むらやまあき

長野生まれ、長野育ちのライター・編集者です。

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    依頼をいただいて、おしごとで書いたnoteたち。

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    「言葉の企画」という講義を受けて思ったこと、感じたことをまとめています。半年間の成長記録。

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記事一覧

グッバイ、下北沢。他人と暮らした335日のこと。

あの日はたしかやけに晴れていて、引越しをすでに終えているとは思えない量の荷物を両手に坂を下ると、汗をかくほどに暑かった。 ただでさえ夜明けまで飲んでしまって寝不…

89

気がつけば下北沢。他人と暮らす日々のはじまり

「いや、なんならね。 生活をともにするのは、あきちゃんじゃなきゃ嫌だと思ってるよ」 下北沢で人気のカレー屋『茄子おやじ』の店内で、こう言われたのは2021年の5月のこ…

70

いつか宇宙の藻屑になることを夢見ていた。

「宇宙の藻屑になりたい。」 そうつぶやくと、親しい人たちはきまって、何言ってるの、と笑う。 ははは、いや、本当に、と言っても、ほとんど本気にしてもらえない。 で…

249

生きている限りバッドエンドはない。だから明日も走り続ける。

ひたすら部屋の中にいてもわかるほどに、季節はめぐった。 部屋着に降格したTシャツに着替え、生ぬるい空気を外に放つ。窓を開ければもう、すっかりと夏のにおいだ。 感性…

91

世界はどうしてこんなに美しいんだろう。

週末、やっぱり台風直撃らしいよ。 帰りの飛行機、大丈夫かな。 あの巨大な台風19号が上陸する5日前。 まださほど焦りのない声でそんな会話をしながら、朝7時45分羽田発…

168

お願いだから、もう少しだけ。

「真夏のピークが去った 天気予報士がテレビで言ってた」 フジファブリックが歌うこの曲が、9月に入ってから頭を離れない。 先週の土曜日の最高気温は33℃。去ったと思…

53

青いミサンガと、16の夏。

「じゃあ、行ってくるね」 「うん、健闘を祈る」 閉祭宣言。熱気と興奮に包まれた校庭。 まだ火が完全に消えていないキャンプファイヤー。 それに名残惜しそうに群がる生…

34

わたしは、何に怯えているのだろう。

「素敵な人」がわからなくなってしまった。 素敵だなと思う人はたくさんいるはずなのに、「素敵な人」は誰かと聞かれると、さっきまで浮かんでいた顔たちはぼんやりと霞み…

35

本と、港と、素敵な人と。

台風が来ているのでは、と恐るおそる起きた土曜日の朝。 わたしの心配をよそに晴れ間の出た空を見て、予定通り三崎に行くことを決めた。 せっかくのお休み、海、恋人との…

45

いつか、とびきりスペシャルな名前をあげる。

もうすぐ、梅雨明けだ。雨のにおいから、すこしずつ夏のにおいに移り変わっていくのを感じる。 帰宅後、昼間にたまった部屋の生ぬるい空気に耐えられず、エアコンをつけて…

91

プライドが高いくせに自信がないすべての仲間たちへ。

「それ、俺とおなじP高J低だね」 自分の感情がぐちゃぐちゃになって、サークルに行くのが辛くなってしまったとき、当時代表だった先輩に池袋の純喫茶で言われた言葉だ。 …

138

嘘と後悔を積み重ねたらいつか心が死んでしまう。

平日よりも少し早く起きて、ひと月ぶりのドキドキと少しの不安を胸に抱えながら、副都心線に乗り換える。 運よく目の前の席が空き、うとうととしながら電車に揺られること…

34

雨の日と、月曜日は。

いつの間にか梅雨に入ったらしい。 長く、憂鬱な日々が始まる。 Rainy Days and Mondays always get me down. 雨の日と月曜日は、いつだってわたしを落ち込ませるの。 …

11

まるで、この世に存在しない死人のような一日で。

あ、今、世界でひとりぼっちだ。 そんなふうに思う瞬間がある。ベッドのうえ、毛布のなかから動けず、ただ天井を見つめることしかできない。そんなとき。 すなわち、風…

15

何者かになんて、なれない。

「何者かになんて、なれないですよ」 その一言で、メモをとっていたわたしははっと顔を上げた。それだけでちょっと泣きそうになってしまうくらいに、まっすぐに胸に届いた…

40

愛なんて、死ぬまでわかる気がしないけど。

愛とは何か。ずっと考えている。ここ3年くらいずっと。 エーリッヒ・フロムの『愛するということ』を読んでみたり、最近は会社の同期の男の子と、愛について何か思うこと…

25
グッバイ、下北沢。他人と暮らした335日のこと。

グッバイ、下北沢。他人と暮らした335日のこと。

あの日はたしかやけに晴れていて、引越しをすでに終えているとは思えない量の荷物を両手に坂を下ると、汗をかくほどに暑かった。

ただでさえ夜明けまで飲んでしまって寝不足な上に、薄い寝袋で仮眠をとったせいで全身が痛む。さらにそこに季節外れの暑さと荷物の重さは、かなり堪えた。

よく足を運んだ「古書ビビビ」の横でふうと一息をつき、恋人と待ち合わせ。ここで落ち合うのも最後、これからは毎日同じ家に帰ることにな

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気がつけば下北沢。他人と暮らす日々のはじまり

気がつけば下北沢。他人と暮らす日々のはじまり

「いや、なんならね。
生活をともにするのは、あきちゃんじゃなきゃ嫌だと思ってるよ」

下北沢で人気のカレー屋『茄子おやじ』の店内で、こう言われたのは2021年の5月のこと。

外はすでに初夏を感じさせる気温。
わたしも机の上のグラスもほんのりと汗をかいていて、思わず照れ笑いをしながら「プロポーズみたいだなあ」とぼんやり思った。

まっ昼間に突如こんなロマンチックパンチをかましてきたのは、編集者の先

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いつか宇宙の藻屑になることを夢見ていた。

いつか宇宙の藻屑になることを夢見ていた。

「宇宙の藻屑になりたい。」

そうつぶやくと、親しい人たちはきまって、何言ってるの、と笑う。
ははは、いや、本当に、と言っても、ほとんど本気にしてもらえない。

でもそれでいい。この感情はやはり、わたしだけの特別なものなのだと再認識し、そのたび、胸の中には静かな海が広がる。

幼い頃から漠然と、宇宙や星というものに心惹かれていた。

中学の天体の授業は苦手だったし、天文部に入っていたわけでもない。

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生きている限りバッドエンドはない。だから明日も走り続ける。

生きている限りバッドエンドはない。だから明日も走り続ける。

ひたすら部屋の中にいてもわかるほどに、季節はめぐった。
部屋着に降格したTシャツに着替え、生ぬるい空気を外に放つ。窓を開ければもう、すっかりと夏のにおいだ。

感性が死ぬ危機感というのはこういうものかと、宙を見つめていた数日前。
もう久しく、自分のための文章を書けずにいることに気づいてしまった。

仕事で書くこととは別に、溢れ出す感情を好き勝手に言葉にして残してきたこのnoteも、最後の記事を書い

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世界はどうしてこんなに美しいんだろう。

世界はどうしてこんなに美しいんだろう。

週末、やっぱり台風直撃らしいよ。
帰りの飛行機、大丈夫かな。

あの巨大な台風19号が上陸する5日前。

まださほど焦りのない声でそんな会話をしながら、朝7時45分羽田発・高松行きの飛行機に乗り込んだ。
10月の早朝だというのに、東京にはしっかりと夏の空気が残っていた。

◆ ◆ ◆

先々月、遅めの夏休みとして平日5日間の夏季休暇を取り、恋人とふたりで瀬戸内海へと渡った。3年に一度の瀬戸内国際芸

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お願いだから、もう少しだけ。

お願いだから、もう少しだけ。

「真夏のピークが去った 天気予報士がテレビで言ってた」

フジファブリックが歌うこの曲が、9月に入ってから頭を離れない。

先週の土曜日の最高気温は33℃。去ったと思った夏は、意外としぶとく居座っている。まだまだ終わりたくないらしい。

この日のみなとみらいは、アカペラを歌う大学生や、よさこいの衣装を身にまとった人たちがたくさんいて、にぎやかだった。先月来たときは、ピカチュウがたくさんいた。月に一

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青いミサンガと、16の夏。

青いミサンガと、16の夏。

「じゃあ、行ってくるね」
「うん、健闘を祈る」

閉祭宣言。熱気と興奮に包まれた校庭。
まだ火が完全に消えていないキャンプファイヤー。
それに名残惜しそうに群がる生徒たち。

祭りのあとの恒例行事が行われているのを横目に、
わたしは一緒にいた友人にそう告げてひとりで班室棟へと向かった。

心の中で、イチかバチかの小さな賭けをして。

◆ ◆ ◆

はじまりは、雨の日だった。

自宅からは少し離れた

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わたしは、何に怯えているのだろう。

わたしは、何に怯えているのだろう。

「素敵な人」がわからなくなってしまった。

素敵だなと思う人はたくさんいるはずなのに、「素敵な人」は誰かと聞かれると、さっきまで浮かんでいた顔たちはぼんやりと霞み、思うように言葉が出ない。

胸がざわざわとして不安になる。
わたしはいったい、何に怯えているのだろう。

◆ ◆ ◆

第4回目の「言葉の企画」の課題で、「あなたの素敵な人について書いてください」というお題が出たとき、思い浮かんだ人は何

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本と、港と、素敵な人と。

本と、港と、素敵な人と。

台風が来ているのでは、と恐るおそる起きた土曜日の朝。
わたしの心配をよそに晴れ間の出た空を見て、予定通り三崎に行くことを決めた。

せっかくのお休み、海、恋人とのプチ遠出。
すっかり夏休み気分で、このあいだ奮発して買った真っ赤なワンピースをはじめて着てみた。ついでに髪の毛もちょっとかわいくしてもらった。胸が高鳴る。ふふふ。

この小さな旅のいちばんの目的は、憧れの素敵な人とその人が作った場所に会い

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いつか、とびきりスペシャルな名前をあげる。

いつか、とびきりスペシャルな名前をあげる。

もうすぐ、梅雨明けだ。雨のにおいから、すこしずつ夏のにおいに移り変わっていくのを感じる。

帰宅後、昼間にたまった部屋の生ぬるい空気に耐えられず、エアコンをつけて涼んでいたら、だんだん寒くなってきて電源を消した。するとたちまちむわんとした空気が身体にまとまりついてきて、また電源をつけた。でもまた寒い。

つけては消して、消してはつけて……

小一時間、そんなことをもう何度も繰り返しているのだけど、

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プライドが高いくせに自信がないすべての仲間たちへ。

プライドが高いくせに自信がないすべての仲間たちへ。

「それ、俺とおなじP高J低だね」

自分の感情がぐちゃぐちゃになって、サークルに行くのが辛くなってしまったとき、当時代表だった先輩に池袋の純喫茶で言われた言葉だ。

具体的になにを相談したかは、正直もう覚えてない。どういう文脈で言われたのかも、忘れてしまった。

その先輩はいつもテンションが低めで顔色が悪く、掴み所のない不思議な人だった。企画も話も面白いスーパーマン。

フリーマガジンの制作をした

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嘘と後悔を積み重ねたらいつか心が死んでしまう。

嘘と後悔を積み重ねたらいつか心が死んでしまう。

平日よりも少し早く起きて、ひと月ぶりのドキドキと少しの不安を胸に抱えながら、副都心線に乗り換える。

運よく目の前の席が空き、うとうととしながら電車に揺られること1時間。

大粒の雨が降りしきるみなとみらいは、いつもより蒼く見えた。

◇ ◇ ◇

先週の土曜日、BUKATUSDOで「言葉の企画」の2回目が行われた。

今回のテーマは「企画書に触れる」。

事前課題で提出した71人の企画生の企画書

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雨の日と、月曜日は。

雨の日と、月曜日は。

いつの間にか梅雨に入ったらしい。
長く、憂鬱な日々が始まる。

Rainy Days and Mondays always get me down.
雨の日と月曜日は、いつだってわたしを落ち込ませるの。

これはカーペンターズの名曲『Rainy Days and Mondays』の一節。

今日はどしゃぶりの雨、そして月曜日。
気持ちを落ち込ませるには十分すぎる組み合わせだ。

低気圧もあいま

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まるで、この世に存在しない死人のような一日で。

まるで、この世に存在しない死人のような一日で。

あ、今、世界でひとりぼっちだ。

そんなふうに思う瞬間がある。ベッドのうえ、毛布のなかから動けず、ただ天井を見つめることしかできない。そんなとき。

すなわち、風邪を引いたときである。

久しぶりにしっかりと風邪を引いてしまった。鼻水、のど、咳、熱、くしゃみ、風邪の諸症状を網羅している。

今わたしがベッドでぼんやりとしているこの瞬間も、世界は普段と変わらずに回っていて、ひとり世界と切り離されて

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何者かになんて、なれない。

何者かになんて、なれない。

「何者かになんて、なれないですよ」

その一言で、メモをとっていたわたしははっと顔を上げた。それだけでちょっと泣きそうになってしまうくらいに、まっすぐに胸に届いた。

あとに続いたのは、「あなたは、あなたになるんです」という言葉だった。

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先週の土曜日から、「言葉の企画」という講座に通い始めた。

コピーライターの阿部広太郎さんが講師をつとめる、月1回半年間にわたる講座だ。「企画

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愛なんて、死ぬまでわかる気がしないけど。

愛なんて、死ぬまでわかる気がしないけど。

愛とは何か。ずっと考えている。ここ3年くらいずっと。

エーリッヒ・フロムの『愛するということ』を読んでみたり、最近は会社の同期の男の子と、愛について何か思うことがあるたび議論している。あれこれ考えてみても全然答えは出ないし、これこそ永遠の問いなんじゃないかとも思う。

そんななか、ほんの少しの気づきがあったので、書いてみる。気づきともいえないほどのぼんやりとしたものだけど。

引用:僕らは言葉で

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