みらいの子

ヴァイオリニスト。ミラノのオーケストラを退団した後パリに移住。noteではイタリアのオ… もっとみる

みらいの子

ヴァイオリニスト。ミラノのオーケストラを退団した後パリに移住。noteではイタリアのオーケストラで出会った楽しい仲間たちとの生活を描いた「ミラノ回想録」や、パリでの何気ない毎日についてコラムを発表しています。

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  • ミラノ回想録

    毎朝ウィーンのパン屋さんで [ヴィーナー•キプフェル(ウィーン風クロワッサン)ひとつ下さい!]と言っていた学生の私が、ミラノというもう一つのヨーロッパの都会から仕事人生をスタートさせる事になった。そこでの生活、そして仲間についての物語。

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Rock me Amadeus...!

オーケストラの仕事は紛れもなく流れ作業だ。毎日毎日リハーサルに行くと、譜面台の上には望むと望まざるに関わらず決められた楽譜がセットされている。当たり前のことだが「この曲が弾きたい!」とか「これは面白い曲だからやろう」ではなく、「これを弾け」という命令に従っているということになる。そして譜面台に乗る曲の回転率が速ければ速いほど、そしてそれを消化していくスピードが上がれば上がるほど、段々と自分が何万個の音符を処理する無機質なマシーンに思えてくる。それでは今まで培ってきた勉強がもっ

    • 夏とエコバッグ

      夏休みのパリはリラックスムードのファッションが多い。私が真っ先に思い浮かべるのは、超ミニのワンピースから伸びるツヤツヤでよく日に焼けた素脚にぺったんこのサンダルを履いているパリジェンヌの姿。 このスタイルは年令を問わずこれからもずっと夏のパリの街に残り続けるだろうなと思う。 一方で、肩の出たちょっぴりセクシーなロングワンピースという人もいる。ところが意外と目につくのは夏の軽い洋服に、バッグは意外と年季が入ったイカツイものを持っていたりするところだ。 今日もメトロの中でサマー

      • 19年目の滞在許可証

        パリにやって来て今年で19年目になる。 わたしは一体なぜそれほど長くこの街に住み着いてしまったんだろうか? 自分でも良くわからない。ただパリに辿り着くことが自分の人生にとって相当大切なことだったんだろうなとは思う。 今思えばわたしのパリ狂ぶりは筋金入りで、それは高校時代にまで遡る。 寝ても覚めてもシャルロット・ゲーンズブールとかリタ・ミツコなどのフレンチ・ポップスを聴いていた。とにかくシャルロット・ゲーンズブールが好きで、彼女が出演した映画は必ず観に行き、中でも「小さな泥棒」

        • 午前0時の飛行機に間に合わないかもしれないという日

          ひと月ぶりのパリはまだ7月の終わりだというのに、予想以上に寒々としていた。これでも夏なのかというぐらい涼しく、36度越えの東京とは対照的だった。 まだまだ早朝といった時間にシャルル・ドゴール空港に到着した私は疲れと寝不足と、何よりも狭苦しい機内で硬くなった身体を引きずりながら、ひたすら温かいシャワーと平和な睡眠だけを夢見ていた。そしてやはり前日の大パニックを未だ消化しきれていない自分のことが可笑しかった。 前日の大パニックというのは、私がそれまでの人生で犯してきた数限りない「

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          Musée de Louvre 19:45

          金曜日の夜の楽しみ方 として あなたはどんなものを思い浮かべるだろう? 自由な時間が約束された週末の入り口でもある金曜の夕方はいろんなことが可能に思えたりもする。 映画館でずっと見たかった映画を見ようか? それとも久しぶりに誰かとどこかで夕食でもしようか?等々、何通りもの可能性が頭をよぎった後に、結局は一人で部屋にこもろう( ウーバー・ イーツの夕食とネトフリの組み合わせほど安心で心が休まる過ごし方はないと考える人もいるだろう)となったりする。 かく言う私も、ここ数年はこの最

          Musée de Louvre 19:45

          記憶の中の春

          数日前 雨が降った。 もちろん パリで雨が降ることなどしょっちゅうなのだけれど、その日の雨はいつものと少し違っていた。 温度とか匂いみたいなものが日本の雨を思い出させたのだ。あの独特の柔らかさと、少しだけ土の匂いを含んだやさしい日本の雨。 日本にいた頃、私は雨の日が大好きだった。 アパルトマンを出ると、ふいにその柔らかい春の雨は、魔法の杖のように高校の入学式の時に着ていた真新しくよそよそしい新しいブレザーの感触とか、満開の桜並木とか、合格発表の直後に興奮しながら母と入った仙

          記憶の中の春

          https://www.stay-salty.tokyo/days-sachiko-kuroiwa 今月もstay-salty に投稿させて頂きました。このマガジンに溢れる多様な人生のエネルギーを美味しいお茶と共にぜひ楽しんで下さい☕

          https://www.stay-salty.tokyo/days-sachiko-kuroiwa 今月もstay-salty に投稿させて頂きました。このマガジンに溢れる多様な人生のエネルギーを美味しいお茶と共にぜひ楽しんで下さい☕

          パリたべもの日記②

          妄想のサヴァラン 小さな時から【サヴァラン】という名前の響きが好きだ。勝手な音楽的注釈を加えることを許していただけるなら、フランス語的な「サヴァ」に続いて、「ラン」と軽快に転がり落ちるような音の愉快さ。言わずと知れた有名な洋菓子の名前であるが、このお菓子そのものは洋酒にたっぷりと浸してあるので小さな頃は全く興味がなく、母の大好物だったこともあって【ママのためのケーキ】という風に認識していた。 成城学園前駅からすぐのところにある【アルプス】というケーキ屋さんを母と訪れる度に、

          パリたべもの日記②

          パリ・メトロストーリー

          ①Bir-Akeim(ビル・アケム)エッフェル塔の近くのビル・アケムの駅でメトロを降りたカズキは、すっかりかじかんでしまった指先を温めるためにカフェに入ることだけを考えていた。朝8時に家を出てから、ついさっき3つ目の仕事の面接が終わるまでコーヒー一杯飲む時間がなかった。11月だというのに空気は朝から凍てつき、パリの灰色の街はいつもより更にグレーに見え、カズキに憂鬱な視線を投げかけていた。 1つ目の面接場所だったバスティーユから少しづつ西に移動してこのビル・アケムまで来たわけ

          パリ・メトロストーリー

          パリたべもの日記

          ①クロワッサンフランスで最も安く最も美味で、しかも出来立てのものはなーんだ?? この問いにすぐ答えられる人は、おそらくフランスをよく知っている人かもしれない。 答えはもちろんCroissant 🥐だ。 パン・オ・ショコラやショーソン・オ・ポムといった日本のパン屋さんでもお馴染みの面々でも良いのかもしれないが、それでもやはり私はクロワッサンを推すだろう。 何せシンプルなだけに、一切ごまかしのきかないこのクロワッサン。パリのクロワッサンは信じられないほど芳醇なバターの味にうっとり

          パリたべもの日記

          演奏者の声を求めて。

          私達が演奏する時、音は酷く正直である。 音はそのひとのプロフィールと言ってもよいだろう。声や眼差しのように、隠しようもなくその人そのものを語り始める。音を聴けば何となくその人がわかる。優しい人なのか、情熱的な人なのか、それとも勝ち気な人なのかが。 クラシックを長年勉強していると、様式(スタイル)とか、とにかく楽譜に忠実になどといった、どこか演奏者自身から離れたところに注意が向くようになり、遂にはそうした事柄が演奏に関する技術的なテクニックをマスターすることに次いで最も重要な

          演奏者の声を求めて。

          https://en.stay-salty.tokyo/days-sachiko-kuroiwa 今月も、StaySalty に投稿させていただきました! 様々な人生を覗くことができるこのウェブマガジン、今月も満載です☺️👍

          https://en.stay-salty.tokyo/days-sachiko-kuroiwa 今月も、StaySalty に投稿させていただきました! 様々な人生を覗くことができるこのウェブマガジン、今月も満載です☺️👍

          暖かい季節の後に 開放された扉が静かに閉じて 再び自己の内面へと向かう。 暗がりでひっそりと実った何かを探しに行く季節 秋は心が忙しい。 作品 :オスカー・ココシュカによるパブロ・カザルス

          暖かい季節の後に 開放された扉が静かに閉じて 再び自己の内面へと向かう。 暗がりでひっそりと実った何かを探しに行く季節 秋は心が忙しい。 作品 :オスカー・ココシュカによるパブロ・カザルス

          この瞬間が未来に残すもの。

          【時間】という謎の存在と付き合い始めて一体何十年が経つのだろう? 改めて考えると時間は本当に不思議だ。 短くなったり、長くなったり、にこにこしながら隠れたりしたかと思えば、突然死神のように現れて私たちを脅かす。 でも、もう【時間がない】とは言わないことにした。それは呪いの言葉のように当たり前の顔をして、人から様々な可能性を奪っていくから。 何かをするための時間は、ある、ないではなくておそらくは情熱が作り出すものなのだろう。 とは言え、長い年月を経て私が覚えている自分の人生

          この瞬間が未来に残すもの。

          皆さんご無沙汰しております😌6月に、日本で一人暮らしの父が倒れ、緊急帰国してずっとバタバタしていたためすっかり投稿が滞っていました💦 近々また投稿を再開します🍧 体に気をつけて素敵な夏休みをお過ごし下さい🏖️

          皆さんご無沙汰しております😌6月に、日本で一人暮らしの父が倒れ、緊急帰国してずっとバタバタしていたためすっかり投稿が滞っていました💦 近々また投稿を再開します🍧 体に気をつけて素敵な夏休みをお過ごし下さい🏖️

          世界の果てで

          コート・ダジュール。午後五時。 犬を連れた御婦人が座るカフェ·テラスには、地中海からの優しい風が吹いている。小さな丸いテーブルには洗いたての白いテーブルクロスが踊り、太っちょのハトがテーブルからこぼれ落ちたビスキュイのかけらをつまんでいる。太陽を反射してルビーのように光るアペリティフや、その日最後のコーヒーを前にお喋りをしている人々の頭上には、まだまだ沈まない太陽がたっぷりと陽射しを投げかけている。 こんな光景をぼうっと見つめていると、現在ヨーロッパのずっと東で起きていること

          世界の果てで