長谷川諒@音楽教育学者

音楽教育学という学問を教えたり研究したりしています。このnoteでは音楽を中心に音楽教…

長谷川諒@音楽教育学者

音楽教育学という学問を教えたり研究したりしています。このnoteでは音楽を中心に音楽教育や音楽ビジネスのあり方について語ってます👓ご質問・ご依頼等は各種SNSのDMからお気軽にどうぞ!YouTube見てね👁 https://linktr.ee/ryohasegawa

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  • 長谷川の音楽教育学的思考

    長谷川が日々思考している音楽教育学的ないろいろを文章化します。

  • クラシック演奏家ビジネス論2.0

    クラシック演奏家の生き方,働き方等について,音楽教育学者の長谷川が考えたことを書き連ねています。

  • プログラムノート論

    多くの演奏家が執筆に行き詰まるプログラムノート。そもそもプログラムノートは何のために書くのか,という原初に立ち返りつつ長谷川の考えを述べています。

最近の記事

西洋音楽の普遍性信仰とその功罪

SNSを見ていると,「どんな人でも音楽の美しさに気づくことができる力をもっている」とか「音楽は普遍的な芸術であり…」とかいった発信をよく目にする。そして,このような発信をする人は多くの場合西洋音楽の演奏家だ。投稿全体の文脈を加味すると,発信者のいう「音楽」とはどうやら「西洋音楽」のことのようだ。彼らにとっての「(西洋)音楽」とは「リズム・メロディ・ハーモニー」によって構成されるホモフォニックな拍節音楽を中心とする音楽様式である。これにルネサンスのポリフォニーやドビュッシーの印

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    • 「クラシックには流行り廃りがないから素晴らしい」説に真っ向から反論したい

      こんにちは,音楽教育学者の長谷川です👓 さて,本日のタイトルですが,違和感を持つ人も多いと思う。「クラシック音楽は流行り廃りがないからこそ素晴らしい。それがクラシック(古典)たる所以なのだ。」という言説はいろんなところで見る。 そして,クラシック愛好家である僕は,この説に全く同意しない。さぁ本日も語っていきましょう。 1.「流行り」とは差別化である例えば,ファッションには流行り廃りがある。肩パッドバキバキのタイトなスーツを着て前髪が「すだれ」みたいになってるバブリーな女

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      • 専業音楽キュレーターの可能性

        こんにちは,音楽教育学者の長谷川です👓 先日書いた下記の記事,多くの人に読んでいただいて嬉しい限りです。Twitterでも色々な反応をいただき,すべて興味深く拝読した。ありがとうございます。当該記事をまだお読みになっていない方は是非こちらから読んでみてください。 ようは,「楽器の上手さ」でガチンコ勝負しなくても,キュレーションという発想でお客さんの聴取体験を効果的にデザインすれば,技術で劣る演奏家にもファンが付くんじゃないですか?という提案をしたわけだ。 そうすると,一

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        • 子どもの名前に関する音楽教育学的考察

          こんにちは,音楽教育学者の長谷川です👓タイトルで子どもの名前がどうのこうの言ってますが,結婚する予定もありません。この年になると一周回って親からのプレッシャーとか無視できるようになってきたのでもう無敵です。 さて,上述のとおりめちゃくちゃもしもの話なのですが,もし自分が子どもに名前をつけるとしたら「白(ハク)」とか「透(トウ)」とかなんかそんなのにしたいとふと思った,という内容について書いてみた。 * * * 僕の名前は「諒(りょう)」なんですが,由来としては15画とい

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          演奏家はキュレーターの視点を持つべきだ

          こんにちは,音楽教育学者の長谷川です👓随分久々になってしまいました。 以前,こんなツイートをしたらプチバズが起きた。 キュレーターとは,現代美術の文脈において展覧会の企画・運営等を総合的に指揮する人のことである。どんな作品を取り扱うのか,どんなタイトルの展覧会にするのか,展示の順はどうするのか,ライティングは?解説は?チラシに掲載するキャッチフレーズは?等々。 今日のクラシックにおける自主企画の演奏会は,多くの場合「プレイヤーがやりたい演目をやる」ということになっている

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          ファッションと音楽をめぐるぼんやりとした考察

          こんにちは,音楽教育学者の長谷川です👓 いきなりなんですが,僕が洋服が好きだ。 「国立大学の教員という職業における一番の魅力はなんですか?」と聞かれたら,迷わず「好きな服を着て勤務できるところです!!!」と答える。 他人から見て「うっわ〜!おしゃれだね〜!」と言われるほどおしゃれではないけど,着たい服が全部洗濯中だった時は仕事に行くのを止めてやろうかと思うくらいには自分なりのこだわりがある。 オックスフォードシャツのガシっとしてながらも滑らかな手触り,腰回りゆったりの

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          新人演奏会が若手の支援として機能しているのか考えてみた

          こんにちは,音楽教育学者の長谷川です👓 先日,Instagramのストーリーズを眺めていると,音大の卒業を控えた学生さんの投稿にこんなのがあった。 う〜ん… そりゃ「無理😭」ですよね… 新人演奏会って若手演奏家の門出を応援するためのものだと思ってたけど,そういうわけではないのかな? 常識的に考えたらわかると思うけど,新卒音楽家にとって7万円は結構手痛い出費だ(いや全ての新卒社会人にとってきつい金額だろう)。しかもちょっと調べてみると,別にオケバックでコンチェルトをや

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          音楽室に作曲家の肖像画が飾られてるのってまじで謎だよなっていう話(になった)

          こんにちは,音楽教育学者の長谷川です👓 今日は何のまとまりもないどころかとんでもねぇ乱文です,すいません。 というのもね,当初もっとちゃんとした記事を書こうとしてて,その中で次のような文章を書いたわけです。 この文章の後半部分にある「西洋音楽は数ある民族音楽のひとつだ」っていうところ,僕の授業では必ず触れる話なんです。「西洋音楽(ドレミや機能和声に基づいている音楽)って全人類の心を動かすことを約束されている普遍的な価値のある音楽なんかじゃなくて,世界中にたくさんある民族

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          クラシック演奏家ビジネス論2.0②コト消費時代に生徒を集める方法

          こんにちは,音楽教育学者の長谷川です。 クラシック演奏家や音大生の今後をお節介ながら僕が勝手に案じる「クラシック演奏家ビジネス論2.0」の第2弾です。前回の記事を読んでいない方はまずはこちらからどうぞ。 前回の記事では,今後のレッスン産業は「現段階でトッププロ(大学講師レベル)のポジションについている演奏家による対面レッスン」と「トッププロには劣るが肩書きと実力をもっている若手によるオンラインレッスンおよび動画教材」に二極化し,これらのいずれにも該当しない演奏家,つまり「

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          クラシック演奏家ビジネス論2.0①音大新卒は今後レッスンで食っていけるのか

          こんにちは,音楽教育学者の長谷川です。 言うまでもないことだが,私たちの親世代と比較すると,現代の「働き方」は大きく変わってきている。 大企業に就職するのがステータスだった平成前半までと比べ,就職よりも起業に価値を見出す人がずいぶん増えた。「大企業は絶対に潰れない」という安心神話も相対的に崩れてきている。インターネットの普及により個人が自由に情報発信できるようになったことも,働き方の変革に寄与していると言えるだろう。 そして,この「働き方の変化の波」は,当然音楽家にも影

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          クラシック演奏家のための「長谷川的プログラムノート論」②具体例編

          さっそく第2弾を書いてみた。音楽教育学者の長谷川がプログラムノートを書く際に留意している事をあらかじめ公開しておくことで,学生から「ちょっとプログラムノート見てもらえませんか」と校正を依頼される際の僕の負担を減そうとするこのシリーズ(同じ事何度も説明するのめんどくさいので),学生以外の方にも比較的興味をもっていただけたようで嬉しい限りです。前回の記事を読んでない方はまずはそちらをどうぞ。 要するに,「プログラムノートでは練習していて気付いた曲のこだわりポイントを語れ,それが

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          クラシック演奏家のための「長谷川的プログラムノート論」①概論編

          多くのクラシック演奏家は,自分の演奏する曲についてのプログラムノートを書いた経験があるはずだ。 とりわけ僕は,普通の演奏家以上に多くのプログラムノートを書いてきた人間だと思う。音楽教育学という学問を専攻し論文を書いたりしていたので,他の演奏家仲間に比べて文章を書くのが得意な方だったということもあり,友人のリサイタルにプログラムノートを寄稿したり,他人が書いた文章の添削を依頼されたりしてきた。 つまり,プログラムノートについて論考する機会はそれなりに多い方だったということだ

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