プライドが高いくせに自信がないすべての仲間たちへ。

「それ、俺とおなじP高J低だね」

自分の感情がぐちゃぐちゃになって、サークルに行くのが辛くなってしまったとき、当時代表だった先輩に池袋の純喫茶で言われた言葉だ。

具体的になにを相談したかは、正直もう覚えてない。どういう文脈で言われたのかも、忘れてしまった。

その先輩はいつもテンションが低めで顔色が悪く、掴み所のない不思議な人だった。企画も話も面白いスーパーマン。

フリーマガジンの制作をしたり、ふたりで一緒に企業に営業に行ったりしていたけれど、何だかすごい人ということ以外、わたしはその先輩のことを実はあまりよく知らなかったのかもしれない。

だから「おなじだね」と言われて驚いた。

先輩とはもう全く会っていないけれど、今でもたまにその言葉を思い出す。

P高J低。

すなわち「プライド高いくせに自信ない」のことである。

ずばり言い当てられて震えた。
その自覚は、幼い頃からわたしのなかにうっすらと確実にあったからだ。

これは順番を入れ替えても成り立つ。

自信がないくせに、先生にあれこれ口出しされるのが嫌だった。
自信がないくせに、友達が褒められるのを見るのが苦しかった。
自信がないくせに、自分の意見が認められないと悲しくて拗ねた。

そんなふうに自分を構成するプライド高さと自信のなさという矛盾が、一体何なのかわからなくて、ずっとずっと苦しかった。

自信がないのはまだしも、プライドが高い自分というのを認めたくなかった。そう思うこと自体、プライドが高いのかもしれないけれど。

ん。これはもしや。

ちびまる子ちゃんの永沢くんなのでは…？

卑屈で、僕なんかって言いながら実はプライドが高い。誰かの不幸を見てちょっと安心してしまう。でも家では、そんな自分を反省することもしばしば。

出典: さくらプロダクション/日本アニメーション

ああ、わたしの中にはずっとちっちゃな永沢くんがいるのかもしれない。

永沢くんは何も悪くないのだけど、すごい陰鬱な気持ちになるなあ。永沢くんごめん。

でも今少しずつ大人になってわかってきたのは、P高J低が発揮されるのは、こと自分が好きなものや得意なものに対してだということ。
そして、プライドの高さと自信のなさは、必ずしも矛盾しているわけではなく地続きであるということ。

好きだから、得意だと思っていることだから、認められなかったら死ぬほどショックを受ける。苦しい。自信がないのも、これだけ思いを持って発信したものが伝わらなかったらどうしようと、不安になるからだ。

それに付随して沸き起こる、負けたくないという気持ちもそう。

負けたくないと思うことは、とてもエネルギーを使う。負けたときのことを考えると苦しいし、負けてもいいやと思うことのほうがよっぽど楽で、どちらかというと基本的にはそのくらいでいたい。

上を見ればいくらでもいるし、全員に勝つなんて無謀かもしれない。そもそも勝ち負けなんかじゃないとも思う。でもやっぱり、好きなものや得意なものに関して、気持ちでは絶対に負けたくない。

それは紛れもなく、わたしのなかにある気持ちだ。

こんなふうに、ちっちゃな永沢くんが棲みついたP高J低な仲間は、実は今の世の中にたくさんいるような気がしている。

自分を構成している一見矛盾した感情を「悪」と捉え続けると、ほんとうにきつい。とてつもなく自己肯定感が下がるし、たぶんもっとひねくれてしまう。生きづらさが増幅するのでやめましょう。

だから、プライドが高いのに自信がないすべての仲間のみなさん。
自分のなかにいる永沢くんを認めつつも、いつか彼を脱却するためのちいさな工夫を一緒にしませんか？

そのひとつとしてまず「負けたくない」「悔しい」の気持ちに素直になったら、いったんプライドを捨て置いて、そのまま言葉にしてみるということ。

ぐっとこらえて別に平気だし、なんてポーズをとるのをやめて、「あー悔しい！」「すごいなあ、わたしも負けたくないなあ」と素直に声に出す。

どんなに自信を持てと言われても、簡単に持てるものじゃないことは、もう嫌というほどわかっているはず。だから、ちょっとだけ素直になってみる。

そうしたら、何かがちょっと変わってくる気がするのです。
言ってみたら、相手が何かいい方法を教えてくれるかもしれない。協力してくれる人が現れるかもしれない。素直に言えた自分に、少し自信が持てるかもしれない。

少しずつやっていきましょ。ひとりじゃないです。
もしなにかいい方法を知っていたら、ぜひ教えてくださいね。

◇ ◇ ◇

ここまで読んでくださってありがとうございます。

すべての仲間たちが、胸を張って「好きなものは、好き」と大きな声でいえるようになりますように。

（おしまい）

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