い」のイメージが全体を支配していることも特徴的。
・第3連では、「私に私の武器を渡せ」(Bring me my ~)系の構文が続くが、第4連の第3行で主語が「私たち」と複数形となり、詩人個人の情熱から国民の連帯への発展を仄めかしている。
・日本語のリズムは様々に考えたが、なかなか一貫したリズムを与えるのが難しかったため、散文的な訳とした。

【カバー情報】

ヘンリー・ホリデイ「ホーズウォーター」(1859)

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