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新人演奏会が若手の支援として機能しているのか考えてみた
こんにちは,音楽教育学者の長谷川です👓
先日,Instagramのストーリーズを眺めていると,音大の卒業を控えた学生さんの投稿にこんなのがあった。
先生に推薦されて〇〇市の新人演奏会に出ようと思ったけど,参加費7万円かかる上に1,500円のチケットを100枚さばけだって…無理😭 ※一部フェイクです
う〜ん…
そりゃ「無理😭」ですよね…
新人演奏会って若手演奏家の門出を応援するためのものだと思ってたけど,そういうわけではないのかな?
常識的に考えたらわかると思うけど,新卒音楽家にとって7万円は結構手痛い出費だ(いや全ての新卒社会人にとってきつい金額だろう)。しかもちょっと調べてみると,別にオケバックでコンチェルトをやらせてもらえるわけでもなく,同市出身の新人演奏家複数名に混じって一曲披露するだけの,よくあるオムニバス形式のコンサートのようだった。
僕は「直ちに収益の発生しない演奏活動はすべきではない!」みたいな古い考えを持ってるわけではない。したがって,最初に7万円を払った結果その7万円に見合うだけの支援を若手演奏家が後から確実に受け取れるよう設計されているのであれば,それはそれで全然いいと思うんですよ。
うーんでもこれはちょっとな〜…あんまり若手演奏家の支援にはなりそうもないよな〜…
ということで,このnoteでは新人演奏会に代表される若手演奏家支援事業について僕が思ってることについて書かせてください。
1.「支援」とは?
そもそも「支援」って何だろう?
当たり前すぎて見過ごされてるのかもしれないが,「支援」は「支援される人」がきちんと得をしないと意味がない。震災直後の被災地に大量の折り鶴を送って被災者の方が逆に困ったという何とも悲しいエピソードがあるが,これは,支援は「支援する側の気持ち」だけでは成立しない,という事実を端的に象徴するものである。支援される側の得をちゃんと計算しておく必要があるということだ。
僕が見る若手演奏家支援事業は,主催者の公私にかかわらず,上記のような「演奏する場」を提供するタイプのものが多い。
もちろん若手にとって場数を踏むことは重要だ。本番で自分の技量を試したいと思っている若手にとってはよいチャレンジの機会になっている。若手はある程度得をしているのかもしれない。
でもね,もしその「支援の場」を作るために若手から少なくないお金を徴収しなければならないのであれば,もうちょっと細かい計算をする必要があるのではないだろうか。
つまり,「7万円」と「若手が得られる何か(ここでは「演奏する場」を得ることかな)」それそれの価値をきちんと比較した上で,「若手の得の価値の方がだいぶ大きい」という設計にしなければ支援にはなってないんじゃないですか???っていう話です。逆は単なる搾取なので論外。それぞれの価値がイコールの場合はまだマシですが,若手側からするとそれは「マッサージに行って対価を払う」みたいな一般的な「サービス消費」にすぎず,「支援」されてはいないですよね??
7万円 > 得られる何か → これは単なる搾取
7万円 = 得られる何か → 普通のサービス消費
7万円<<<得られる何か → 支援と言えるかも
どうだろう?支援という大義名分を掲げながらあまり支援になっていない事業がわりとあるんじゃないだろうか?
まぁつまりですね,あえて言葉を選ばずに言えば,「立派なホールといいピアノで演奏できていい経験になったでしょ?」みたいな「上から支援」はやめて,どうせやるならもっと若手ファーストな支援をしましょうよ,って話です。
2.若手音楽家に喜ばれる支援って何だと思う?
じゃぁどんな支援が若手ファーストなのか?現状の若手支援らしき事業を見ていると,この問いに対する明確な回答を持っている大人は少ないように感じる。
そこで😲‼️インスタグラム🤳🍷🌃✨とかもやってて,比較的若者の心に理解のある僕😅が,若手演奏家🎷👶✨にとって,ありがたい支援👏🙇♂️👏を,ズバリ‼️発表したいと,思います❣️❣️❣️
若手演奏家に喜ばれる支援とは…!ずばり…!
(ゴクリ…)
実は…お金だったんです…!!!
えぇ〜!!!し,知らなかったぁぁ〜!!!
…。
いやいや,普通に金(カネ)でしょ。考えるまでもなくお金だ。インスタなんかやってなくても秒でわかる。逆になんでこれが最初に出てこないのか分からない。若手音楽家には金がない。走ったら疲れるとか,酒を飲んだら酔うとかと同じくらい自明の原則だ。
「金」という言葉を聞くと何故か汚く感じてしまうのが日本人のマネーリテラシーなので,言い方を変えよう。
若手音楽家が必要としているのは,「最低限の生活コスト」を音楽活動の対価でペイできるようになるためのサポートである。どう考えてもまずはこれでしょ。
人間はどんな人でもある程度の生活コストがかかる。贅沢をしない人でも一定程度の収入がなければ生きていけない。文字通り「食っていけない」のである。
そして,新卒の音楽家は,一般の4年制大学を卒業した新卒と同じかそれ以上に真剣に努力してきたにもかかわらず,音楽で「最低限の生活コスト」を稼ぐことすら難しいのが現状だ。彼らは音楽する時間を削ってバイトをしたり,時には自分の意にそぐわない音楽活動をしたりして,何とか生きているのである。
この「バイトと演奏活動の両立をいつ終わらせるのか」問題は結構闇が深く,結局若手とは言えない年になるまでずるずるとバイトを続けてしまう人も多い(ちなみに僕は音楽以外に安定した収入源を持つことに賛成派です。お金に忖度せずにやりたい音楽活動だけを選べるので。でも,バイトはそもそも安定していない)。
その結果,演奏活動だけで食えてる一部の人との経験値の差がどんどん開いていき,途中で手詰まりとなってしまう。
まぁそもそも多くの音楽家が「うまくなれば仕事が増える」と何故か思い込み,プロモーションを怠っている点にも問題はあるのかもしれない。そこは音楽家側も工夫する必要がある。
でも,若手音楽家には金がないという残酷な現実を知っていながら目を背けた上で結構な額の金を払わせ,「立派なホールで演奏できて勉強になったでしょ?」というのはあまりに「支援」とはかけ離れているのではないか。
いろいろうだうだ言ったが,要は,若手に必要な支援とは「やりたい音楽で得られる収入が少しでも多くなるような中期的なサポート」なのではないだろうか,ということだ。
3.具体的な提案
となると,「やっぱ金か〜。じゃぁ優勝者に賞金30万円が支払われるコンクールみたいなのを開催すりゃいいの?」となるかもしれない。まぁこれもいいけど,個人的にはベストとは思えない。
なぜなら,賞金30万円を手に入れたらその後2ヶ月くらいはその賞金と音楽活動だけで「最低限の生活コスト」を支払えるかもしれないけど,その30万円が尽きたタイミングでまたバイトに奔走する日々が始まることが分かりきっているからだ。支援の仕方としてはあまり賢くない。
あるいは,賞金を300万くらいあげて1年間音楽活動に集中させ,音楽活動だけで食えるように成長するまで面倒を見る,というのであれば有効そうだ。だが財源を考えると当然現実的ではないだろう。
それにこの手の賞レースを乱立させても,賞金をかっさらうのは「学生時代からガンガン仕事をしていて音楽だけで食っていけそうな道が既に見えているごく少数の超優秀な新卒」だ。そういう人に一点集中型の支援をするのもまぁいいのかもしれないけど,僕としてはこれから開花する可能性のある若手にも支援の手を広げたい。
つまり,継続的な経済的サポートに発展する可能性があり,極端なお金をかけないで複数人を応援できる形の支援がよさそうだ。
そこで僕が提案したいのは,下記の3つの条件を遵守した上でやはりコンサートの場を提供する,というアイディアだ。その条件とは次のようなものである。
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